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「奈美にお願いがあるんだけどさ」
「お願い?」
奈美は豪を見上げるけど、彼は照れてるのか、口ごもっている。
「奈美と一緒に……写真撮りたいなぁ〜なんて……思ったんだけど……ダメ?」
「全然いいよ。私も豪さんと一緒に写ってる写真、欲しいなぁ〜なんて思ってたから……」
「じゃあ、俺のスマホで撮るか」
豪と奈美はレインボーブリッジをバックに、彼のスマホをかざして自撮り撮影する。
ベタだけど、二人でピースサインをして画面に収まった。
「あ、私のスマホでも撮りたい!」
「じゃあ、奈美のスマホでも撮るぞ」
豪は奈美のスマホを受け取ると、何もポーズせずに、ただ寄り添い合って写真を撮った。
「せっかくなら、もっと奈美と密着して撮りたいなぁ」
奈美の小さな肩に、豪の筋張った手が添えられ、グイっと抱き寄せられる。
「え、さっき撮ったでしょ?」
「いや、まだ撮りたんねぇなぁ」
豪が何かを企むように、ニヤリと唇を歪めた。
頬を寄せ合い、アップでツーショット写真を撮る彼に、彼女は恥ずかしくなり、はにかむような笑みを見せている。
カシャっと軽快なシャッター音が響き、彼は再びカメラをかざした。
「さて、もっと撮るぞ」
奈美は少しでも良く写るように、笑顔を作った矢先。
「奈美」
不意に、豪が彼女を呼ぶ。
奈美が彼へ面差しを向けると、長い腕に引き寄せられ、豪の指先が彼女の頬に掛かったと同時に、唇を重ねられた。
次の瞬間、シャッターの連写音が数回鳴り、豪がそっと唇を離す。
「やだっ! 豪さん……!!」
奈美の表情が、みるみる赤くなり、豪は不敵な笑みを映し出している。
「奈美とのキス写真…………撮りたかったんだよな……」
彼は満足そうな表情で、スマホ画面を見つめていた。