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「もし良かったら撮りましょうか?」
豪と奈美の様子を見ていたのか、家族連れの方が声を掛けてきてくれた。
豪のスマホを、ご主人と思われる男性に手渡す。
彼の後ろには、奥さんとママに抱っこされている女の子、幼い男の子が横に並び、パパが豪たちの写真を撮影している様子を見ている。
一枚目は手を繋いだ写真、そして二枚目は撮る直前に、奈美の肩を抱き寄せて撮った。
彼女は身体をビクっと震わせていたが、豪は何事もないフリをしてスマホのカメラに収まる。
写真を撮ってくれたお礼に、豪もこの家族の写真を撮った。
同じように二枚撮影したが、ポーズなど取らず、横一列に並んでる状態でスマホカメラに収めた。
ご主人にスマホを返して、撮った画像を確認してもらったら、とても嬉しそうに顔を綻ばせている。
豪は、この家族の雰囲気がすごくいいな、と感じ、思わず話し掛けていた。
「家族でお台場、いいですね」
「お台場は妻との思い出の場所なんです。いつか家族で来たいと思っていて、今日願いが叶いました。家族写真まで撮って頂き、ありがとうございました」
ご主人が目を細めながら、一礼してくれた。
一緒にいた奥さんと男の子も、豪たちにお辞儀をする。
「こちらこそ、ありがとうございました」
奈美も礼を述べて会釈をした後、家族連れの人たちと別れた。
豪も、先ほどのご夫婦みたいに、『ここが妻との思い出の場所』って言える所に、奈美と行きたい、と願う。
「妻との思い出の場所か。何かいいよな」
「素敵なご家族だったね」
奈美が微笑みながら、先ほどの家族の背中に視線を向けている。
(奈美が…………俺と一緒になってくれたら……きっと毎日が楽しいだろうな……)
彼女を見ながら、豪は思う。
「俺たちも……二人の思い出の場所って言える所に、たくさん行こうな?」
こんな事を彼女に言うのは少し照れるが、豪は奈美と向き合い、髪を撫でた。