翌日理紗子はずっと顔がニヤけていた。
昨夜は健吾と千葉へドライブに行き新鮮な魚を食べ海と夜景、そして満天の星空を眺めた。
そこで健吾に告白をされた。
昨日は思いがけず理紗子が予想していなかった展開が待ち受けていたのだ。
健吾から『偽装恋人』を解消したいと言われた時はショックを受けた。
しかしすぐにそれが全くの誤解だという事を知る。
初めて見た健吾の真剣な眼差し、緊張した面持ち、そして誠実な告白。
理紗子はその場面を思い出す度に顔がニヤニヤしてしまう。
(彼は貴公子なのよ! 彼は王子様なのよ! 彼は億トレーダーなのよ! 彼はイケメンスパダリ男なのよ! えーっと、他になんかあったかなぁ? ま、このくらいでいっか)
とにかく二年前弘人にバッサリ切られたみじめな女は長い冬を耐え忍んだ後イケメンスパダリ男をゲットしたのだ。
『本物の恋は意識しない時にやって来る』
その時理紗子の頭にそんなフレーズが思い浮かぶ。そしてそれは事実だった。
恋人が欲しいとか素敵な男性と巡り会いたいなどとは一切思っていなかった理紗子の元へ白馬の王子様が突如として現れたのだ。
理紗子は頭に閃いたそのフレーズを慌ててノートに書き留めた。
昨夜二人はあの後燃えるような熱い思いを抱えたまま帰路についた。
車の中での健吾の瞳はハートマーク全開で隙あらば理紗子へ触れようとする。
健吾は一瞬たりとも理紗子を離したくないようだった。
そして理紗子はそのまま健吾のマンションに泊まった。
マンションに戻た二人は思い出すのも恥ずかしいほどの熱い夜を過ごす。
健吾は何度も何度も理紗子を愛し続けて一時も離さない。健吾に愛されまくった理紗子の身体はボロボロで先ほど這うようにして漸く家に辿り着いた。おそらく筋肉痛決定だろう。
自宅に帰ってすぐ理紗子はシャワーを浴びる。そして鏡を見て絶句する。
理紗子の首筋や胸元には数えきれないほどのキスマークがついていたからだ。
「健吾めぇぇぇっ……」
理紗子は思わず汚い言葉で健吾を罵った。
またしばらく胸元の開いた服を着られないと思うと理紗子はガックリと肩を落とした。
その時スマホの音が鳴った。電話は美月出版の磯山雄介からだった。
「磯山さん? 先日は美味しいケーキをありがとうございました。あまりにも美味しくてペロッと食べちゃいました」
「喜んでいただけて良かったです。で、どうですか? 新作の進捗状況は?」
「はい、大体の流れは決まったのでだいぶ進んでいます。もうちょっと書き進めたらチェックお願いします」
「了解です。あともう一つ、雑誌の執筆依頼が入ったのですが大丈夫でしょうか?」
「もちろんです。どの雑誌ですか?」
「30代の女性向けのファッション誌『shine』です。テーマは『女性が輝く為の生き方・仕事&恋愛』だそうです」
「わかりました」
「では詳細はメールで送りますね」
「よろしくお願いします。あっ、あと磯山さんに報告しておかなくちゃいけない事が……」
「はい、なんでしょうか?」
「私が昔勤めていた会社で女性社員向けの研修があるのですがその講師をして欲しいと依頼がありました。講義のテーマは『夢を叶える』だそうです。受けてもいいですよね?」
「もちろんです。前にいらっしゃった会社ならご恩返しにもなりますからね」
「ありがとうございます」
「当日は僕がマネージャーとして付き添いますよ」
「あ、それは大丈夫です。よく知っている会社ですから」
「いえいえ駄目です。水野さんは著名作家なのですから単独行動はよくありません。当日は僕がマネージャーとして付き添いますので詳細を僕のメールに送っておいて下さい。僕は先生がデビューした時からずっと見守ってきたんです。だからこれからもきちんとサポートをさせていただきますので」
そこまで言われてしまうと断り辛いので理紗子は磯山からの申し出を受け入れる事にした。
電話を終えた理紗子は呟く。
「磯山さんには全く関係のない仕事なのになんだか申し訳ないなぁ」
理紗子はこの事を念の為健吾に知らせておこうと思いメッセージを送った。
【会社の講師の件だけど出版社の磯山さんがマネージャーとしてついてきてくれる事になりました。一応報告しておくね】
健吾はちょうどシャワーを終えてリビングへ戻って来たところだった。
今日は女性誌向けのインタビューが出版社で行われる。
メッセージに気付いた健吾はすぐに見た。
(なんだって? あの磯山とかいう編集者が理紗子について行くだと? なんでだ? その仕事に出版社は関係ないだろう?)
納得がいかない健吾はすぐに返信した。
【なんで出版社がついて行くんだ? 出版社は関係ないだろう?】
【私も一人で大丈夫って言ったんだけど作家が一人で行動するのは良くないからって。そこまで言われると断り辛くて】
理紗子の説明を見て健吾は悶々としていた。
しかしここでとやかくネチネチ言うと理紗子に愛想をつかされても困る。そこであえて大人の男を演じた。
【俺がついていってもよかったんだけど俺が行くと不自然だしなぁ。出版社の人の方が違和感はないかもしれないから来てくれるっていうならお願いすればいいんじゃないか? 弘人の事も心配だしちょうど良かったじゃないか】
健吾の返信を見た理紗子は驚く。
(ケンちゃんが行ったらそれこそ大騒ぎになって大変だよー)
そう思いながら返事を送った。
【うん、わかった。磯山さんについて行ってもらう事にするね】
理紗子はそう送った後、急に思い出して追加でもう一つメッセージを送った。
【そういえば、また💋マークつけたなあ!!!(怒)】
健吾はそのメッセージを見て思わずプッと笑った。
【許して、チュッ!💋 じゃあ俺もそろそろ行ってくるよ】
【今日は雑誌の仕事だったっけ? 行ってらっしゃい。頑張ってね】
健吾は理紗子の返事を見て微笑むと身支度をしてからマンションを出た。
コメント
4件
愛想を尽かされても困る❓ 健吾ってば~もうかわいい🤭🩷 理沙チャンLOVE🩷すぎる~😆
偽装恋人を解消、本当の恋人になった二人💓 やっと恋人になれたのが嬉しくて、愛し合いすぎて 翌日 理紗子ちゃんは筋肉痛だし💏💕😁 またまた健吾さんは 彼女にキスマーク💋をたくさん付けちゃってるし....🤣w もぅ~💕健吾さんと 理紗子ちゃんたら....😘💕 この二人はどれだけ仲が良いのかしら⁉️🤭w ラブラブ&幸せそうで、こちらまで 思わず ニヤけてしまいます♥️♥️♥️🤭
いいね❤️が押し足りない‼️100000❤️くらい押したい‼️押せないっ٩(๑ᵒ̴̶̷̣̥̀罒ᵒ̴̶̷̥́)۶ムキー!!! 理紗子ちゃん、私達も負けないくらいずーっとニヤニヤしてますのよ〜🤭 目がハートマーク全開😍の健吾くん、キスマーク💋だらけにした健吾くん、許してやって〜2年も待ってたの。再会することを夢みて。もうね理紗子ちゃんにメロメロメロリンなの♥️🩷♥️ だからね、ジェラスィーもハンパないの〜∵ゞ(≧ε≦o)ぷ!