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仕事で疲れて帰り、玄関に見慣れたサンダルがあると、1日の疲れも軽く吹き飛ぶ。

俺の好きな人は、いつもの場所で、待ちくたびれたのか横になって寝ていた。

ソファの下には読みかけの台本が落ちている。拾って中身を見ると、細かい文字でいくつも書き込みがしてあった。監督からの指示、共演者からのアドバイス。

そこには持ち主の、意外と真面目で几帳面な性格が垣間見える。


そっと、髪を撫でる。


ちょっとクセのある髪の毛。今は茶色がかった色。ウェーブのかかった髪。

白い肌は、部屋の間接照明の光を受けて、美しく輝いている。 形のいい唇が横に結ばれていた。風呂上がりのいい香りがする。

こうやっていつまでも眺めていたいけど、そろそろ起こさないと。



🖤「しょっぴー。ただいま」


声だけじゃ起きなくて、頬を撫でた。


💙「ん……めめ…おかえり」



しょっぴーに想いを伝えた日。

ラウールから家の合鍵を取り上げた。 むくれたラウールに理由を聞かれたけど教えていない。



あれから3ヶ月ほど。



外ではなかなか会えないからと、取り上げた鍵をいつでも来てとしょっぴーに渡した。俺にとっては賭けだったが、たまにこうして来てくれるようになった。

初めて来てくれた時は、玄関先でよっしゃあ!と叫んだのを本人に聞かれた。

かなり恥ずかしかったが、家に上がったら、しょっぴーも赤い顔をしていた。


ちなみに告白の返事はまだ。

ちゃんと考えたい、と言われている。

それでも拒絶されなかっただけ嬉しい。


しょっぴーが家に来てくれた日は、一緒にご飯を食べるのがなんとなくの決まり。酒はなし。しょっぴーはご飯だけを食べて帰って行く。帰す時にはちょっぴり寂しい気持ちも湧くけど、泊まっていかないのはしょっぴーなりに一線を敷いているのだろう。


🖤「ご飯まだだよね?」


💙「うん。でも、めめ、疲れてるだろ?」


🖤「ううん。しょっぴーとご飯食べたいから全然平気。いつも通りあまり凝ったものは作れないけど…」


💙「ありがとう。手伝う」


手を洗って、並んでキッチンに立つ。

野菜を洗って切って、サラダをしょっぴーに任せる。その間に俺は肉を焼く。ありあわせの材料で味噌汁を作ったら完成だ。こんな簡単なメニューでもしょっぴーはいつも喜んでくれる。


💙「いただきます。……うま!」


🖤「可愛い」


💙「その可愛いっていうの、やめれる?」


🖤「やめない」


しょっぴーの照れた顔が好きだ。

俺の褒め言葉を浴びると、赤くなるのを見ているのが楽しい。そしてそんなしょっぴーのひとつひとつの表情に俺はまた恋をする。


💙「めめって、そんなだらしない顔するんだな」


ソファに座って並んで話をしていたら、ふいにしょっぴーが呟いた。


🖤「ん?」


💙「なんか、俺のことむちゃくちゃ好きそう」


🖤「むちゃくちゃ好きだよ」


はにかむしょっぴーを見つめる。


🖤「なんでもしてあげたい。しょっぴーのためなら」


かっこいいことをキマった顔で言いたいけど、本気の恋愛の前ではかっこつけることすらできないんだって、俺はしょっぴーに恋をしてから身に沁みて知った。

ドラマや映画なんてみんな嘘っぱちだ。


💙「俺、答え出せてないよ?」


🖤「でもこうして来てくれる」


手を握りたいけど、我慢する。

しょっぴーは長い睫毛を伏せた。


💙「どこがいいの?俺なんかの」


🖤「とても一言じゃ言い表せない」


💙「…………」


口をつぐむしょっぴーが、言葉を選びながら慎重に言う。


💙「メンバーのことは大好きだから、めめのことも好きだよ」


🖤「うん」


💙「でもめめと恋愛できるかと言われると、自信がない」


🖤「うん」


💙「俺を待ってるの、苦しくない?」


🖤「苦しい」


素直に言うと。

しょっぴーは傷ついた顔をした。


💙「ごめん。…こんな時間。やめるか」


🖤「やめない」


俺はきっぱりと言った。


🖤「諦めない」


💙「………そろそろ帰る」


🖤「わかった」


しょっぴーは、ソファから立ち上がった。俺も一緒に立つ。


🖤「メンバーとしての、ハグ、してもいい?」


💙「それがメンバーって顔か」


しょっぴーは困ったように笑って、俺に触れさせず帰って行った。

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