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56話もお読みいただき、ありがとうございます☆ この二人ならではの雰囲気、良いなぁと思うんですけど皆さんはどう感じますか? よかったらコメントで教えてください~
寝室に戻ると、魔王さまはベッドの縁に腰を下ろして、私が戻るのを待っていらした。
「少し遅かったな」
「すみません魔王さま。リズと話し込んでいて」
「そうか。……サラ」
「はい」
「来い」
そう言われて、私ははやる気持ちのままに、魔王さまの胸に飛び込んだ。
――来いと言われて、こんなにも心がときめく人は、この方しかいない。
僅かな距離さえもどかしい。
「魔王さま」
その名を、その人の胸の中で呼べるのは、私だけ。
「どうした。今日は随分と甘えん坊だな」
「ふふ。たくさん甘えたいです、魔王さま。でも――」
「でも? なんだ?」
「魔王さまも、たまには私に甘えてください」
「フッ! 甘えろ、か」
――し、真剣に言ったのに、笑われてしまった。
「は、はい。だって、魔王さまが誰かに甘えているところ、見たことありません」
「いいや? 甘えているさ」
「えっ? だ、誰にですか?」
私以外に、そんなに気を許せる人が居るなんて……。
でも、私との時間より、他の人たちの方が断然、長く一緒に居るんだものね……。
だけどやっぱり、ショックだ。
「何を暗い顔をしている。お前しか居ないだろう、サラ」
魔王さまの、甘い微笑み。
「ふぇ?」
「お前は毎夜、俺の求めに応じてくれるだろう。その身を委ねて、俺を受け入れてくれる事に甘えている」
「しょ、しょんなこと……べべ、べつにたいしたことじゃ……」
――噛んだぁぁぁぁ。
急に甘々なこと言うんだもの……。
「何か不安か? それとも、俺は何か心配をかけているか?」
――きゅ、急に真顔になるのも反則……でも。
「そ、その。このあいだ、うなされてらしたのが、心配で。普段、眠っておられるのかも」
「そうか、それが心配だったか」
そう言うなり、魔王さまは黙ってしまった。
私を抱きしめ直して、その胸板の中で私の頭を撫で続けて。
……しばらくはぎゅっと身を固めていた私も、魔王さまを抱きしめ返したりして。
手が回りきらない、がっしりと鍛え上げられた体。
暖かくて、だけど硬い。
でも、その頑強さに安心を覚える。
身を任せて、その鼓動の音に眠くなってきた頃に、魔王さまはひと言だけ、つぶやいた。
「……お前を、失いたくない」
聞き違えたのかなと、魔王さまを見上げたけれど、頭を撫でる手に、またぎゅっと抱きしめられた。
「魔王さま……?」
私が、居なくなるはずないのに。
「ふと、そう思ってしまう時がある。それが理由だ」
私は、魔王さまの腕の中で首を振った。
「ずっとお側に居ます。お前にはもう飽きたと言われても、お側に居ます」
「ふっ。馬鹿を言う。何があっても手放すものか」
「……うれしいです」
もしかすると、魔王さまは以前から、たまにそういう雰囲気を出していたかもしれない。
気付いて差し上げることが、出来なかった私のせいだ。
「魔王さま」
「うん?」
「私が居なくなると、なぜお思いになる時が、あるんですか?」
「……聞くな。つまらん話だ」
「え。ヤです。聞きたいです」
「残念だが、俺はもう、お前を押し倒す事しか考えていない」
「きゃっ」
「観念しろ。望み通り、たくさん甘えてやる」
「そ、それは、やっぱり甘えていらっしゃるわけじゃ――」
うまく、はぐらかされてしまった。
その後は、私の言葉むなしく、さんざんに弄ばれて朝を迎えることになって……。
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