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綾子さんへ新しい出会い✨で孤独ではないよって伝わったかな💖🥹
そう2人は『仕向けられてる』んですよ🎀✨God &Angel( ⑅ ˘ᵕ˘))˘ᵕ˘ *)🤍 ̖́- 綾子さんに毎日話しかけてくれるのが「女性」で余計にGod仁さんホッとしたんじゃないかな🤭
綾子さんも仁さんに心開いて来たし,仁さんは仁さんで本人気付かない内に綾子との時間を持とうとしてるし、ほんと引き合わせって有ると感じる場面だわ。
翌朝、仁は顔を洗ってまたトーストだけの簡単な朝食を食べた後コーヒーを持ってパソコンの前に座る。
昨夜は遅くまでアクトと飲んだので今朝は少し遅めのスタートだ。
最近なんやかんやと外出が多かったので落ち着いて執筆出来なかったが今日は集中しようと早速キーボードの上に手を乗せる。
その時ハッと思い出し椅子に座ったままデスクの左へスーッと移動した。
昨日スマホに届いた【月夜のおしゃべり】からの通知を見てメールが来ている事はわかっていた。
ただ昨夜は帰りが遅かったのでチェックしないで寝てしまった。おそらくメールは『エンジェル』からだろう。
仁は慌ててサイトへログインしメールをチェックした。メールはやはり『エンジェル』からだった。
(なんだ、一昨日のやり取りの後にすぐにメールをくれていたのか)
丸一日放置してしまった事を仁は悔やむ。
(どうすっかなー、スマホ解禁するかなー)
普段仁がスマホを使うのは電話か調べ物か写真を撮る時くらいだ。メッセージアプリも入れてはいるがほとんど使わない。
メールのやり取りはパソコンの方が断然楽なので外でメールをチェックしても返信は必ず帰ってからにしていた。
(とうとう俺も人並みにスマホでのやり取りを余儀なくされるのか? 進化を無視してここまで来たがとうと俺も進化の波に取り込まれる時代がきてしまったのか?)
仁は大袈裟に嘆く。しかしここは仕方がない。『エンジェル』とのやり取りをスムーズにする為だから致し方ない。
仁は慣れない手つきでスマホのアプリの画面を開く。そして【月夜のおしゃべり】のアプリを検索しインストールした。
(フッ、これで外からでもダイレクトに返事が送れるな)
しかし家にいる時にこのアプリは使う必要はないだろうと思いノートパソコンで『エンジェル』からのメールを開いた。
メールにはこう書かれてあった。
【『依子さんのディープな恋』は今回も最初から笑いっぱなしでした。でも途中依子さんが信之さんに自分の過去を打ち明けるシーンは切なくてジーンと来ました。もしかしてここから急展開? 来週が待ち遠しいです。ところで『神様』に質問なのですがどうして町立図書館に行ったら『フロストフラワー』があるのですか? 図書館にあの本はありませんしリクエストしても駄目でした。なのになぜあるのですか? 気になったので質問してみました。ではおやすみなさい】
「フッ、『エンジェル』は『神の啓示』を求めているようだな」
仁はそう呟くと返事を書く。
【それは神のみぞ知る______秘密でーす! ドラマの感想ありがとう。僕も録画してあるので後日観てみます】
若干茶化したような返事を送った。するとすぐにパソコンの通知音が鳴る。
ピコン
(お? 朝なのに返事が来た? 水曜日なのに?)
そこですぐにメールを見た。
【ズルいです。なぜ『フロストフラワー』があるのか教えて欲しいのに】
ピコン
【まあ一週間後に種明かしをちゃんとしますからそれまでのお楽しみに。ところで今日はお休みですか?】
【はい。土日と水曜日が休みなんです。『God』さんもお休みですか?】
【僕は休みはあってないような? フリーランスなので家での仕事が多いんですよ】
【そうでしたか。家でお仕事なんて羨ましいです。手に職があれば私も家で仕事がしたいです】
【外に出て人と接した方が刺激があって長生き出来るそうですよ。家で仕事をしていると誰とも話さない日がありますからねー。ちなみに『エンジェル』さんはどんなお仕事をされているのか聞いてもいいですか?】
【食品工場で働いています】
【なるほど。どんな食品?】
【コンビニのお弁当です。流れ作業で頭を使わなくていい仕事だから楽ですよ。なんの技術もいりません(笑)】
【僕もよくコンビニの弁当を買うからお世話になっているかも?】
【お買い上げありがとうございます(笑)】
【お仕事はずっとそちらで? あ、確か前は東京にいたんですよね? じゃあ引っ越してからか」
【はい、半年前にこちらに来てからです】
【じゃあ東京では違うお仕事を?】
【いえ、東京では結婚していたのでずっと専業主婦でした。でも独身の頃は銀座の画廊に勤務していました】
【画廊? なるほど、だから趣味の欄に美術鑑賞?】
【そうです。大学では芸術学を勉強していたので】
そこで仁は驚いた。地方の有名な観光地とはいえ田舎町の工場で働く女性が芸術学を勉強していたというのだ。その学歴や専門知識があれば彼女の若さならもっと他に働く場所があるのにと仁は不思議に思う。
【そりゃすごいな。だったら工場じゃなくても他に働く場所はいっぱいあったでしょう? その辺りには美術館も多いし】
そこで少し間を置いてから返事が来た。
【ちょっと色々あってあまり人と関わらない仕事がしたくて……】
綾子は『God』に聞かれた質問にスラスラと答えている自分に驚いていた。なぜか『God』には話しても大丈夫な気がした。匿名でのやり取りだからそう思えるのだろう。仮にもしこのやり取りをやめたくなってもすぐ退会してしまえば何事もなかったかのように日常に戻れるのだ。その気安さが綾子をリラックスさせているのかもしれない。
一方仁は『エンジェル』からの返信を見て少し考え込んでいた。彼女が何か抱えているとは感じていたが先ほどの返事を見てそれが確信に変わる。
その時以前『エンジェル』が言っていた言葉を思い出した。
『普通に生きるってしんどいです』
(一体どんな悩みなんだ? 離婚の事か?)
仁はそう思いながらメールを続けた。
【工場だと人と関わらなくて済んだ?】
【はい、最初は。でも最近毎日話しかけてくる人がいて】
【その人は女性? 男性?】
【女性です。彼女は私と似た境遇だったんです。それで心配してくれたみたいで】
仁はホッとした。彼女の事を見守る人間が傍にいる事を知ったからだ。
【そっかー。まあ生きてりゃ色々あるよなぁ。でもさ、知ってる? 出会う人っていうのは仕向けられているって】
【仕向けられる……?】
【そう。よくスピリチュアルなんかで言うでしょ? 偶然の出会いは必然の出会いだーって。ソレね、本当なんだよ】
【そうなんですか?】
【うん。昔あるお寺のご住職に聞いたんだ。困ったり悲しんだりしている人がいるとね、そういう時に限ってなぜか新しい出会いがあるんだって。それはなぜかって言うとね、悲しんでいる人の亡くなった家族やご先祖様が心配して新しい出会いを仕向けるらしいよ。その話を聞いてなるほどなーって思ったよ】
(亡くなった家族が心配して出会いを仕向ける?)
そこで綾子はハッとした。理人は綾子を心配して光江と出会うように仕向けたのだろうか? 元気のない母親を心配して『God』というメールフレンドを与えてくれたのだろうか?
綾子の目に急に涙が溢れてくる。綾子は慌ててそれをティッシュで拭った。
【もしそれが本当なら嬉しいです。あの子が心配してくれてるのかなって】
【あの子?】
【はい、実は私、二年前に交通事故で息子を亡くしたんです】
「…………」
そこで仁は全ての謎が解けた。彼女は悲しみにのどん底にいたのだ。離婚したのはきっと息子の死が原因なのだろう。
絶望の中で苦しみながら彼女は一人軽井沢へ移り住んだ。そこでひっそりと一人で生きて来た。
そして二年の月日が経ち漸く心の内を誰かに話したくなった。しかし話せる人が周りにいなかったのでこのサイトへ登録したのだろう。
【それは大変だったね。じゃあ『フロストフラワー』はきっと心に響く本になると思うよ】
【そうですか? あの本はたしか離婚をした女性が北海道へ一人旅をしてフロストフラワーに遭遇したという話でしたよね?】
【そう。君は絶対読むべきだ】
【そこまで仰って下さるなら来週の水曜日に図書館に行ってみます。その後『種明かし』をして下さるんですよね?】
【うん、楽しみにしてて】
【わかりました。あ、ではこれから買い物に行くので今日はこの辺で】
【僕も仕事に戻ります。ではまた】
【はい、また!】
そこで二人はメールを終えた。