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「だから大学では彼氏作ってちゃんとエッチもしたし……。ほんとは、初めてはまーくんがよかったんだけどね」
「………………は」
「ダイエットも頑張って、あ、でも胸は萎まないように胸筋かなり鍛えたんだよ。胸の形をね、こう張りある感じで綺麗に保てるように。まーくんの歴代彼女みんな胸大きいんだもん」
優奈が胸を下の方から持ち上げる仕草を見せると、雅人はその目を手のひらで覆い隠してしまった。
「男慣れしとこうと思って彼氏も切れないように頑張ってたし」
「ちょっと、待ってくれ」
「なのに、思えば思うほど、理想なんて遠のいてくの」
「優奈」
饒舌な優奈を止めようと、雅人は力無く声を挟むが。
優奈は今話し続けなければ、次にその勢いを持てるのがいつになるのかわからなかったから、聞こえないふりをして声を出し続ける。
「退屈な大人になりたくないって、まーくんいつも言ってた」
「……ああ」
「本当にそうならないで今も生きてる。頑張っても頑張っても追いつけないどころか、まーくんに会いたくない私に成り下がって」
雅人が息を呑んだ音が響いた。
恐らく、優奈の声が震え出したからだろう。
「なのに今更こんなふうに再会しちゃって、しかも結構どん底の時に。アパートだってあんなでさ、恥ずかしいし。まーくんにはこんな私見られたくなかったって、ずっと嫌な態度取っちゃって」
そこまで言い終わると、優奈は本格的に涙が溢れてきてしまう前に息を整えようと、大きく深く深呼吸をする。
しかし優奈が息を整えるよりも早く、今度は雅人がすかさず話し始めた。
頭痛でもするのか、眉間にしわを寄せ額をおさえながら。
「あー、待て待て、優奈。俺はどこからツッコめばいいんだ?」
「……ツッコむとこあるの?」
涙声がバレていたようなので、てっきりいつものように”兄”の顔をして頭でも撫でてきてくれるんだろうかと考えていたが。予想とは全く違った反応に優奈は口を少し尖らせて反応を返したのだが。
「ツッコむとこがあるの? だって?」
明らかに上擦り、焦りを含んだ雅人の声。
「そんなもの、あるに決まってるだろう! どこの馬の骨に股を開いたんだお前は!」
「な!? ま、股って!」
雅人が優奈に下ネタを振ることなんてありえなかった。すなわち”股”などという直接的な言葉など、もちろん彼の口から聞いたことがない。
「いや、待て、お前ももう二十五だ……そうだな、そりゃ男を知ってる確率の方が高い。彼氏だっていたんだもんな。そうだけど、でも」
「いや、処女だったら正直引かない?」
「……引かない、嬉しい。いや、それよりも、お前がこの間まで付き合ってたつもりの男も、あれは浮気どころじゃない」
「え、知ってるよ。本命の彼女いたんでしょ」
「違う、妻子持ちだ。優奈が言ってる本命の彼女って女がそもそも不倫相手のクズだ」
驚きのあまり、優奈は口を開けたまま呆然とした。さすがにそこまでは知らなかった。