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ラブホテルを正午過ぎに出た二人は、近くにあるカフェに立ち寄り、ランチを済ませた。
拓人の運転する車が、一般道と東名高速道路を走り、再び都内を目指す。
「今度はどこに行くの?」
優子が、飲み物を口に含むと、車窓に目を向けた。
「ん〜…………赤坂見附」
赤坂見附に行くのは、処女だった元娼婦、九條瑠衣を仕事で抱いて以来、約五年振りになるかもしれない。
それにしても、と拓人は思う。
身体だけの関係の優子を連れて、好きだった女との縁のある場所に行くなんて、おかしな話だな、と。
だが、彼の中では、瑠衣の痕跡が残る場所へ訪れる事で、自分自身の気持ちに、けじめを付けたかった。
(まだ俺は、瑠衣ちゃんへの気持ちが…………残ってるって事なんだよな。彼女も恋人がいるし、気持ちにケリをつけた方がいいって事だよな……)
ステアリングを握る彼の指先に、力が鋭く入れられる。
(それに…………隣にいるヤリ友だったはずの女に…………俺は──)
「ねぇ。アンタどうしたの? さっきから渋い顔をしちゃって……」
助手席に座っている女から、顔を覗き込むように声を掛けられ、拓人がハッと我に返る。
「い……いや、何でもない。眩しいなって……思っただけ」
彼は、苦笑しつつ、アクセルを強く踏み込んだ。
拓人の愛車は、東名高速道路から首都高速を経由していき、一般道を走行している。
黒いセダンは、四ツ谷駅周辺にあるフラワーショップに立ち寄り、拓人が白百合の花束を買い求めた後、彼にとって懐かしい場所である赤坂見附へ向かった。
「着いたぞ」
老舗高級ホテルのすぐ近くのコインパーキングに車を止め、拓人が花束を抱えて先に車を降りると、助手席のドアを開ける。
「アンタ、湘南に着いた時も、助手席のドアを開けてくれてさ…………一体どうしちゃったの?」
「いいから降りろって」
「えっ? ちょっ……なっ…………何!?」
拓人は、女の細い手首を掴み、腕を引き寄せると、そのまま色白の手を繋ぐ。
優子は驚いたのか、身体を小さく震わせていたように見えたが、彼は構わず、手を繋いだまま、第二の目的地へ足を運ばせた。