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32話 きかいじかけのカレンダーと季節表
山江広場。
石畳の真ん中に、
歯車が重なった機械がある。
高くもなく、
低くもない。
近づくと、
音がする。
かち。
かち。
ゆっくり。
上の円盤は、
季節を指している。
春。
動かない。
真ん中は日付。
その下の針は、
午後二時四十分。
数字はない。
針の位置だけ。
リカは、
少し厚めの上着。
袖を折り返し、
広場に立つ。
腰元で、
電子マネーとお守りが
静かに触れる。
隣には、
派手めな服の友達。
キーホルダーが
じゃらっと鳴る。
後ろには、
髪をまとめた友達。
手帳を抱えている。
誰も、
時間を確認しない。
見ているだけ。
歯車は、
止まらない。
早くもならない。
遅くもならない。
春は、
春のまま。
午後二時四十分は、
午後二時四十分のまま。
「ずれないね」
誰かが言う。
返事はない。
機械は、
答えない。
ただ、
指している。
季節と、
時間。
リカは、
それでいいと思う。
今日は、
春。
今は、
午後二時四十分。
それ以上、
知る必要はなかった。
広場の明かりが、
足元を照らす。
歯車の影が、
少しだけ動く。
それを見て、
三人は、
しばらく立っていた。