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33話 スポットの歩き方
厚い本。
角が少し丸い。
紙のにおい。
山江のベンチで、
リカは膝に置く。
少し厚めの上着。
袖を折り返す。
腰元で、
電子マネーとお守りが
静かに触れる。
横には、
派手めな服の友達。
キーホルダーが
じゃらっと鳴る。
反対側には、
髪を後ろでまとめた友達。
手帳を抱え、
ページをめくる指が速い。
見出し。
娯楽広告。
線画の遊園地。
1583。
昔ながら。
広さは、
東京ドーム百五十個分。
次の頁。
暗い客席の線。
1895。
常時五十作品。
五カ月先まで、
小さな活字が並ぶ。
さらに。
山の影。
80。
農業の大地。
山遊び。
火を囲む絵。
頁の端。
岩の層。
111・999・772。
巨大。
崖。
絶景。
少し進むと、
高い建物の線。
10005。
空に近い窓。
緑が多い。
人の流れが穏やか。
「ここ、行った?」
答えはない。
紙の音だけ。
リカは、
しおりを挟む。
行ったところ。
行けそうなところ。
未来は、
本の中。
数字は、
紙の上。
閉じる。
重さが、
戻る。
立ち上がる。
明かりが、
足元を照らす。
今日は、
読むだけ。
それで、
十分だった。