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#普通
野々さくら
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ありあ
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それから一同は、それぞれ注文した料理を囲み、遅めの食事を始めた。
先ほどまでの重苦しい空気も少しずつ薄れ、テーブルにはいつもの穏やかな時間が戻りつつある。
そんな中、朝陽だけは何かが引っかかっているようだった。
箸を止め、しばらく考え込んだ末に、おもむろに口を開く。
「でも僕、疑問に思ってる事があるんですよね」
「疑問?なにが?」
信愛が尋ねると、朝陽は記憶を確かめるように話し始めた。
「ほら、僕らはバスの中で西さんに会いましたよね?」
「まぁ、うん・・・」
「カルネアデスバスって、西さんが化けた姿で、バスの中って西さんの腹の中状態だったんでしたよね?」
「ああ、確かにそうだったね」
茜も頷く。
そこで朝陽は、核心となる疑問を口にした。
「て事はですよ?西さんの腹の中に
西さんが現れたって事になりますよね?」
「あ、そうだね」
さくらが答えたものの、改めて言葉にしてみると、確かに奇妙だった。
焔垂も腕を組む。
「言われてみれば不思議だな
分身でも出来ない限り、おかしい話だよな」
「ですよね。あれってどういう事だったんでしょうか?」
全員の視線が信愛へと集まった。
信愛は少し考えてから、ゆっくりと口を開く。
「私もあんな経験した事ないから
確証は無いけどあれ、西さんの形をした
魂だったんじゃないか?って思ってるんだよね」
「魂?」
朝陽が聞き返す。
「ほら、魂は記憶を司ってるでしょ?」
茜が納得したように頷いた。
「まぁ、魂に刻まれた記憶があるくらいだからね」
信愛はさらに記憶を辿る。
「それに西さんは制服姿だった…」
「つまり・・・どゆこと?」
さくらが首を傾げる。
「おそらく西さんの魂に刻まれた
記憶には事件の一部始終が記憶されて
たんじゃないか?って思うんだ」
「あ!そっか!信愛は西さんの
魂に刻まれた記憶を見てないんだよね」
「そう、だから、あくまでも
推測でしか無いんだけど」
信愛は小さく頷いた。
「あの時、私たちの前に現れた西さんは
その記憶の中の西さんの姿を借りた
魂だったんじゃないかって思ってる」
焔垂が納得したように呟く。
「一般的な霊じゃなかったって事になるわけだな」
「うん・・・」
そこで信愛は、もう一つの疑問へと考えを巡らせた。
「だからこそ、西さんの声が
レコーダーで録音できたんじゃ無いかな?」
「ああ!確かに!」
茜が声を上げる。
「あの動画みて『霊の声って
記録できるんだ!』ってビックリしたもん」
「それに関しては私もビックリした」
朝陽も、ようやく腑に落ちたように頷く。
「一般的な霊じゃなかったからこそ
音声が録れてたって事ですね」
「そういう事だと思う」
さくらは一連の話を聞きながら、しみじみと呟いた。
「深く知れば知るほど、霊って
一言じゃ語れないんだなって思い知らされるね」
その言葉に、誰もすぐには答えなかった。
これまで彼女たちが出会ってきた存在も、その在り方は一つとして同じではなかった。
人が一人ひとり違うように。
死者もまた、一括りにはできない。
「人間と同じで、みんな同じじゃないって事だね」
信愛は静かに頷くと、再び食事へと手を伸ばした。
◇ ◇ ◇
それから数日後。バス会社には
「西鉄雄さんを弔いたい」
「花を手向けたい」
という要望の電話が鳴り止まなかった。
これを真摯に受け止めたバス会社は、要望に応えるため、そして自分の命を顧みず、乗客の命を護った英雄の存在を後世に遺すため、バス会社は鉄雄を弔うための慰霊碑|建立《こんりゅう》を正式に決定した。
その慰霊碑を覆い隠すほどの花が手向けられるのはもうしばらく後の話。
File6−カルネアデスバス−──END。
コメント
1件
×××さん、File6完結お疲れ様でした…! 西さんの魂が記憶として現れたっていう解釈、すごくしっくりきました。あのバスの中で西さん自身に会えた違和感が、ちゃんと伏線として回収されてて感動したんです。慰霊碑の話も温かくて、ちょっと泣きそうになりました…。連載本当にお疲れ様です、次のFileも楽しみにしてますね🌙