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🍛 シーン1:黙々と座る三人組
夕暮れ時。塔のふもとにある《碧のごはん処(ミドリ)》は、今日も青く発光する湯気に包まれていた。
ガラリ、と入り口の戸が開き、無言のまま背の違う三人組が入ってきた。
ごつい背中、無骨な右腕にフラクタルツールを背負った褐色肌の男――ゴウ。 眼鏡にスキャナーを首からぶら下げた、痩せ型の静かな青年――ギョウ。 キャップを目深にかぶり、黙ったまま周囲を警戒する男――キョウ。
誰も何も言わないが、空気が“処理後チーム”で満たされていく。
🧑🍳 シーン2:処理後プレート、起動
「はいはい、来た来た。あんたらが来ると静かで助かるけど、厨房はてんてこ舞いやで」
カウンターの奥で、タエコがすでに調理を始めていた。
《FRACTAL_COOK_HEAVYSET=ON》《LIFECARD_COST=3D》
彼女が入力したのは、フラクタル調理コード《処理後プレート》。 碧素水と合金パレットの上で、フラクタル肉・蒸し根菜・高濃度碧素スープが、次々に青く光りながら整列していく。
重力制御された皿が「ドンッ」と音を立ててカウンターに置かれた。
「ほれ、処理後プレート三つ。……あんたら、今日はよく働いたな」
三人は無言のまま座り、それぞれの定食に箸をつけた。
🍽️ シーン3:三人の沈黙と、ひとつの言葉
カウンター席に、黙々と咀嚼する音だけが響く。
ギョウが湯気の立つ碧素スープをすすり、ゴウはフラクタル肉を豪快にかみちぎる。 キョウはただ、器のバランスを確かめるように食べ続ける。
タエコは厨房の奥で静かに微笑み、すずかAIがそっと音声で言葉を添える。
「三名の碧素循環率、上昇中。幸福指数、緩やかに安定しています」
やがて、キョウが箸を置き、ぽつりと一言。
「……うまい」
その瞬間、ギョウがふっと吹き出し、ゴウが「キョウが喋ったーっぺ!」と叫ぶ。
店内の他の客たちも笑い、静かな店に、小さな花火のような笑いが咲いた。
黙っていても、伝わるもんがある。
処理後プレートは、言葉じゃなく“重さ”で満たされていた。