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#普通
野々さくら
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ありあ
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焔垂は画面に表示された歌詞を眺めながら、感心したように呟いた。
「随分とトリッキーな読ませ方する歌詞だな」
「でしょ?でしょ?でしょ?」
茜は我がことのように嬉しそうに身を乗り出す。
「私も最初聴いた時、やたらと普通普通
言ってるなぁ〜って思ってたんだけど
歌詞見てもうビックリ〜って感じ」
「確かに二面性あるよな」
焔垂も改めて歌詞を思い返す。
「特に『作為的』『虚無』『無個性』と書いて『普通』
逆に『普通』と書いて『エゴ』とか
『刃物』って読ませるの、深いなって思うよ」
「うん♬うん♬うん♬」
茜は焔垂が歌を絶賛してくれたことが嬉しいのか、満悦といった表情で相槌を打った。
焔垂の話は、さらに熱を帯びていく。
「あと歌詞が徹底して『抑圧→葛藤→覚醒→反抗』
って構図になってて、起承転結が
ハッキリしてるのも凄いって思うよ」
「確かにストーリー性あるよね、この歌詞♬」
「あとこれって、多分だけどさ──」
焔垂は少し考え込みながら、言葉を続けた。
「曲を音だけで聴いた時の感想と、その後に
歌詞と一緒に聴いた時の感想って真逆だよな?」
「そうそう♬それそれ♬焔垂なら絶対
気づいてくれるとおもったよ♬」
茜が勢いよく食いついた。
「歌詞見ずに聴いた時に──
『なんかこの曲、普通普通言ってて変な歌だなぁ』
『普通じゃ無いな』って思わせたかったんだってさ」
「なるほどな〜・・・」
焔垂はその言葉を頭の中で復唱する。
「で、普通じゃないって思ったヤツが歌詞見た時に
『今の俺はエゴだったんだ』って思い知る訳か」
「その通り!」
茜は満足そうに大きく頷いた。
「だから『なんか普通じゃない』って
聴くの辞めたりしちゃったら──」
「自分のエゴに気付けないって訳だな」
「そーゆーコト!」
焔垂は感心したように息を吐いた。
「聴いたヤツの感想も全て込み込みで
ひとつの曲にしてる訳か
それを計算して歌詞書けるヤツは
相当書けるヤツだよな」
そこまで言って、茜が何気なく付け加える。
「これって作詞作曲、全部TAMAYAなんだってよ」
「まじでか!?すげーなTAMAYA!」
先ほどまで名前すら知らなかったというのに、焔垂はすっかり興味を持った様子だった。
そんな彼を見て、茜が楽しそうに笑う。
「帰って聴いてみたら?」
「いや、俺サブスクって登録してないんだよな・・・」
「うっそ!?ガチ!?」
茜は目を丸くした。
「今だったらLIME MUSIC
初回登録で年末まで無料よ?」
「え?まじ?年末まで無料で聴き放題?」
焔垂が確認するように聞くと、茜は当然と言わんばかりに答えた。
「当たり前じゃん。元々ウチらみたいな
学生は半額でお得なんだけどね
今だけ夏休みキャンペーンでさらにお得なの」
そして、呆れたように笑いながら付け加える。
「登録しないなんて勿体無いよ?」
焔垂はしばらく考え込んだあとスマホを取り出した。
「なるほどね・・・なら早速登録するわ」
そう言った焔垂は、なぜかそのままフリーズしてしまう。
茜はそんな焔垂を不思議そうに見た。
「どうかした?」
「あ、いや、その・・登録ってどう
やってやんのかな〜って。詳しくなくてさ」
どこか気まずそうに答える焔垂に、茜はあっさりと言った。
「やったげよっか?」
「え?まじ?なら頼むわ」
焔垂が素直にスマホを差し出すと、茜は慣れた手つきで操作を始める。
しかし茜はスマホを操作しながら、焔垂を見下すように笑う。
「ふっ、なんかお父さんと会話してるみたい」
「お父さんって言うな!ピチピチだわ」
焔垂のツッコミに、茜は楽しそうに笑った。
◇ ◇ ◇
それからしばらくして。
「はい!登録できたよ」
茜はスマホを焔垂へ返した。
「一応、私が作ったTAMAYAの
プレイリストも共有しといてあげたからさ!」
「お!サンキュー!」
「これで現代に仲間入りね♬」
「俺は生まれてこのかた現代人一筋だわ!」
すかさず返ってきたツッコミに、茜はまた楽しそうに笑う。
ひとしきりTAMAYAの話で盛り上がったせいか、ふと気が抜けた瞬間、茜は自分の腹が空いていることに気づいた。
「てか、お腹空いたぁ〜・・・」
「急だなおい」
ツッコミをする焔垂だったが、自分も朝食べてから何も食べてないことを思い出す。
「まぁでも確かに腹減ったな・・・」
「何か注文しよっかな〜・・・」
茜はそう言って、テーブルに置かれていたメニュー表を開く。
しかし、ページをめくるたびに、その表情は少しずつ渋くなっていった。
「うーん。高いし、あんま唆られないなぁ」
「まぁ、カラオケのメニューって地味に高いからな」
茜はしばらくメニューと睨めっこしていたが、やがて静かに閉じた。
「注文するの辞めよっかな・・・」
すると焔垂が、何でもないことのように提案する。
「ならいつものファミレス行くか?奢るぞ」
「え!?ほんと!?」
さっきまでの渋い表情が、一瞬で明るくなる。
「行く♬行く♬行く♬」
そのあまりの変わりように、焔垂は思わず苦笑した。
「じゃあ行くか」
二人は荷物をまとめると、カラオケ店を後にした。
TAMAYAという新しい音楽を知った焔垂と、その魅力を存分に語れて、布教に成功して満足した茜。
二人はそのまま、いつものファミレスへと向かった。
コメント
1件
うわっ、TAMAYAの歌詞の解釈めっちゃ深いですね…!「作為的」「虚無」「無個性」って書いて「普通」って読ませる仕掛け、それに気づいて熱く語る焔垂くんカッコよかったです。茜ちゃんが布教成功して嬉しそうなのも可愛い🥺 最後の「奢るよ」からのファミレス行き、二人の空気感が自然でほっこりしました。毎回こういう日常の積み重ねが好きです🌙