ドッペルゲンガーの話。
※これを執筆中、数体の良くなさそうな霊が寄ってきていたので、もしかしたら読み手に影響があるかもしれません。書いてる側としては、体験の内容もそこまで怖くない不思議な話の分類だと思っていますが、以下は自己責任でお願いします。
小6~高1くらいまで、当時めちゃくちゃ仲良かった友達や自分の身内に突然「昨日〇〇にいたよね?」と確認される時期があって、前日は家にいたからそれは私ではない他人の空似だろう、ということが何度も続いた。
ある時、一緒に吹奏楽やってた友達(以下Yとする)が「昨日YAMAHAにいたよね?何か新調したの?」と登校中に聞いてきた。
「いやいや、YAMAHAなんて私が行く訳ないやんけ。担当パーカスだし、スティックとかも学校の使ってるからマイスティックなんて買う気もないし!」と否定したら、Yが「え?でも昨日話しかけたら雪本人だったよ?」と言う。
なんでも目が合ったから手を振ったら、明らかに知人に会った時の雰囲気で振り返してきたのだとか。
でもY曰く、その時周囲を確認したら、見たことのない金髪の女の子と私が一緒にYAMAHAに来ていたように思ったという。2人でサックスを見て指さし、楽しそうに何か話してたそうな。
でも私はその時まだ小学生。友達の中に金髪なんていない。確かに実家の近くに教会があって、そこになら金髪の子供がいたけど、その子とは接点もない。
そう伝えたらYは「じゃあ他人の空似なのに、手を振ってくれたってこと?」と凄い変な顔してた。
まあそうなるわなと思っていたら数ヶ月後、Yが「ねえちょっと。昨日〇〇って雑貨屋に一緒に行ったよね?なんで急に帰ったの?」と怒った様子で言われた。当然こちらは身に覚えがない。
確かに前日は大会後で吹奏楽が休みだったけど、私は別の友達と遊んでいて、Yとは会っていなかった。流石に理不尽だと思ったが、実際に遊んだ友達を巻き込んで何とか誤解を解いた。
ーーーそれが後に、1回目の目撃談の正体が憑依勢のひな(私の生身に激似)とあさか(金髪)だということが判明する。
問い詰めると、ひなからしたら憑依したままYとも遊んだりしていたので、Yは友達感覚だったからYAMAHAで遭遇した時も目が合ったので咄嗟に手を振ってしまったと言う。
ひなはあさかと街に出掛けていて、ふらっとYAMAHAに立ち寄ったところ、まさかのYがいた。しかもYは霊感持ちでひなは比較的に視られやすい性質だったことから、目が合ってしまったのだそう。
でも、あさかまで視えたのには驚いたと言っていた。目が合って手まで振られたら、反射的に振り返してしまったらしい。
じゃあ、吹奏楽が休みの日にYと遊んだのかと問い詰めると「流石に遊んでない!」と否定された。
YAMAHAで遭遇した時は僅かな時間視られただけだから、Yも波長が合ってる時間のみ視えただけで、流石に実体化して遊んだり、Yに長時間視えるようにするのは無理だという。
実はその期間Y以外にも、祖母や母までもが私にそっくりな人を目撃したと聞いていて、身内が買い物途中で見掛けたのはひなだったと判明したが、Yが遊んだ奴の正体は不明だった。
私の生霊説も浮上したが、遊びたい時は純粋に誘うし、念を飛ばすほど固執もしていない。
その時はあまり気に止めていなかったが、その後なんとYと同じ体験をした人が周りで3人程出て、これは何かおかしいと少し大事になった。
ーーーここからが個人的に気持ち悪いと思った出来事である。
1人目は幼馴染のN。1つ上の男の子で、私が当時片想いしていた相手だった。親が仲良く、中学に上がる頃には度々親に連絡をしなくても個々に遊ぶくらいには仲が良かった。
Nは私が遊びに来てゲームをしたと言うが、その日は私と母で買い物に行っていたのでNと会っていない。
Nから「昨日お前、使ったゲームカセット何処に置いた?」などと唐突に連絡が来て「は?」となった。
もちろん本人に即電話して、母と一緒に買い物していたことを伝えるとNも「は?」と言っていた。
ただ何か引っかかるものがあったらしく、何だか神妙そうに「お前さあ、俺の母さんのこと『〇〇〇(俺)くんママ』って普段呼んでるじゃん?」と切り出した。
「昨日のお前、俺の母さんのこと『お母さん』って言ってて違和感はあったなー」
違和感はそれだけでなかったらしく、続けて「しかもお前ん家〇〇(土地の名前)で××(別の土地の名前)とは遠いじゃん?なのに××のケーキ持って来たから変だなとは思った。お前スーパーのクッキーとかチョコしか普段持って来ねえのに」と、いつもと違う私の行動に首を傾げていた。
それを聞いた母も気味悪がって「何それドッペルゲンガー!?やだ怖い」と震えていた。
ひなを問い詰めても、ひなは元からNが苦手らしく「雪がいないのにわざわざ疲労困憊になってまで遊ぶ訳ないでしょ」と頑なに否定した。
2人目は私の叔父。母の兄で、実家の1階で美容室を経営していた。もちろん一緒に住んでいるに等しい状態なので、毎日顔を見るのだから、私とそっくりさんを間違えるとは思えない。
なのに、ある日突然「あれ?さっきスーパーにいたよな?もう帰ったの?」と、変なことを言い出す。私はずっと午前中で学校が終わってから直帰して部屋にいた。
叔父に伝えると「え!?そっくりさんなんてレベルじゃなくて、あれは雪だったぞ!?」と仰天。
顔も同じだが、私の好きなチョコやクッキーの箱をカゴに入れて持っていたから、私本人だと思って話しかけたらしい。
「まーたそんなニキビできるもんばっか食って~」といつものように茶々を入れるつもりで話しかけたら「別にいいじゃん」と拗ねるように返答したのだとか。
ただ、叔父はふと思い出したように「でも雪、俺のこと『叔父ちゃん』なんて呼ばないよなぁ……」と首を傾げた。
私は叔父のことを名前で呼ぶ。なんなら母以外のことは全員名前で呼ぶし、叔父ちゃんなんて絶対に言わん。
叔父には、以後もしまた私を見掛けても、私から話しかけない限り声を掛けないよう注意した。
今のところまだ会話のみで済んでいるが、あまりの頻度の高さに得体の知れない相手に警戒心が生まれた。
そして3人目は中学で仲良くなったM。部活は違ったがクラスが同じで、土日よく一緒に遊ぶ仲だった。
Mはなんと私にそっくりな何者かと週末にお泊まりをしたというから驚きだ。
珍しく遊ぼうの連絡がないから今週は忙しいんだな~と思った週明け、おはようの挨拶もそこそこに「昨日楽しかったね!また泊まりにおいで」と言われて今度は私が心底仰天。
「と、泊まった!?私が?Mの家に!?」と思わず声を荒らげると、Mは不思議そうに「何そんな驚いてんの?忘れたの?昨日うちで絵描いたりして、遊んだ後に泊まるかーってなって急遽泊まったじゃん」と当然のように言う。
前日私は家にいた。実家の家業が繁忙期で宅配の手伝いをしていたから、そもそも遊んですらいない。
これはなんだか雲行き怪しいと思い、Mに「私から誘うまで思い立って会うのやめてね」と今までのことを話し、得体の知れない相手だから危ないよと伝えたら「週末誘ってきたのは雪じゃん……」と呆れたように言われて更に仰天した。
「電話で誘ってきたじゃん、何言ってんの?」とMはあまり取り合おうとしない。元々共通の話題が絵から始まった仲で、心霊系や不思議体験をあまり信じないタイプだから仕方ないが、これでは私が頭のおかしい奴だ。
Mは私に不信感を抱いたようで、それ以降友情に亀裂が入ってしまった。かと言って学校生活が終わるようなことにはならなかったが、女子の友情なんてこんなものである。
むしろそれ以降Mに私のそっくりさんが遭遇したかは知らないが、関わりがない方が安全だしいいかと思って気持ちを切り替えた。
Mがお泊まりしたというのが確か中2の頃で、中3の時期には特に誰からもそっくりさんの話を聞かなくなった。
受験が無事終わって高校の入学があり、バタバタするのも終わった高1の夏、学校終わりにふと最寄りのスーパーに立ち寄ると叔父が買い物をしていた。
「アイスでも買っちゃる~」と珍しく姪に優しい叔父。パチスロで買ったんだなと機嫌の良さですぐ分かる。
1番高そうなアイスを強請って会計を済ませ、叔父と並んで歩く。スーパーは徒歩圏内で、5分もあれば家に着く。
くだらない話をしながら歩いていると、曲がり道で叔父が急に立ち止まった。
突然私の肩を掴むと「おい、あれ!お前のそっくりさん!!」と小声を荒らげた。
え!?と思って立ち止まり振り返る。
叔父の指差す方にいたのは、制服姿の女の子。しかし、顔が全く違う。制服もセーラー服で、私の可愛さで選んだブレザーの制服とは見るからに別物で、あれはどう見ても別人だった。
「……待って、何処が似てんの?」と怪訝な顔で問う。叔父は「はあ?」と更に怪訝な顔で「どう見てもお前と瓜二つだろ」と訳の分からないことを言う。
「目、腐ってんじゃないの?まじで病院行った方がいいんじゃ……?」と本気で視力を疑ったが、叔父の視力は私より遥かに良い。「失礼なこと言うな」と叔父に小突かれ、再度後方の女の子を見るが、どう見ても私に似ても似つかない。
咄嗟にひなにも念で聞いたが「……何処が似てるんだろ?」と首を傾げている。
少し距離があるのをいいことに、叔父が閃いたように私を歩道に立たせて背後に女の子が来るように配置し、携帯を構えた。
「ピースしろピース」と言うので嫌々ピースしたら、1回だけシャッター音が鳴った。
叔父に手招きされて今撮った写真を覗く。そして驚愕した。「なにこれ!?」と一緒に覗き込んだひなも声を上げている。何度か後ろを歩いて来る女の子と写真を見比べてしまった。
肉眼で見た女の子はまるで別人。なのに、写真に写った女の子は私と瓜二つなのだ。顔だけじゃなく、服装まで同じだった。有り得ない。
違う点があるとしたら、目だった。白目がない。黒目が大き過ぎるのかよく分からないが、とにかく真っ黒。
訳が分からない状況に困惑していると、女の子が私達の真後ろまでやって来た。
さっきまで目すら合わない様子で携帯を見ながら歩いていたのに、手の届きそうな距離になった時、急に女の子が顔を上げた。
女の子は顔に薄ら煙を纏っているように見えた。が、一瞬過ぎて何だか分からなかった。
道を塞ぐように立っていた私達を避けるように真横を通る時、女の子は不自然な首の角度で私とガッツリ目を合わせてきた。
その目は真っ黒ではなく、人間そのものの目をしている。
そして会釈のつもりだったのか不明だが、凄い笑顔だった。口の端を吊り上げたように笑っている。
普通に生きている人の目だった。でも何か言い表せない気持ち悪さのある笑顔と目付きで、探るように霊視したが中身が視えない。
狐憑きみたいなものかと思ったが、ひなが言うに、動物特有の匂いはなかったそうだ。
女の子は通りすがった後、また携帯に視線を戻して歩いて行ってしまった。
画像に残る背後の私モドキが凄く爛々とした目で笑っていた。
叔父はその画像を母や叔母達に見せようとしたが、気味悪がられると見越してやめたらしい。
代わりに自分の常連客に、何も言わず「これ姪っ子」と画像を見せたら「えー!双子ちゃんなの!?」と反応されたと後日聞いた。
叔父以外にも、画像に写る通りそっくりに見えているのがまた気持ち悪かった。
あの制服からしておそらくあの女の子は当時中学生。年の差は2歳くらいだろうか。しかも中学が母校で、同じ学区内に住んでいることになる。
偶然見かけたあの日を境に、同じ時間にわざとあの道を歩いても遭遇することはなく、全く見かけなくなってしまった。
結局なんだったのか今でも分からない。何か、他人に擬態できる霊体が憑いていた説が今のところ1番濃厚だが、定かではない。
その後は特に接触することなく、約10年が経った頃、娘が友達と遊んで帰宅した際に「そういえば」と言った。
「今日ね、帰る途中でお母さんに凄くそっくりな人がいたよ!手を振ったら笑って振り返してくれた!違うとしたら服かな、お母さんあんな真っ青な持ってないもんね。〇〇(私を知る娘の友達の名前)もビックリしてたよ。本当に双子かと思うくらい、そっくりだった!!」
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