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『なぁなぁどうしたらモテると思う?』
『さぁなぁ。そういった話には興味無いし、思い付きもしないよ』
放課後の教室で二人。俺は幼馴染である楓清一に疑問をぶつけてみた。
体が細く、小柄で、黒い髪が少し長めのせいで辛気臭い雰囲気のある清一に訊く質問じゃないとわかってはいるが、こんな馬鹿な事を訊いても真面目に答えてくれそうなのはコイツだけだったのでつい訊いてしまったのだが…… 予想通り、俺が求めている答えは得られなかった。
『なぁ真面目に考えてくれって!』
『…… やっぱ顔だろ、顔』
『や、来世に期待みたいなやつじゃ無くってさ。今の俺でも可能なやつで頼むって』
清一と同じくチビなうえ、平凡な顔立ちプラス少しポッチャリ系でもある俺では、整形でもしない限り顔だけでモテるとか不可能だ。
無茶振りすんな!と思いながら清一の机にしがみ付き、ガタガタと揺らす。机の上に置いてあった筆入れやらスマホやらを清一がサッと持ち上げて安全を確保すると、清一が、『——あ』と短い声をあげた。
『スタイルいい奴って、モテるんじゃないか?』
『いや…… だからさーそれだって無理でしょ。親を恨みたくなるくらいに、俺は普通の頭身だぞ?』
『筋肉がある奴って意味だよ。ほら、スポーツやってる奴とか、不思議とモテるだろ?』
清一の一言に、俺は天啓を受けたような気分になった。
『——そうだな!それだ!お前、ホント頭いいな!』
(もうそれしかない!細マッチョとかマジカッコイイかも!痩せたら俺だって、ちょっとはマシになって彼女とかできるんじゃね⁈)
『…… 俺の頭がいいかは、まぁ別として。何でいきなりそんな事が気になり始めたんだ?モテたいとか…… 今までそんな素振り無かっただろ』
『や、だってさ、彼女とか欲しいじゃん!やっぱさ高校入ったら、彼女作って、デートして…… んで、んで…… !』と熱弁する俺に対して、清一が冷たい声で『もういい、黙れこの妄想野郎』と言い放った。
『うわ!その言い方酷くね?ショックだわぁお前にそんな事言われるとか。清一だって欲しいだろ?彼女』
『…… いらない。お前が、充がいれば…… 俺は別に…… 』
歯切れの悪い言葉を呟き、清一が俺から視線を逸らした。
『変な奴。まぁいいや。それよりさ…… 一緒にやんね?』
『は?な、何を…… 』
清一が警戒心丸出しの顔で、座る椅子ごと後ろにさがった。
『筋トレだよ、筋トレ!』
『…… は?』
『や、俺飽きっぽいしさ。一人でやっても三日で飽きると思うんだよね?んでも清一が一緒ならやれる気がするんだわ』
『…… 俺、運動は苦手だぞ?』
趣味は読書のテンプレ的インドア派な清一の肩を掴み、俺は輝く瞳で奴の目を覗き込んだ。
『親友だろぉぉ!頼むって!一緒にモテ男になろうぜ!』
『言葉の響きがダサいな』
『うっせ!な?頼むって!』
パンッと手を合わせ、拝むように頼み込む。すると、清一がふぅとため息をこぼし、ニコッと笑ってくれた。
『わかったよ。充の頼みだしな』
『マジか!ありがとな!持つべきものは真面目で気の良い親友ってホントだなー』
『誰の言葉だよ、聞いた事無いわ』
お互いに笑い合い、『んじゃ早速色々調べてみね?ネットとか、本とか色々探してみようぜ』と清一に声をかけて椅子から立ち上がる。
『そうだな、わかった』
清一も頷きながら席を立ち、俺達は一つの目標に向かい颯爽と歩き始めたのだった。
— —と、なるはずだった! はずだったんだよぉぉ!