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第22話「この波は、きみのじゃないよ」
登場属性:波属性(共鳴過剰型)
テーマ:過剰な共鳴と“他人の波”を背負う危うさ
登場人物:ネリ=アヤサ(波属性・共鳴過剰型)
髪はグレーに近い水色で、首もとにかけて斜めに揺れる触手のような房髪がある。
制服は波域の青銀ラインに、規定より多い装飾を勝手に縫い足している。
目は水面のように揺れていて、話すときは相手の言葉の“下”を読む癖がある。
朝の波域教室。ネリは、誰よりも早く手帳を出していた。
波域手帳には、自分の波だけでなく他人の感情メモがびっしりと書き込まれていた。
「イソガキくんは今日、不安だったみたい。あの声のトーン、絶対そう。
それとセト先生、昨日から疲れてる波。しゃべると乾いてる。」
――彼女は、共鳴が強すぎる。
ネリは誰よりも“感じ取れる”が、誰よりも“自分を持てない”。
共鳴が過剰すぎて、いつも他人の波をそのまま背負ってしまう。
料理部での昼休み。
新入部員の**マコト(熱属性)**が失敗した共鳴スープを前に、肩を落としていた。
「味、濃すぎたよね……」
「いや、あなたは大丈夫。火の波がまだ不安定なだけ。怒らないで。怖がらないで。笑って。安心して。」
ネリが一気にまくしたてる。
マコトが戸惑って、そっと離れると、ネリの表情がぐらついた。
その日の放課後、波域記録室。
**ウラメ=ギルス先生(波属性・演習教官)**が、ネリの記録を見つめる。
「共鳴はな、**“入れる”だけじゃなく、どう“流す”かも必要なんだ」
「……じゃあ、わたしが集めたこの波、どうすれば……?」
「返せ。“これはきみのじゃない”って、はっきり言え」
その夜。
ネリはひとりで波域手帳を開き、書きすぎた他人の記録を破り始めた。
それでも最後に残したページには、こう記した。
> 「明日こそ、“わたしの波”で料理をつくる。
それが、わたしの変質になるかもしれないから。」