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十一月中旬に一旦落ち着くはずの仕事が、予想以上にトラブルが続き、ひと区切りが付いたのは、下旬の連休に入る数日前。
(やっと……彼女に連絡が取れる……)
残業を終え、会社を出た圭は立ち止まると、スマートフォンを上着のポケットから引っ張り出し、メッセージアプリを起動した。
『美花さん、連絡が遅くなってすまない。やっと仕事がひと区切り付いた。デートの日程だが、二十三日、空いているか? もし予定が空いているなら、ドライブデートしよう』
送信ボタンをタップすると、圭はスマートフォンをスラックスのポケットに滑らせ、自宅マンションへ足を向ける。
ずっと残業続きだった事もあり、美花の自宅でもある『家庭料理 ゆき』にも顔を出せていない。
仕方なく、彼は自宅マンションのすぐ近くのコンビニエンスストアに入店し、パスタサラダを購入して、エントランスに入っていった。
鎧のようなスーツを脱ぎ捨て、シャワーを浴びた後、部屋着に着替えた圭は、ローテーブルに放置してあったスマートフォンを手にすると、通知センターに美花からメッセージの受信が表示されていた。
彼はすぐにメッセージアプリを開き、彼女の返信を確認。
『おにーさん、お疲れさまです! 二十三日は空いてるよ。ドライブデート、楽しみにしてますっ』
文字が喋っているような美花のメッセージに、圭の頬が緩み、返信ボタンをタップすると、すかさず文字を打ち始める圭。
『美花さんの予定が空いてて良かった。なら二十三日は、朝の九時に君の自宅まで迎えに行くよ。じゃあ、おやすみ』
送信ボタンをタップすると、すぐに既読マークが付き、白くて丸いキャラクターが眠っている顔のスタンプを受信。
(そろそろ……ハッキリさせないとな……)
美花と初めて出会ってから、もう少しで一年になろうとしている。
当時の第一印象は悪かったが、今、彼の奥底に存在している美花は、クリッとした瞳を細めている面立ち。
圭は、テーブルの上に置きっぱなしのパスタサラダを食べた後、歯磨きを済ませて、寝室に入っていく。
ベッドの上に身体を横たえ、二十三日は、どこに行こうかと、デートスポットを頭の中で検索し始めた。
「今の時期だと……外苑の銀杏が綺麗かもしれないな……。さらに足を延ばして、浜離宮に行くのもいいし、お台場方面に行って夜景を見るのもいいかもしれない……」
彼の脳内で妄想が膨らみ、唇が微かに綻んでいく。
だらしなく歪んだ表情を映したまま、いつしか圭は眠りに堕ちていた。