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ドライブデート当日、圭は徒歩で美花の自宅へ足を向けると、既に彼女は家の前で待っていた。
どことなく落ち着きのない様子で佇む美花に、彼はゆっくりと近付いていく。
「あ! おにーさん、おはようっ」
太陽を思わせる笑みで挨拶を交わしてくれる美花に、圭の心が和んだ。
「美花さん、おはよう」
「あれ? おにーさん、今日はドライブ…………だよね?」
「ああ。この辺は道が狭いだろ? 一度、俺の自宅に寄って車を取りに行く。じゃあ……行こうか」
圭は美花を先導して、来た道を戻り、自宅マンション前で立ち止まると、彼女は、うわぁ……と漏れ呟いている。
「ここで待っててもらってもいいか?」
「うっ…………うん」
彼がエントランス前に彼女を促すと、薄茶の瞳を僅かに見開かせながら、圭の暮らすマンションを見上げている。
そんな美花を横目にしながら、彼は、エントランス横の車専用通路をくぐり抜けると、奥にある住民専用のタワーパーキングを操作して、愛車を出庫させた。
「美花さん、乗って」
運転席側の窓を開け、エントランス前で待っている美花に乗車を促すと、彼女が、おずおずと車に近付いてきた。
「おっ……お邪魔しますっ」
「お邪魔しますって……。そんなに畏まらなくていいよ」
美花が丁寧にドアを開け、身体を助手席に深く腰掛けながらシートベルトを着用すると、緊張気味の彼女に、圭が宥めた。
「さて、行くぞ」
アクセルをゆっくりと踏み、圭の運転する車が滑らかに走り出した。
Lのエンブレムに、グランドピアノを思わせる艶めいた黒いボディのSUV車は、彼の自慢のひとつでもあった。
Lのロゴを見ただけで目の色を瞬く間に変える、多くの女たち。
彼女らの瞳に滲む色は、圭の俳優を思わせる外見、打算、ステータス、彼の持つ一流ブランド品などの『外側だけのディティール』。
何としてでも、圭に振り向いてもらおうと必死になっている女たちを、心の中で嘲笑していたものだった。
だが、隣でフロントガラス越しに映る情景を見やっている美花は、他の女たちとは、思っている事が別の次元にあるらしい。