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⚠️ショッキングな描写があります。
苦手な方はご注意ください。
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EPISODE3
〇月某日
水深200m程度の海の中。
潮の流れに任せてひたすら泳ぐ影があった。
向井だ。
何日、何週間泳いだかも覚えていない。
泳いでいないと気が紛れない。
振り向きもできない。
自分の涙が海に溶けることにも気づかないように、行く宛もなく泳ぐ。
その時だった。
?「そっち行っちゃダメ!!」
背後から声がした。
🧡「え?」
驚いて向井は初めて後ろを振り返った。
そこには、こちらに向かって明らかに泳いでくる人影があった。
影が近づくにつれ、その影の正体が自分と同族な事に気づく。
🧡「に…人魚…!? えっ?俺と同じ…!?」
リアルで同族に会うのは初めてで戸惑いを隠せない向井とは対照的に、その人物は少し焦っているようだった。
?「ここら一帯はサメの生息地だよ。呑気にしてると尾鰭食いちぎられちゃう!」
🧡「うぇ!?サメ!?」
?「俺についてきて!いい場所があるんだ」
そう言って腕を引かれされるがままに泳ぐ。
そこには小さい魚やカニが多くいて、潮の流れも穏やからサンゴ礁だった。
?「この辺なら安全だよ!海の生き物は言葉通じない子が多いから地上より無法地帯だよ、気をつけて!」
🧡「ご、ごめん…えっと名前は?」
🩷「俺佐久間!さっくんとかでいいよ。
海に来て3ヶ月とかかな、この辺のことはなんでもきいて!」
🧡「俺は向井康二、ここらで他に人魚っておる?」
🩷「いや?俺くらいかな、でもこの辺の魚とかイルカとかみーんな友達だから寂しくないかな!」
🧡「ふぅん…」
🩷「まぁ今んトコ人間に戻る気配もないし、戻ろうとも思わないし!気ままに生きてるよ〜」
🧡「未練とか…ないん?」
🩷「いや?なにひとつ!むしろ今の方が俺は自由で楽しいかな!こーじもすぐ慣れるって!」
🧡「そうなんかなぁ…」
輝かしい笑顔で尾鰭をなびかせ、イキイキと語る佐久間。
言っていることが少し気にはなるが心強い仲間ができた事に少し安心感を覚えた。
🧡「俺、ここにおってええん?」
🩷「当たり前じゃんその為に連れてきたんだから!俺の友達もまた紹介するわ!」
それから向井は佐久間と共に過ごすようになった。
佐久間の友達のイルカと一緒に泳いだり、貝の中の天然の真珠を探したり。
佐久間は底抜けの明るさに向井も徐々に笑顔やいつものノリが出るようになってきた。
ただ、心に小さなが穴がずっと空いているような気がする。何かを落としてしまったような。
楽しさで満たそうとしてもその穴から少しずつ抜け落ちていくのだ。
そんな中のある日の夜、佐久間が尋ねた。
🩷「こーじってさ。好きな人いたの?」
🧡「え?なんで? 」
🩷「よく海面を眺めてるから」
🧡「…まぁ…おったな。ずーっと片思いしとったやつがな」
🩷「その人はこーじが人魚になったの知ってる?」
🧡「俺が教えた唯一の人やな。家で匿ってもろてな。ホンマに、同棲しとる気分やったわ」
🩷「えぇ〜なんかドラマみたい!」
🧡「ただ、俺のせいでチャンスを捨てようとしとったから…。それだけは耐えれんかった」
🧡「俺あん時どうかしとって…海に捨てるか、死ぬかの最低な選択させてん」
🩷「なーるほどね。
じゃあさ…人間に戻りたいと思う?
その人にまた会いたい?」
🧡「………」
🧡「戻れるなら戻りたいし
許されるんなら会いたいよ 」
🧡「でもあんな最悪な別れ方した手前、会うのも許されへんのじゃないかなって…顔向けできへんわ」
🩷「ふーん…俺は戻りたいって思ったことないから分かんないな 」
🧡「なんや自分から聞いといてドライやな」
🩷「え、ごめん笑でもほんとに分かんないんだもん笑」
🩷「好きとか愛とか物語の中だけだと思ってた」
また気になるような事をいう。
しかし佐久間はそれを飄々と言うのだ。
彼の人間時代がどんなものだったのか、聞こうにも聞けなかった。
それから数ヶ月が経った頃、事件は起きた。
その日は晴れていて海に差し込む光も明るかった。向井は散歩がてら周囲を遊泳していた。
🧡(めめは今頃カナダやろな…撮影頑張っとるかな)
🧡(めめの映画見たかったな…)
🧡(このまま泳いだらカナダまでいけるんとちゃう?)
何ヶ月離れても頭から目黒の存在が離れない。
ボーッと考えていたせいで注意力が散漫していた。
次の瞬間だった。
🧡「おわっ!?なんや!?え!?」
何者かに尾鰭を取られた。
何かが絡みついている。
急に上手く泳げずパニックになりジタバタする。
🧡「ちょっとまって!?なんやのん…」
自分の尾鰭を見てサアッと血の気が引いた。
置かれている状況を理解した途端声が出なくなった。
自分の身体に網がかかっているのだ。
一緒に引っかかっている魚たちも必死に抵抗している。
バッと海面を見るとそこには大きな影が1つ。
シルエットで漁船だとすぐに気づいた。
まずい、引き上げられる。
🧡「あぁ…!クソッ!」
向井も必死に逃れようと暴れるが網が破れる様子もなくビクともしない。
そして抵抗も虚しく、向井は海の上へと引き上げられた。
ザバァッ
🧡「オェッ…!ゴホッゴホッ」
久しぶりに肺で呼吸をした。
急に大量の酸素が入ってきて思わずむせてしまう。
A「おい見ろよ!!人魚が…!!人魚がかかってる!!」
🧡(ヤバい…見つかってもうた…!)
B「そいつ抑えろ!金になる!!早く!!」
C「俺たちこれで億万長者じゃね!?」
船には3人の男が乗っていた。
向井は総出で取り押さえられた。
バレてしまった事でパニックになり向井は男達の会話がほとんど耳に入っていなかったが自分が今ピンチなのは分かる。
🧡「嫌や…!やめっ…!!」
ビチビチと尾鰭を動かすも全くの無駄だった。
その時、
🫧.•*¨*•.*♬ ~🫧.•*¨*•.*♬ 🫧.•
海の中から誰かの歌声が聞こえた。
芯の通った少し高い歌声。
歌声が聞こえた瞬間。向井を包囲していた3人の男達は頭を抑え、呻き声をあげながら苦しみ始めた。
その隙を見て向井は男達を手を払いのけて自由になる。だが、目の前の光景に見覚えがあるのだ。
🧡(めめの時と…同じや)
🫧.•*¨*•.*♬ ~🫧.•*¨*•.*♬ 🫧.•
歌声はまだ止まない。
男達は苦しみだしたかと思えば虚ろな目をして急に立ち上がった。
そして…
🧡「あぁ!!ダメ!!アカン!!」
ザプンッッ
3人とも歌声に引き込まれるように自ら海に身を投げた。
向井は慌てて海に戻る。
男達はもがきもせず泡を吹きながら海底へと沈んでいく。
🧡「アカンアカンアカン!!」
向井は1番近くにいた男の腕を掴み、海の上へと連れていく。
ザバッ
🧡「しっかりしいや!」
男は既に気を失っていた。
向井は船の壁面に取り付けられていた救命用の浮き輪にその男を腕と頭を乗せた。
あと2人。
残りの人たちも助けようと向井は急いでまた戻ろうとする。だが…
グイッ
🩷「なにやってんの!!逃げるよ!!」
佐久間が腕を引いてきたのだ。
🧡「さっくん!?でも…!!」
🩷「でもじゃない!早く!!」
佐久間は向井の腕を離すことなくひたすら泳ぐ。
なるべく遠く、遠く船から逃げる。
向井が呼びかけようとも一切の返事をせずに。
船の影も見えなく、エンジンの音も聞こえなくなるほどまで逃げてきた。そのタイミングで佐久間はようやく掴んでいた向井の腕を離した。
🩷「いや〜危なかった。危機一髪!」
向井は察する。
先程の歌声は佐久間だ。
なぜか佐久間も知っていた。人魚の歌声で人間が自我を失うことを。
🧡「なんで…なんであんなことしたん!?」
助かった安堵より人間が抵抗もなく海底に沈む光景の恐ろしさの方が勝った。
🩷「なんでって…何言ってんの?
あのままだとこーじ捕まって人間の餌食だよ?何されるか分かったもんじゃないよ」
🧡「やからって見殺しにする ことないやんか!!
あの人ら…自分で海に飛び込んでそのまま…!」
🧡「なんでそんな酷いこと…!!」
🩷「酷い?酷いのは人間だよ。損得しか見てない、私利私欲の為に人魚を金儲けの道具としか思ってない。優しくする必要ないの」
🩷「売られる前に殺る。それの何が悪いの?」
悪びれる様子もなく当たり前のように語る佐久間を向井は信じれなかった。
🧡「そんなこと…人間がみんなそうとは限らんやんか!大事にしてくれる人やって絶対…!」
🩷「また愛の話?そんなん、まやかしだって 」
🩷「こーじが好きだった人だって分かんないよ。ちょっとでもタイミングが違ったら…こーじのことどっかに売り飛ばしたかもしんないよ?」
🩷「今頃、こーじのこと忘れてどっかの男と楽しくやってるかもね」
🧡「めめはそんな男ちゃう!!!バカにせんといて!!!」
🩷「………男?」
🧡「……っ!」
ハッとした。好きな人がいることは言ったが、相手が男とは言っていないから。
🧡「……さっくんなんかもう知らん」
向井はバツが悪くなり、そう言い残して佐久間から離れる。
行く宛てももちろんない。
ただ今は、佐久間から少し離れたかった。
去る向井を特に追うこともなく、小さくなっていく後ろ姿を見つめる佐久間は呟く。
🩷「なんで…分かってくれないんだろ…」
コメント
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初コメ失礼します。 前回の「恋心に鱗」から読ませていただいてて、陰ながら更新を楽しみにしていました。儚い雰囲気の物語に緻密で繊細な書き方がとても好きです。 続き楽しみに待ってます☺️