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愛月☆
1,828
#あべさく
夢花𓂃𓂂ꕤ*.゚
1,901
⚠️ショッキングな描写があります。(流血表現)
かなり重いです。(当社比)
かなり長いです。(当社比)
苦手なお方はご注意ください。
⟡.·*.···························⟡.·*.
愛なんて、物語の中だけだと思っていた。
そんなもの知らずに生きてきた。
大企業の社長の息子ということだけで表からは「恵まれてるね」なんて言われたが、幸せだなんて思ったことは1度もない。
興味のない習い事をさせられ、マナーレッスンを強制される幼少期。
世間体や外面を誰よりも気にする人らだったから 「常に笑顔でいなさい」とずっと言われてきた。
だからにこやかに、明るく振舞ってきたのに、
両親が自分に笑いかけてくれたことなんて1回もない。
それでも、両親に自分を見て欲しくて必死に努力してきた。
🩷「お父様みてください!この間のバレエのコンクール、3位入賞しました!」
🩷「期末テストの成績、10位圏内でした!」
褒めて欲しくて、自分を認めて欲しくていい成績を収めたときは必ず報告した。
でも……
父「お兄ちゃんはお前の歳で同じコンクールで優勝して特待生候補になってたがな」
母「お兄ちゃんはこの間のテストでダントツトップだったそうよ。これが兄弟の差よね」
でもど れだけ努力しても兄の方が上だと比べられた。
兄ばかり褒められて、可愛がられて。
常に「兄の影」として見られてきた。
そのくせ子供の人生を矯正してくる。
学校、就職先も全て決められ一人暮らしも許されない。人生全て親の敷いたレールの上を進むだけ。
でも拠り所が両親しかいない以上、全て従うしかなかった。この両親に縋るしかなかった。いつかきっと認めてくれると信じて。
だがある時期から、両親の会社の経営が傾きはじめた。
何とか立て直そうと奔走していたようだが、改善する兆しもなく右肩に下がり続けた。
そんな時に両親がとった行動。
🩷「…………結婚?」
父「あぁ、○○○株式会社のご令嬢だ。お前との結婚を引き換えに取引を契約してくれるそうだ。資金も援助してくれる。これで経営が立て直せる」
🩷「待ってください、そんな顔も名前も知らない方と結婚なんて…!」
🩷「それに俺じゃなくて兄さんが結婚すれば…!」
母「ダメよ。帰ってくるまで待てないわ。今すぐ婚約を結ばないと資金繰りが間に合わないわ 」
この時、兄は海外支社へ単身赴任中だった。
期間は3年で戻ってくるのにまだ1年以上残っていた。
父「お前が結婚するだけで会社の何百人もの生活を救えるんだぞ?
今までお前が私たちの期待に応えたことは1度もなかった。…これ以上ガッカリさせるつもりか?」
勝手に期待して勝手にガッカリされて、望んでいない政略結婚の道具にされる。
でもこの時の自分の思考はどうかしていた。
🩷(やっと……2人の役に立てるのか)
🩷「……分かりました」
母「来週先方のお嬢さんとご両親がいらっしゃるから。そのつもりでいなさい」
自分が我慢するだけで両親と多くの社員を救えると思えばいいのかもしれないと承諾をしたのだ。
来週の顔合わせまでに覚悟を決めよう。
そう考えていた矢先の事だった。運命を変える瞬間が訪れたのは。
🩷「…なんだ?これ…」
脚の付け根に硬い模様が浮かんでいた。
まるで…魚の鱗のようだった。
その模様はたった数時間の間でみるみるうちに形がハッキリと浮き出て脚全体に広がって行った。
🩷「どうしよ…!なんだこれ…!?」
相談できる相手もいなくただ一人で正体不明の突然変異の恐怖に怯えた。
そして誰にも言えないまま脚は尾鰭へと変貌し、たった1日で人魚になった。
鏡に映る自分はおとぎ話に出てくるような人魚姫のイメージとは程遠い姿だった。
首には鰓ができ、歯は鋭く尖っていた。
それに反し、鱗と尾鰭は憎たらしいほど鮮やかで美しい光沢を放っていた。
パニックの状態でも、自分の中でたった1つの不安が頭の中で渦巻いていた。
🩷(お父様とお母様になんて言おう…)
やっと役に立てる時が来たと思ったのに。
こんな姿になったこと知られたらどうなる事か。
なんて思われるだろうか。
何とかしようとインターネットで必死に調べた。
しかし突然人魚になるなんて事例はどこにもなかった。
つまり解決策が何一つ見つけられない
🩷(ど…どうしよう…)
ガチャッ
母「大介、顔合わせの時間だけど… キャァァ!! 」
🩷「!!お母様…!?」
調べた甲斐もなく、すぐに母親に見つかってしまった。
母「いや…!!あなた!!」
母は脚を震わせながら父を呼びに走った。
頭が真っ白になる。
父「大介…なんだその姿は!」
母「なんなの!?病気…?お、おそろしい…!」
部屋に駆け込んできた父も母も自分に近づこうとせず遠巻きに警戒している。
🩷「ご…ごめんなさい…!俺もほんとに…!なんでこんなことになってるか分かんなくて…!!
調べても解決策も見当たらなくて…!」
必死に弁解しようとした。
だが2人はその言葉もほとんど聞こえていなかったと思う。次に発した言葉がなによりの証明だった。
母「どうするのよこれ…!これじゃ婚約破棄になっちゃうじゃない!!」
父「先方にどう説明すればいいか…!」
両親は自分の心配を一切してくれなかった。
むしろ、会社の将来のこと、資金繰りの危機のことしか頭にない。
母「お兄ちゃんと婚約させようかしら?籍入れは帰ってからになっちゃうけど…」
父「そうだな…資金援助は前倒しでしてもらえるようにかけ合ってみよう」
母「しょうがないわね、電話してみる」
🩷「お父様…?お母様…?」
父「大介」
🩷「は、はい」
父「私たちがまたここに来るまで絶対に部屋から出るなよ。世間にバレたらどうなることか」
そう言い残して2人は部屋のドアを勢いよくバタンと閉めて出ていった。
1人取り残されたようにベッドの上で蹲る。
両親のあの失望したような表情。
🩷「せっかく…認めてもらえるチャンスだったのに…なんで…なんで…!!」
行き場のない悔しさと悲しさで涙が溢れてくる。
落ちる涙は鱗に弾かれ下へと伝っていく。
数日後、両親に言われた通りずっと閉ざしていた部屋のドアが久しぶりに開けられた。
🩷「お父様…!お母様…!」
入ってきた2人の顔は予想と反して少し微笑んでいた。怒っている様子ではなさそうで少し安心したのも束の間。
部屋に知らない複数人の人間が一緒に入ってきた。
🩷「えっと…この方々は…?」
A「すばらしい…!! 始めてみる個体です!」
B「元は人間だったというのは本当ですか!?」
母「もちろんでございます、私たちの次男ですから」
C「我々の研究に大きく貢献できるかと!」
D「これはまさに奇跡のサンプルですよ」
会話の内容に全く追いつけなかった。困惑していると1人の男が1歩歩み寄ってきて話し出した。
A「失礼、大介様。申し遅れました。
私、『 ネオ・ジェネシス生命科学研究所』職員の者です」
🩷「ネオ・ジェネシス?」
A「Neo-Genesis Life sciences。略してNGLとも呼ばれております」
🩷「NGL…。そんな方々がどうして…」
D「我々は『未来の為の科学』をモットーに研究をしています。生命の分析、解明をし新たな人類の創世を目指しております」
🩷「はあ…」
B「ご両親から、大介様を研究サンプルとして我が研究所にお譲りくださると仰っていただきました」
🩷「……え?」
父「それで、いくらくらいでしょうか?」
A「そうですね…非常に珍しい症状です。我々も初めて見るどころか、世界中探しても見つからないでしょう」
A「……1億でいかがでしょうか?」
父「……ふっ、まあいいでしょう」
研究サンプル。譲渡。1億。
そんなの……
🩷「……人身売買ではないですか…!?」
父「人聞きが悪いな。口を慎みたまえ」
母「このままでは人として働けない、表も歩けない。息子がこんなことになってるだなんて世間に知られたら会社のイメージが下がるじゃないの」
父「そんなお前をお金を払ってまでして引き取ってくれると言ってるんだぞ」
🩷「ですが!」
父「もう大丈夫です。連れていってください」
A「はい!おい、運ぶぞ」
1人が全員に声をかけると一斉に自分に掴みかかってきた。
🩷「嫌だ…!!嫌です!!お父様!!」
抵抗しようにも下半身が魚のせいで逃げ出せず、あっなく担ぎ上げられる。父に訴えかけてもその目は冷めきっていた。
父「最後くらい我々の役に立て」
🩷「お母様!」
その横で同じ冷たい目で見てくる母にも呼びかけたが表情1つ変えない。
最後に研究員の男が両親に聞いた。
A「本当にいいのですね?1億お支払いした後は二度とお返しできませんよ?血の繋がったあなた方の息子さんだというのに」
すると母が一言だけ残した。
母「知らないわよ。こんな怪物」
その言葉が突き刺さった。
今まで役に立とうと必死に努力してきた。言うことはなんでも聞いてきた。
それなのに自分を一切見てくれようとしなかった。
そして最後には『怪物』呼ばわり。
絶望のどん底だった。
言葉も出ず呆然として男たちに運ばれた。
彼らは1台のワゴン車で来ていた。
後ろのトランクを開けると小さい水の入った水槽。
その中に雑に押し込まれてドアを閉められる。
狭くて泳げたもんじゃない。
A「よし、出せ」
その合図で車は走り出す。ガタガタと車がはねる度に水槽の水面の揺れる。
車が走っている間、頭の中はずっと空っぽだった。
これから自分はどうなるのだろう。
何も考えたくない。
座席では男たちがワイワイと雑談をしていて車のスピーカーからはなにか歌番組のような音が流れていた。
懐かしい音楽が聞こえる。
懐メロ特集でもやっているのだろう。
自分が幼少期の頃にテレビでよく聞いていた大好きな歌が流れ始めた。空っぽだった頭の中に昔の記憶が蘇る。
両親が仕事でいない時、部屋でこっそり1人で歌っていたことを思い出す。
そういえばちょっとの間だけボイストレーニングも習わされたっけな。
そう思いながら、懐かしの歌を口ずさんだ。
🩷 •*¨*•.¸¸♬︎•*¨*•.¸¸♬︎•*¨*
歌声が車内に響き渡った。
B「おい、歌うなよ……うぅ゙…!」
C「カハッ…あ゙…頭が…!」
🩷「…えっ?」
次の瞬間、乗っていた研究員4人全員が一斉に苦しみ呻き出した。
錯乱状態で発狂している奴もいた。
何が起こっているのか全くわからなかった。
ただ、自分が歌った瞬間に男たちが狂い始めたのはわかった。
運転している手元が狂い、車は制御不能で蛇行する。ブレーキもかけず一瞬にしてガードレールを突き破り山道の斜面へ正面衝突した。
ガッッシャン!!
恐る恐る目を開けた時、目の前には惨劇が広がっていた。
男たちは頭から血を流し意識を失っていた。
車の窓ガラスは全て割れ、車体は酷くひしゃげていた。
息をしているかも分からない。
もちろん自分にも衝撃があった。
🩷「い゙っっ…てぇ…」
だが幸いなことに1番後ろということに加え、水槽の中にいたこともあって水が多少の緩衝材になり腕と肩の打撲くらいで済んだ。
彼らに比べたらよっぽど軽傷だ。
後ろを見ると衝撃のせいかトランクのドアに隙間があいていた。隙間に手を入れ思い切り押すとドアが開いた。
外は既に暗く、車通りの少ない山道だった。
車内をもう一度見て、男たちが全員意識がないことを確認する。
逃げるなら今しかない。
車から降り、無我夢中で這いつくばって山の中へ逃げ込む。尾鰭のせいで走れない。ズルズルと引きずり、木の枝や石に鱗を引っ掛けながらも進んだ。
しばらくするとずっと向こうの方から小さく水の流れる音が聞こえた。
川だ。もしかしたら海へ出られるかもしれない。
微かな希望を感じ更に進もうとした時…
ガシッ
🩷「うわっ!!……ひっ!」
何者かに尾鰭を掴まれた。
ビックリして振り返るとそこにはさっきまで意識を失っていた研究員の1人がいた。
A「はぁ…はぁ…見つけた…!」
🩷「離せ!!」
相手は血を流してさっきまで意識不明だったのだ。焦点が合っておらずフラフラしている。
A「1億のお前が逃げたら…!我々の研究にも…支障がでる…!人々の未来に貢献できるんだぞ!名誉あることだろう!?」
🩷「嫌だ!絶対戻らない!」
A「お前は貴重な研究サンプルなんだ。1億分の役割は果たしてもらう!」
その時、察した。
人間というのは薄汚い欲にまみれている。
子供を世間体を良くする為の道具としか見ていない。 金のためなら血の繋がった子供を売る。
貢献、未来のためと言っといて、その裏の目的は 名誉と金。
損得でしか物事を見れない。
コイツらに捕まったら、一生彼らの汚い欲求を満たすための道具にされてしまう。
自分からしたら、コイツらの方が怪物だ。
A「お前は捨てられたんだ!怪物の行くとこなんてどこにも無い!大人しく来るんだ!!」
それでも人間が自分のことを『怪物』と呼ぶのであれば…
仰せのとおり、怪物になってやる。
🩷「ゔぅ゙…!ゔぁぁぁ!!!」
連れ戻そうとした男の胸ぐらを掴みその首筋に思い切り噛み付いた。
自分の鋭利な歯が深く、深く突き刺さる。
生々しい感触と、頸動脈から溢れる生ぬるい血の味を感じる。耳元で男の短い呻き声がきこえた。
首から歯を抜くと男はバタリと倒れ、ピクリとも動かなくなった。
口元に垂れた血を腕で拭い、水の音に向かい再び進む。もう邪魔する者はいない。
人間なんて二度と見たくない。
音を頼りに進んだ先には予想通り大きな川が流れていた。なんの躊躇もなく飛び込み、下流に向かって泳いだ。
何時間か川を下ると広大な海が広がっていた。
水平線からわずかに太陽が登ろうとしていた。
視界いっぱいに広がる海は、まるで自分を出迎えてくれているように見えた。
自分は人魚だ。怪物だ。
これからはここで生きる。
そう決意し、息を整えたあと思い切り海の中に潜り込んだ。
海の世界は損得勘定もない、富と名声も金もない。
ただみんなが自然の中で、生命を全うしている。
今まで自分がいかに狭い世界で生きていたかを実感する。
自分が望んでいた自由がそこにはあった。
いまや両親のことなんてどうでもいい。
恨みや復讐を考えることもバカバカしい。
あのまま親の敷いたレールを歩くだけの人生よりよっぽど有意義に生きれている。この姿に感謝すらしている。
だから、人間なんかには戻ろうとは思わない。
そんな考えがあるから向井の言っていることに共感ができない。
向井の好きな人というのも今頃きっと別の恋人がいるに違いない。むしろ金になる人魚を手放して名残惜しいとまで思ってるのではないだろうか。
愛なんてまやかしだ。
🩷(期待するだけ苦しいでしょ……)
向井と喧嘩してから1ヶ月くらい経ったか。
いつものサンゴ礁に寛ぎにいったら、見たことないものが落ちていた。
アンカーに繋がれた瓶の中に紙と腕時計が入っていた。
気になって瓶の中を覗くと文字が書かれていた。
手紙だ。
『 康二へ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
今、世界中で人魚を狙う人達が増えてる。捕まれば命も危ないかもしれない。康二の大学の先輩たちに協力してもらって康二を保護してもらうよう協力してもらってる。この手紙を読んだら、次の満月の夜0時に俺たちが別れた浜辺に来て欲しい。
もう一度話がしたい。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ M 』
🩷「……およ…? ……こうじ…?」
宛名が『康二』
文中に『俺たち』と書いていることと、メンズ物の腕時計からみて差出人は男である
そして最後のイニシャルの『M』
その時、向井の言ったあの言葉を思い出す。
🧡『めめはそんな男ちゃう!!!バカにせんといて!!!』
🩷「M……めめ…?」
すぐに分かった。これは向井へ宛てたものだ。
誰かが向井を探している。
🩷(いや……罠かも…罠に決まってる…!)
きっと向井を呼び出してどこかへ売り飛ばして金にするつもりだ。そうに違いない。
自分が両親にそうされたように。
🩷(人間なんて汚い欲の塊なんだ。絶対に…絶対に…)
────
🩷『こーじってさ。好きな人いたの?』
🧡『…まぁ…おったな。ずーっと片思いしとったやつがな』
🩷『 じゃあさ…人間に戻りたいと思う?
その人にまた会いたい?』
🧡『……戻れるなら戻りたいし 許されるんなら会いたいよ 』
────
🩷「………あぁもうっ!しょうがねぇなぁ!!」
ピューっと指笛を鳴らす。
すると音を聞きつけた友達のイルカ2匹がすぐに来てくれた。
🩷「よ〜しよしよし…」
鼻や体を撫でてあげると体を擦り寄せてくれる。
出会った時からずっと教えこんでいた手話でイルカたちに伝えた。
🩷 こーじ を さがして、つれてきて。行って!
指示を出されたイルカたちか颯爽と二手に分かれて泳いで行った。
めめがどんな奴かは知らない。でもこんな全世界が繋がっている広大な海の中で、どこにいるか分からないたった1人の人魚をここまでして探そうとしている。
その原動力が金なのか、それとも本当に愛なのか。少し気になってしまったんだ。
コメント
4件
うぉぉぉぉぉ!さっくんナイス、だけど過去めっちゃ辛いなぁ泣 康二のために動いてくれたんや、泣
あ、もう好きです