テラーノベル
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2人が出向いたのは菓子店ではなくて図書館であった。ネットには載っていない時は過去の新聞に頼るしかなかった。
「あった、真新しいと言っても5年前か」
虹雨が見つけた新聞の小さい記事。あのアパートで起きた殺傷事件。
住人の女性2人死亡、その他男1人が重症と軽傷を負った事件。エレベーター内で、と書いてある。
「……住人であるA子さんが浮気をした彼氏を浮気相手B子さんと共にアパートに呼び出して話し合いをした帰りに2人にA子さんがナイフで襲撃、B子さんは即死、彼氏も刺されるが抵抗して最後の力を絞ってA子さんを蹴り飛ばしたら彼女は打ちどころが悪くのちに死亡」
「正当防衛、とも言えるな……浮気した男が悪い」
「こんな事件が小さい見出しか。確かに他の大きな一面の事故の方はよく連日テレビで取り上げられた居眠り運転による暴走事故による歩行者死傷事故だったからな……」
と読み上げる虹雨をじーっと見る由貴。その視線に気づく。
「なんや」
「こんな事件、管理人さんが黙ったったんか。あの部屋の事件も事件だけども」
「かなりの事故物件やないか……あのアパート。もしかしたらA子さんの住んでた部屋も何かしら残ってるかもしれん……」
まだ由貴は虹雨を見る。
「なんや、なんや……何見てる」
「こんな怨念の残りそうな事件、見逃すってお前はたまに鈍感なことあるからなぁ……」
「し、知るかよ。確かにエレベーターは不審に思った。でも感じ取れなかったのは事実や。俺はあの部屋だけ依頼された。他のことは依頼されなかったら無駄や。金にならん」
「金に執着しすぎやろ」
「こっちは生きるためにはそうしかないの」
「なんや! 実家金持ちのくせして」
「俺は俺の力で生きるって決めたんや」
「決めたくせにしょっちゅう実家に通って、その交通費も親持ち、どこが自分の力で生き……る……」
2人はハッとした。周りの視線。そう、ここは図書館。2人は声を荒げていつものように喧嘩をしていたのだ。
「とりあえず菓子屋に行って……管理人さんのとこ行くか」
「そやな」
2人はへこへこしながら図書館をあとにした。
「にしても由貴、顔がイキイキしとるわ」
久しぶりの再会の時、由貴は死のうとしていた。絶望していた。だが今は違う。
「そか……」
「それは俺に助けられたからって言うところや! ほんとお前は」
「るっさいわ! お前のその大声が図書館の人に迷惑かけたんや」
「は? 喧嘩ぶっかけたのは虹雨やん」
「だーかーらっ!!」
図書館からでたのは正解であった。
「こんなのわざわざくれなくてもよろしいのに、こっちは依頼した方ですから」
と管理人さんが目を細めて喜びながら虹雨と由貴が持ってきた菓子折りを奥の部屋に持っていく。
「お仏壇があるのですね」
虹雨は覗こうとするがすぐ管理人さんは部屋から出て襖を閉めた。
「ええ、まあ」
とまた座る。
「急ですまんの、解体の件は前からも出ててな。例の事件が起きてから退去される方々がおってな」
管理人さんは2人にお茶を注ぎながら話し始めた。やかんから何茶かわからないが並々と注がれる。他には家族はいないようだ。
「……その件ですが、例の事件の前にもう一つ事件が起きてますよね」
「……!」
「隠さなくてもいいですよ」
虹雨が由貴に目配せし、由貴がタブレットに図書館で許可を得て撮影してきた5年前の事件の記事を出した。管理人さんの目が泳ぐ。
「もう5年前から退去者が多かったはずですよね……俺も何人かしかすれ違わなかったし、夜8時頃帰った時は明かりも少ない。もうかなりどの部屋も家賃を下げないと入居者は増えない。だから家賃安くしてお金のない子連れのシングルマザーや若者、日雇い労働者など……。しかしそれでさえ家賃も滞納する人が多い、交流もなくゴミ捨て場は荒れ放題。治安の不安さから女性の住人は立ち退き、それが故に経営が回らない、はい取り壊し! 別にあの部屋、ルームロンダリングさせなくてもよかった気もするけどなぁ……一応俺雇うのにも金かかってますしね」
虹雨が流れるように話し出すと管理人さんがぶるぶる震えてお茶はほぼ飲まずに溢れている。由貴は近くにあったタオルで拭こうとするがもう濡れていて、由貴は顔を歪める。
「失礼ですか奥様や他の家族の方は」
「……いません、ごらんのとおりですよ」
よく見ると今見える部屋から見える他の部屋もあまり掃除がされていないのだ。
「いない、のではなくて殺されたんじゃないんですか……5年前に」
「ぶひっ!!!」
管理人さんは変な声が出た。
「ここはもともと奥さんの亡くなったお父様が所有していたアパート。その当時は家族連れも多かったでしょう……しかしあなたは不貞をし、家を追い出されて別居。あの時、不倫相手の女性と共に妻のところに呼び出されたんでしょう……」
虹雨がそう話してる横でいつのまにか由貴もビデオを構える。管理人さんはガクガク震える。
「エレベーターは血まみれ、不倫相手と奥様は死亡、あなたは重症……事件が起きてから一気に退去者は増え、赤字なのになぜ新しくエレベーターを変えたのか……」
管理人さんはもう空になった湯呑みをぶるぶると震えながら握る。
「記事では奥さんが殺したことになっていますが、あなたが奥さんと不倫相手を殺した……それの証拠を隠すために……あとその後ろめたさにエレベーターを取り替えた……」
「ち、ちちちちちちち違うっ!!!」
「何が違うんですか?」
ようやく管理人さんは言葉を発した。
#衝撃のラスト
山根利広
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コメント
1件
うわ、これホラーサスペンスとしてめっちゃ面白いですね……! 図書館の新聞記事から5年前の殺傷事件が浮かび上がり、しかも管理人が実はその当事者だったんじゃないかっていう展開、ゾッとしました。エレベーターを取り替えた理由が「後ろめたさ」ってのも腑に落ちる。由貴がビデオ回し始めたところで続きが気になりすぎます。次話が待ち遠しいです!