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結婚?——お断りします!

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11 - 【第11話】 家族への挨拶②(ロイ・カミーリャ談)

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2025年04月14日

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「そういえば、今日の昼前に雪乃の親友だって子に会って来たぞ」

武士の言葉でピクッと反応すると、視線を彼の方へと戻し「……芙弓ちゃんにかい?何で、また?」と率直な疑問を返した。

「親友に一度会って欲しいって前から雪乃に言われていたんだ。今までは所在が分からないでいたらしいんだが、やっと住所を教えてくれたとかでな」


(芙弓から連絡したんだろうか?いったい何と?……僕の悪口じゃなければいいけどな)


——とは思うも、昨日しでかした行為が行為なので期待はしないでおいた。

「しかし変な話だよな。『親友』なのに二十年間一度も会わず、住んでいる場所も知らなかったなんてさ」

「まぁ、色々と事情のある子だからね」と苦笑いを返す。武士はそんな僕に向かい「そっか」と言うと、目の前にあるテーブルに置かれている紅茶のカップに手を伸ばし、それを飲み始めた。

次の言葉を待ち、椅子にお行儀良く座りながらずっと彼の方を見ているのだが待てど暮らせど聞えるのは紅茶をすする小さな音だけだ。

カップから口を離し、カチャッと軽く音をたてながら武士はカップをソーサーに戻すと、一息ついてソファーに体を預けた。


「……で?続きは?」


何も話す気配が無い為、自分から訊いた。

「あ?何がだ?」

「話の続きだよ!どんな子だったとか、何を話してきたとか、僕に色々教えたい事があるんじゃないかい?」

「……んなのは無いぞ?それともなんだ、気になるのか?」

そう言って、武士が不思議そうな顔をする。


「当然じゃないか!雪乃が関わる事なら、僕は全てを知りたいんだからね!」


瞼を閉じながら両腕を少し天に向け、何かを掴むような仕草をする。まるで舞台演技の様なオーバーアクションをしながら「さぁ答えるんだ。久しぶりに親友に会えた時の雪乃はどんな様子だったんだい?」と訊いたが、本心から知りたいのは、悔しい事に芙弓の様子の方だった。……もちろんそんな事は武士にも言えない。


「分かった、分かったから!んな、宝塚っぽいの止めろよ。お前がやると何かキモイから」


口元に手やりながら武士が笑ってくれた。僕の真意は悟られずに済んでいる気がする。

「玄関が開いた瞬間、抱きついてたよ。なんか名前を呼んでたけど……えっと」

訪問先であった『親友』の名前を思い出そうとしているのか、武士の言葉が詰まった。

「『芙弓ちゃん』だよ!」

「あぁ、それそれ」と言い、 僕の方へ軽く指をさして頷くように指を動かす。

「上から下まで全身真っ黒な部屋着を着た蒼白のチビっこい子がオドオドとした様子で部屋から出て来て、正直かなり辛気臭かったなぁ。……雪乃には言えないけど」

「あははは……辛気、臭かったかぁ」

容易く想像でき、ちょっとヘコむ。


(何で芙弓はあんななのかなぁ……)


「んで、すぐさま居間に通されたと思ったら『ちょっと待っててね』って、雪乃と……えっと、芙弓ちゃん?が二階に消えて——」

「消えて?」


「一時間も戻って来なかった……」


頭を抱えて武士が大きな溜息を吐いた。

「おや、それは失礼だね!」

「人の家だし何する訳にもいかなくてずっとスマホいじってたけど、あれは結構困るな。久しぶりに会った親友とサシで話したいんなら最初からそう言えばいいのにって思いながらずっと待ってたけど、『俺に会わせたい』って用件もあった訳だから、大人しく待ってやったよ」

「あはは!まるで『待て!』をさせられた犬の様だね!」

「それ、冗談にならないから止めてくれよ。……んでまぁ、一時間してやっと二人が降りて来たんだが——」

「が?」

所どころに入る『間』が気になる。もっとスパーン!と全部一気に余す事無く話して欲しいのだが、武士には武士の話すペースがあるのだから文句は言えない。

「芙弓ちゃん?だったかが、随分アレンジされた丈の短い着物を無理矢理着せられて、一階に降りて来たよ」

「芙弓ちゃんの短い着物姿!?写真は!!」

一時間居なかったという話を聞いた時。『きっと二階で雪乃に着替えをさせられているんじゃないかな?』とは正直予測していた。だが予想外の衣装のチョイスに僕は、興奮と、その姿を見たい気持ちを抑えきれず大声で叫んでしまった。

「あるかアホ!雪乃の親友の写真なんか、撮る理由があるかぁ!」

「貴重なシーンは写真に収めるのが常識ってものじゃないか!」

「お前の常識は俺の非常識だって、何度も言ってるだろうがぁ!」

本気で怒っている感じはないが、少し武士の頬が赤かったので何か色々と勝手に想像してしまったのかもしれない。そのせいで声を荒げているんだと察した僕は「んじゃせめて報告を!いったいどんな衣装だったんだい!?」と問いただす。更に、座っていた椅子から立ち上がり、武士の座るソファーまで移動すると、僕は彼に一層詰め寄った。

「ど、どうって……。えっと、スカート?裾?は、こう膝上くらいまで短くて、黒いニーソックスを履いてたな。全体的にレースがあしらってあったが、まあ簡単に言って無柄で丈の短い紺色の着物って感じだ」

「ニーソックスにミニスカート……」


僕でもまだ見た事のない絶対領域を、先に武士が目撃した事に少しイラついた。


「そういえば、玄関で会った時とは随分雰囲気が違ったよ。着る物や髪型で相当化けるタイプなんだな、あの子は」

「だろう!?僕もそう思うんだ!」


「着替えてからは、(雪乃程じゃないが)可愛かったよ」

「そう!芙弓ちゃんは、ちゃんとしたら可愛いんだ!(雪乃程じゃないけど……)」


一瞬、聞えない筈の心の声が聞えた気がしたが、きっと幻聴だろう。

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