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外伝3 紙芝居「おむすびころりん、人格ころりん」
土曜日の午後。
児童館の小さな部屋には、今日も紙芝居の木枠が置かれていた。
一列目の真ん中にはユウナ。
右にはコウ。
左にはミナト。
三人とも、もう紙芝居を見る時の場所がなんとなく決まっていた。
ユウナは椅子に座ると、木枠の閉じた扉をじっと見た。
前回は、山で力比べをする昔話だった。
その前は、桃から生まれた少年の話。
どちらも、知っているはずなのに少し違っていた。
登場人物全員に複数の人格がいる。
それだけで、昔話は思ったより簡単には進まない。
勇気を出した直後に慎重人格へ交代する。
勝負を始めた直後に安全確認を始める。
食べ物を前にすると食いしんぼ人格が飛び出す。
ユウナは、それがすっかり楽しみになっていた。
胸元の人格タグが震える。
現在の表人格 代表人格
交代候補 物語人格 ツッコミ人格
内側で物語人格が言う。
今日は何だろう。
ツッコミ人格が続く。
どうせ誰かが途中で予定を変える。
ユウナは小さく笑った。
もう分かってるじゃん。
隣のコウがこちらを見る。
何笑ってるの?
うちの中。
コウの胸元では、質問人格が表示されていた。
今日は何の話だと思う?
まだ分からない。
桃太郎もう一回?
さすがに違うでしょ。
ミナトが腕を組む。
昔話なら、俺はだいたい分かる。
ユウナが横を見る。
毎回言うね。
知ってるから。
でも毎回途中から分からなくなるよね。
それは人格版だから。
今日も人格版だよ。
ミナトは少し黙った。
じゃあ今日も途中から分からないかも。
三人が笑ったところで、紙芝居のお姉さんが入ってきた。
ベージュのエプロン。
後ろでまとめた茶色の髪。
腕の中には紙芝居の束。
お姉さんは木枠の後ろへ座り、子どもたちを見回した。
今日は、とても小さな入口から始まるお話です。
コウの質問人格がすぐ反応する。
小さい入口?
お姉さんは笑う。
見てからのお楽しみ。
木枠の扉が開いた。
一枚目。
山。
畑。
小さな家。
その前に、おじいさんとおばあさん。
そして、おばあさんの手には大きなおむすび。
ミナトの昔話人格が飛び出した。
分かった。
ユウナがすぐ横を見る。
まだ言わないで。
おむすびころりん。
言った!
コウが笑う。
お姉さんも少し笑いながら続きを読む。
むかしむかし。
山の近くに、おじいさんとおばあさんが暮らしていました。
ある朝。
おばあさんの料理人格が、おじいさんのお昼ごはんを用意しました。
絵の中のおばあさんが、おむすびを包んでいる。
一個。
二個。
三個。
そこへ、おばあさんの世話焼き人格が出てきた。
お水は持ちましたか。
持ったよ。
手ぬぐいは?
持った。
道具は?
持った。
おむすびは?
今もらった。
本当に?
本当に。
もう一度見せてください。
子どもたちが笑った。
ユウナのツッコミ人格が少し前に出る。
確認多い!
絵の中のおじいさんも困った顔をしていた。
おばあさん。
全部持ってるよ。
そこへ、おじいさんの仕事人格が出る。
そろそろ行かないと仕事が遅れる。
おばあさんの世話焼き人格。
じゃあ気をつけて。
おじいさんの慎重人格。
もちろん。
好奇心人格。
山の奥にも行ってみようかな。
慎重人格。
行かない。
仕事人格。
仕事をする。
食いしんぼ人格。
お昼が楽しみ。
代表人格。
一人ずつお願いします。
ユウナは膝を叩いて笑った。
まだ家から出てない。
コウも笑っている。
出発だけで大変。
ようやく、おじいさんは山へ向かった。
畑の仕事をして。
木を運び。
道の脇を整えて。
お昼になる頃には、お腹がぐうっと鳴った。
おじいさんは木の下へ座った。
包みを開く。
中には、おばあさんが作ってくれたおむすび。
食いしんぼ人格がすぐ前に出る。
待ってました。
一個手に取る。
口へ運ぼうとする。
ところが。
おむすびが手からするりと落ちた。
ころ。
ころころ。
ころころころ。
坂を転がる。
おじいさんの食いしんぼ人格が叫ぶ。
待って!
おじいさんが追いかける。
おむすびは転がる。
ころころころ。
少し先には、小さな穴。
おむすびが、その中へ。
ころん。
消えた。
おじいさんは穴の前で止まった。
食いしんぼ人格。
おむすび!
慎重人格。
穴に手を入れたら危ない。
好奇心人格。
中を見たい。
仕事人格。
午後の仕事があります。
食いしんぼ人格。
おむすび!
代表人格。
最後の人格だけ声が大きいな。
部屋に笑いが広がった。
ユウナも笑った。
おじいさんは穴の前にしゃがんだ。
中をのぞく。
暗い。
奥は見えない。
耳を近づける。
すると。
地面の下から、楽しそうな歌が聞こえてきた。
おむすびころりん。
ころころりん。
おむすびころりん。
うれしいな。
コウが体を少し前へ傾ける。
聞こえた。
ユウナの物語人格が前に出た。
ねずみだ。
ミナトが得意そうにうなずく。
ここは知ってる。
おじいさんの好奇心人格が大きくなる。
何だろう。
慎重人格。
近づかない方がいい。
好奇心人格。
聞くだけ。
慎重人格。
聞くだけなら。
食いしんぼ人格。
おむすび返してほしい。
代表人格。
とりあえず話してみるか。
おじいさんは穴に向かって声を出した。
もしもし。
歌が止まった。
少しの静けさ。
そして。
穴の中から小さな声。
だれ?
おじいさんが答える。
そのおむすびを落とした者です。
また静かになる。
地面の下では、ねずみたちの人格会議が始まっていた。
紙が抜かれる。
次の絵。
地面の下。
ねずみたちが大勢集まっている。
歓迎人格。
お客さんだ!
慎重人格。
待って。知らない人。
料理人格。
おむすびおいしかった。
慎重人格。
それとこれとは別。
踊り人格。
歓迎の踊りをしよう!
慎重人格。
まだ入れていいって決まってない。
歌人格。
歌はもう歌った。
贈り物人格。
何か返さなきゃ。
慎重人格。
だから順番!
ユウナが吹き出した。
慎重人格大変。
コウがうなずく。
全員止めてる。
ねずみの親分もいた。
親分の歓迎人格。
せっかく来たなら呼びましょう。
親分の慎重人格。
でも入口は狭い。
歓迎人格。
広げればいい。
慎重人格。
勝手に広げない。
代表人格。
まず話を聞こう。
おじいさんは、穴の外で待っていた。
しばらくすると。
中から声がした。
おむすびのお礼をしたいので、中へどうぞ。
おじいさんの好奇心人格が大喜び。
行こう。
慎重人格。
狭い。
好奇心人格。
行きたい。
仕事人格。
午後の仕事。
食いしんぼ人格。
おむすびよりいいものあるかな。
慎重人格。
食べ物につられない。
代表人格。
ちょっとだけなら。
慎重人格。
ちょっとだけ。
ユウナが笑う。
慎重人格、結局行くんだ。
おじいさんは穴の中へ入った。
紙芝居の次の一枚には、大きなねずみの家が描かれていた。
外から見た穴とは思えないほど広い。
小さな机。
小さな座布団。
小さな台所。
ねずみたちが大勢いる。
灰色のねずみ。
茶色のねずみ。
どのねずみにも人格タグが付いている。
おじいさんが入った瞬間。
ねずみたちの歓迎人格が一斉に前へ出た。
ようこそ!
おむすびありがとう!
こちらへどうぞ!
踊り人格が音楽を始める。
歌人格が歌う。
料理人格が食事を運ぶ。
慎重人格だけが端で、おじいさんをじっと見ている。
ユウナのツッコミ人格が言う。
一匹だけ警戒してる。
お姉さんの演技人格が、ねずみたちの高い声を続ける。
さあ食べてください。
こちらも。
これも。
おじいさんの食いしんぼ人格が目を輝かせた。
全部いただきます。
慎重人格。
全部は食べない。
食いしんぼ人格。
少しずつ全部。
慎重人格。
それなら……。
代表人格。
許可するんだ。
子どもたちがまた笑った。
おじいさんは、ねずみたちの料理を食べた。
小さなお餅。
山菜。
豆。
甘いお菓子。
食いしんぼ人格は幸せそう。
好奇心人格は部屋の中を見たがっている。
仕事人格は時間を気にしている。
慎重人格は出口を覚えている。
一時間ほど過ぎた頃。
おじいさんの人格タグが震えた。
仕事人格が表へ出る。
そろそろ帰らなければ。
ねずみの歓迎人格が残念そうにする。
もう少しいてください。
おじいさん。
家でも待っています。
ねずみの贈り物人格が前へ出た。
では、お礼を持って帰ってください。
小さな箱が二つ運ばれてきた。
一つは軽い箱。
もう一つは少し重い箱。
贈り物人格が言う。
好きな方をどうぞ。
おじいさんの好奇心人格。
重い方は何だろう。
慎重人格。
知らない物を欲張って選ばない。
食いしんぼ人格。
食べ物なら重い方。
仕事人格。
持って帰りやすい方。
代表人格。
軽い方にしよう。
おじいさんは小さな箱を選んだ。
ねずみたちは笑った。
気をつけて。
また来てください。
おじいさんは地上へ戻った。
夕方。
家へ帰る。
おばあさんが待っていた。
世話焼き人格がすぐ近づく。
遅かったですね。
おじいさん。
ちょっと寄り道を。
おばあさん。
どこへ?
おじいさんの好奇心人格。
地面の下。
おばあさんの慎重人格。
地面の下!?
世話焼き人格。
服は汚れてない?
料理人格。
お腹は?
食いしんぼ人格。
いっぱい。
代表人格。
一人ずつ話そう。
ユウナが笑う。
どの家も一緒。
おじいさんは箱を開けた。
中には、きれいな布や、お米、豆、暮らしに役立つものがたくさん入っていた。
おばあさんの代表人格が驚く。
こんなに。
おじいさんは、ねずみたちの話をした。
おむすびが転がったこと。
歌が聞こえたこと。
穴へ入ったこと。
ねずみたちにも、たくさんの人格がいたこと。
そして。
その話を、となりのおじいさんが聞いていた。
紙が抜かれる。
家の外。
となりのおじいさんが、垣根の向こうで耳を傾けている。
欲張り人格が前へ出ていた。
ねずみから贈り物。
まね人格。
同じことをすればいい。
慎重人格。
地面の穴に入るのは危ない。
欲張り人格。
でも贈り物。
慎重人格。
危ない。
まね人格。
おむすびを転がすだけ。
代表人格。
……一回だけ。
ユウナがすぐ言う。
行くんだ。
ミナトの昔話人格が腕を組む。
ここから知ってる。
ユウナが見る。
今度は黙ってて。
翌日。
となりのおじいさんは山へ行った。
おむすびを持って。
仕事はせず。
最初から穴を探した。
慎重人格。
これ、目的が違うよ。
欲張り人格。
いいの。
まね人格。
まずおむすびを転がす。
おむすびを坂へ置く。
ころ。
ころころ。
ころころころ。
穴へ入る。
歌が聞こえる。
おむすびころりん。
ころころりん。
となりのおじいさんの欲張り人格は大喜び。
いた!
慎重人格。
まだ何も決まってない。
欲張り人格。
次は自分も穴へ。
慎重人格。
待って。
まね人格。
元のおじいさんも入った。
欲張り人格。
行こう。
慎重人格。
だから待って。
代表人格。
……ちょっとだけ。
ユウナが顔を押さえた。
慎重人格、また負けた。
となりのおじいさんも穴へ入った。
ねずみたちは驚いた。
歓迎人格。
またお客さん!
慎重人格。
昨日の人と違う。
料理人格。
おむすびはおいしい。
慎重人格。
だから食べ物で判断しない。
ねずみの親分が前へ出る。
昨日のおじいさんのお知り合いですか。
となりのおじいさんのまね人格が答える。
はい。
欲張り人格が押しのける。
贈り物ください。
部屋が静かになった。
紙芝居を見ている子どもたちまで静かになる。
コウの質問人格が首をかしげる。
早い。
ユウナのツッコミ人格。
早すぎる。
ねずみの慎重人格たちが一斉に前へ出た。
贈り物?
何の?
まだ何もしてないよ。
歓迎人格。
まず座ってください。
欲張り人格。
いや、箱だけでいい。
料理人格。
食事は?
欲張り人格。
箱。
踊り人格。
踊りは?
欲張り人格。
箱。
歌人格。
歌は?
欲張り人格。
箱。
ユウナは笑い始めた。
人格全部無視してる。
ねずみの親分の慎重人格が腕を組んだ。
昨日のおじいさんとは、少し違うようですね。
となりのおじいさんの慎重人格が急に前へ出る。
帰ろう。
欲張り人格。
帰らない。
慎重人格。
嫌な予感がする。
欲張り人格。
箱をもらってから。
まね人格。
昨日の続きを再現しないと。
慎重人格。
もう再現できてない。
子どもたちが笑った。
となりのおじいさんは、ねずみたちの部屋を見回した。
棚。
箱。
食べ物。
欲張り人格の目が忙しく動く。
そこへ、ねずみの踊り人格が音を鳴らした。
歓迎の踊りが始まった。
となりのおじいさんの欲張り人格は、それどころではない。
どこに贈り物の箱があるんだ。
慎重人格。
やめよう。
欲張り人格。
少しくらい。
まね人格。
昨日のおじいさんは最後まで待った。
欲張り人格。
じゃあ待つ。
三十秒。
欲張り人格。
長い。
ユウナが吹き出す。
待ててない。
やがて。
となりのおじいさんは、ねずみたちを驚かせれば早く話が進むと思った。
欲張り人格が何かを思いつく。
慎重人格がすぐ止める。
絶対やめた方がいい。
欲張り人格。
大丈夫。
慎重人格。
その言い方の時は大丈夫じゃない。
となりのおじいさんは、大きな声を出した。
猫が来たぞ!
ねずみたちの人格が一斉に交代した。
怖がり人格。
逃げろー!
慎重人格。
入口確認!
荷物管理人格。
大事な物を運んで!
料理人格。
鍋!
歌人格。
歌ってる場合じゃない!
踊り人格。
踊ってる場合でもない!
部屋の中が急に忙しくなる。
ユウナは笑いながらも身を乗り出す。
全員変わった!
ねずみたちは次々と奥へ走っていく。
となりのおじいさんの欲張り人格は箱を探す。
あった!
棚の上に箱。
手を伸ばす。
ところが。
慎重人格が出た。
待て。
床が揺れている。
欲張り人格。
あと少し。
慎重人格。
帰る!
欲張り人格。
箱!
慎重人格。
帰る!
代表人格。
帰る!
三つの人格がようやく同じ意見になった。
となりのおじいさんは穴の外へ飛び出した。
地面へ座り込む。
手には。
何もない。
欲張り人格。
箱……。
慎重人格。
無事だった。
代表人格。
それでいい。
まね人格。
元のおじいさんと全然同じにならなかった。
ユウナのツッコミ人格が即答する。
最初から違ったよ!
児童館に笑い声が広がった。
次の紙。
夕方。
となりのおじいさんが家へ帰る。
何も持っていない。
服には土。
顔は疲れている。
慎重人格がぽつりと言う。
だから言った。
欲張り人格。
……はい。
まね人格。
次はもっと上手に。
慎重人格。
次は行かない。
代表人格。
行かない。
欲張り人格。
……ちょっと考える。
全人格。
行かない。
コウが笑い人格になり、椅子の上で体を揺らした。
全員で止めた。
最後の紙が抜かれる。
次の日。
最初のおじいさんは、また山へ仕事へ行く。
おばあさんのおむすびを持って。
穴の前を通る。
中から小さな歌が聞こえる。
おむすびころりん。
ころころりん。
おじいさんの好奇心人格。
また行きたい。
慎重人格。
今日は仕事。
食いしんぼ人格。
おむすび一個くらい転がす?
仕事人格。
食べる。
代表人格。
今日は普通にお昼にしよう。
おじいさんは木の下へ座った。
おむすびを食べる。
穴の中から、ねずみたちの声がする。
また来てねー!
おじいさんは笑って、穴へ手を振った。
今度ね。
お姉さんの読み聞かせ人格の声が、ゆっくりになる。
おじいさんは、おむすびを失ったことで、不思議な友達と出会いました。
でも。
何かをもらうために同じことをしても、同じ結果になるとは限りません。
同じ出来事を見ても。
食いしんぼ人格。
慎重人格。
好奇心人格。
欲張り人格。
みんな考えることは違います。
だから。
転がるのは、おむすびだけではなかったのかもしれません。
気持ちも。
考えも。
人格も。
ころころ。
ころころ。
少しずつ動いていくのでした。
最後の絵。
山の上のおじいさん。
穴の中のねずみたち。
家で待つおばあさん。
遠くで、となりのおじいさん。
みんなの頭の近くに、たくさんの小さな吹き出しが描かれていた。
お姉さんが最後の紙を抜く。
おしまい。
ぱちぱちぱち。
子どもたちの拍手が広がる。
ユウナも手を叩いた。
コウはまだ笑っている。
ミナトの昔話人格は少し考え込んでいた。
ユウナが横を見る。
どうしたの?
ミナトが答える。
知ってる話だったけど、ねずみまで人格交代するとは思わなかった。
ユウナが笑う。
全員だからね。
コウの質問人格が手を上げた。
ねずみって一匹ずつ人格違うの?
紙芝居のお姉さんがうなずく。
もちろん。
じゃあ、歓迎人格がいないねずみもいる?
いるでしょうね。
歌が嫌いなねずみも?
いるかもしれません。
踊りたくないねずみも?
いるかもしれません。
ユウナのツッコミ人格が出る。
じゃあ今日の歓迎、かなり頑張って集めたんだ。
お姉さんが笑った。
そうかもしれませんね。
児童館の時計が鳴った。
ちょうど一時間。
あちこちの人格タグが震える。
ユウナ。
現在の表人格 物語人格
コウ。
代表人格。
ミナト。
昔話人格。
紙芝居のお姉さんも、読み聞かせ人格から代表人格へ戻ったらしい。
少し肩を回している。
ユウナは木枠を見た。
今日も、知っている昔話だった。
でも。
誰が何を考えているかが増えるだけで、話はずいぶん違って見える。
最初のおじいさんも。
となりのおじいさんも。
ひとつの性格だけではない。
欲しいと思う時もある。
怖いと思う時もある。
行ってみたい時もある。
帰りたい時もある。
ねずみだって同じ。
歓迎したい人格。
疑う人格。
踊りたい人格。
料理をしたい人格。
たくさんいる。
だから、昔話の中が少し騒がしい。
でも、その騒がしさがユウナは好きだった。
児童館を出る前。
コウが言った。
もし自分のおむすびが穴に落ちたらどうする?
ミナト。
拾う。
ユウナ。
慎重人格に聞く。
内側からツッコミ人格。
まず食いしんぼ人格が大騒ぎする。
物語人格。
歌が聞こえたら行きたい。
代表人格。
穴の大きさによる。
ユウナは少し笑った。
私も全然まとまらない。
コウが言う。
昔話の人と同じだね。
ユウナは木枠を振り返った。
閉じられた扉の向こう。
ねずみたちは、きっとまだ相談している。
次におじいさんが来たら何を出そう。
歌は何にしよう。
おむすびは何味がいい。
知らない人なら慎重に。
贈り物はどうしよう。
地面の下は、きっと今もにぎやかだ。
ユウナは児童館の扉へ向かった。
背後でコウが、小さく歌い始める。
おむすびころりん。
ころころりん。
ミナトも続く。
人格ころりん。
ころころりん。
ユウナのツッコミ人格が奥から言った。
それ、今日の題名じゃん。
ユウナは吹き出した。
三人の笑い声が、午後の児童館にころころ転がっていった。
コメント
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読了したよ…!「おむすびころりん」が人格交代ありの紙芝居になるだけで、こんなに賑やかで愛おしい世界になるんだね。おじいさんもねずみも、誰かの人格会議に付き合ってもらってる感じがして、つい笑顔になっちゃった。特に「慎重人格、結局行くんだ」ってユウナのツッコミ、すごくわかる。でもね、あの「同じ出来事でも人格によって見え方が違う」ってメッセージ、本当にそうだよなあって思った。私もユウナみたいに、たくさんの自分の声をちゃんと聞けてるかな。楽しくて温かいお話、ありがとう柘榴とAIさん🖤
なな
50
#闇
ruruha
1,988
393