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Angel 3


「二人ともお疲れ様でした」

アリスが二人分のコーヒーを店の踊り場の売店から買ってきた。モートはいらないと言ったが、最後には折れた。オーゼムの方はコーヒーをひどく珍しがっていた。

赤ん坊はこの二階の上にある。三階の受付に連れて行った。直接、母親にはさすがに知らせられないとモートが強く言うので、受付に頼んで係員が呼ぶことにしたのだ。モートがとても良い青年なのはわかっていたが、こんなにも優れたやさしさを持っていたことにアリスは興味を持ち始めていた。

「本当にお見事ですね。賭けは私の勝ちです」

オーゼムは右手に包まった銀貨を一枚高々と掲げた。

アリスは何のことかわからなかったが、オーゼムが本当に天界から来た天使なのではと思えてならない。不思議なことだが、アリスはモートと同じく。この人も人間ではないと信じていた。

「いやはや、天界の母と賭けをしていました。母はモート君が赤ん坊を助けると賭け。私は反対のモート君は赤ん坊を助けないか、あるいは助けられないに賭けました。ちょっと、ズルをしてしまいましたが。私は元々、赤い魂のことを知っていたのです。早くに助けるつもりでしたが……言っておきますが、命には別状はありませんよ。赤ん坊の真っ赤な顔は、ただの熱さによる怒りの表れです」

オーゼムはそういうと、モートの顔を覗くように見つめた。

モートはひどく驚いていましたが。それより、赤い魂って一体何なのでしょう? 二人には何が見えるのでしょう?

アリスはオーゼムとモートの間に、入れない空間のようなものがあることを知った。決して今の二人の間には入れないのだ。オーゼムはニッコリ笑い。「ほう」と溜息を吐いた。

「モート君はただの良識のみで赤ん坊を救いましたね。これでいいんです」

アリスは困惑して首を傾げてしまった。

「え? ただの良識? ですか……?! そんなことはありません! 素晴らしい優しさですよ! 私はこの目で見ました!」

アリスはモートの良心をどうしても信じたいと思った。

「いや……これは……言っていいのかな? モート君?」

オーゼムはひどく困った顔で、モートを見たが特にモートは気にしていなかった。

「モート君には、感情がありません。あなたには凄く酷な事ですが……勿論、恋愛感情もないのです。でも、モート君はあなたの声が何よりも一番好きなのですよ」

シンシンと降る雪が窓際から覗ける。そこを、ほんの少し覗けば、この街が何よりも美しいといえる夜だった。真っ白い月が地上に真っ白な雪を振り撒き、今夜は冷え込みが激しいなとアリスは思った。

アリスはそんなモートを不憫でならないと思ったが、絶対にモートには良識以外があると信じることにした。

夜を狩るもの 終末のディストピア

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