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二人は、離宮から盗んだ馬に乗り駆けている。


ナタリーは、カイルの体にしがみつき、馬に鞭打って飛ばしきる勢いに堪えながら、起こっていることの説明を受けていた。


「つまり、カルスティーナ公国を手に入れる為、皇太子夫婦を拉致するってこと。けど、色々あって、本人希望の亡命ということにすると。しかしだね、カルスティーナ公国ってとこは、何も諍いが起こってない訳で、亡命する理由がないのよね。そこで、そろそろ、動きだす。どっかから集めた、民衆が、暴動を起こして宮殿を襲う。まあ、そんな自国には、帰れないから、亡命しちゃう、と、いう筋書きらしい。で、オレは、替え玉」


カイルの話は、手綱裁きに集中しているせいか、要点がまとまっていない。


「なんだか、分かりにくいんだけど、結局、皇太子妃は失踪してなかった。夫婦揃って、ハネムーン中ってことなのね?」


「そっ、それが、実は、曲者なんだけども、そんなこたぁ、オレとは、関係ない」


「……でも、あなた、皇太子の替え玉だったんでしょ?いくらかは、面識なり……」


「あー、それね、それは、影武者だよ、ハニー。影武者なら、あんたが思っているように、忠誠心やら、同情やら、何らか、感情が、沸き起こるって、もんだけどね、俺、あんたと同じく、フリーだから、逐一、気持ち込めてたら、切りがないでしょ?」


カイルは、淡々と語っている。


「それじゃ、皇太子夫婦は、このまま、捕まってしまうの?」


「まあ、そうゆうことになるね。でも、彼らが、公位を継ぐって、事は、どのみち、あり得ない。今の、情勢からすれば、すぐに大国に飲み込まれてしまう。あー、そこで、助けてあげて!なんて、言わないでくれよ!」


「いや、それは、そんなことは……」


答えるナタリーは、カイルの言葉に、正直、動揺していた。悪事が、行われるのを知っていて、見捨てるような事をしている。


何か、後ろ髪が引かれるような、もやもやとした感じに襲われていた。


「あんたね!皇太子夫婦より、自分の事考えな!追っ手が来るとか、心配ないわけ?!」


「……追っ手……」


「でしょ、始末の為に、呼び出した獲物《ターゲット》が、逃げ出したしたのよ、そりゃ、なんらかが、追ってくるでしょうに!」


「ちょ、ちょっと、カイル!そこ、そこんとこ、詳しく!」


あー、と、カイルは、実に面倒臭そうな声をだすと、ナタリーにも、わかるよう、経緯を語り始めた。


「……つまり、これって、私の仕事、ではなくて、私を誘き寄せる為にでっち上げられたものなのね!」


「ついでに、俺も。お互い、賞味期限が過ぎちまったって事らしく、それなり、裏側知ってる俺達が、邪魔になったんだ。カイゼル髭の野郎に、いや、あいつの国に」


「なんなの、二人とも、カイゼル髭に雇われて、のこのこ、こんな辺鄙な所までやって来て、挙げ句、それは、始末のためって?!あーー!本当、カイル、あなたのいう通りだわ。余所の国の皇太子夫婦の行く末なんか、心配してるどころじゃないわね!!」


「やっと、わかってくれましたか」


「……でも、カイゼル髭、なんで、そんな手の込んだ事を……」


「手違いが起こった場合、俺達の遺体を、本物の皇太子夫婦として、利用するつもりだったんじゃあないの?そうしたら、国中、大慌てっていうより、本当の暴動起こるでしょ?」


「混乱させるための、予備備品って、事?!傾国のナタリーを、備品扱い?!」


「いや、備品、って、それは、ハニー、君が言ってるだけだけで」


「あー!!もう!悔しいー!!」


カイゼル髭に、まんまとしてやられ、更に、用無し扱いを受けた上に、消されそうになるとは。ナタリーは、思わず、カイルのシャツを力任せに掴んでいた。


「あわわ!ちょ、あのさ、やめてちょうだいよ!手綱が、手綱が!!」


悲鳴にも似た、カイルの叫びに、ナタリーは我に返った。


「ああ!ごめんなさい!カイル!」


「いや、わかってもらえたら、結構。後ろに人乗っけて、走り抜けるだけでも、結構、大変なのよ。それに、加え、しがみつかれては、うっかり、惚れてしまうだろ?」


何を言ってんだか、この、男……。


言葉を失なうナタリーに、カイルは続けた。


「怒り心頭なのは、ナタリー、君だけじゃない。俺だって、カイゼル髭には、ムカついてる。替え玉になれ、そして、君を落とせ、最後には、始末しろ。何が、やりたいんだって、話だろ!恐らく、計画通りに行かなかったんだろう。何かしら邪魔が入ったんだと思う」


「だから、カイル、あなたへの指令が、変わっていったのね」


「さあ、そこんとこは、カイゼル髭の上にも、お偉いさんがいることだし、何が、起こっていたのかは、知らないけれど。で……」


カイルは、一呼吸置くと、クスリと笑った。


「転んだままってのも、癪に障る

。きっちり、仕返ししてやった」


はあ?!全く、なんて、男なの!!


聞かされた事に、ナタリーは、大笑いした。


各地の新聞社に、ネタを送ったと、カイルは言ったのだ。


──カルスティーナ公国、皇太子ご夫婦、新婚旅行中に、謎の失踪?事故か、はたまた、大国の陰謀か?!──


──訪問諸国では、捜索が開始される──


と、先に広めてしまえば、カイゼル髭達は、動き難くなる。


「カイル、あなた、いつの間に?!」


「伝書鳩一斉解放。いや、意外と原始的な方法が、役立つものだねえー」


そんなもの、何処に仕込んでた!


きっと、何かしらの繋ぎを、カイルは、持っているのだろう。感心しつつ、呆れつつの、ナタリーに、


「で、互いに、追われる身。さて、どうします?ハニー?」


と、カイルは、甘い口調で囁いてくる。


「あー、もう!!この人たらしめ!」


「お褒め頂きありがとうございます。俺的には、ハニー、二人の新婚旅行《ハネムーン》を楽しむべきじゃあないかと思うんだ」


「……あのね、結構、危険を伴う、旅になると思うんだけど?」


「ああ!ハニー!君となら、例え火の中、水の中、お供いたしますよ!」


勝手に言ってろ!と、思いつつも、何かしら期待に満ちる、ナタリーだった。

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