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「っていう感じで読み解いたんだけど、どう?」
有人はそう言って、一冊のノートを差し出した。
夏休みの自由研究。
古文書の解読。
それが今回のテーマだった。
前に祖父母の家へ遊びに行った時、古びた本を見つけた。
すると祖母が、
「自由研究で調べてみたらどうだい?」
と提案したのだ。
そして今。
夏休み最終日。
有人は解読した内容を祖母へ見せていた。
祖母はページをめくりながら感心したように言う。
「よくここまで調べられたねぇ」
「正直、無理難題を押し付けたと思っていたんだけど」
すると有人は首を横に振った。
「調べてない」
「……おや?」
祖母が顔を上げる。
「それはどういうことだい?」
有人は少し困った顔をした。
「次のページも前のページと同じなんだ」
「文字が読めない」
「今の文字と全然違うし」
「意味も分からない」
そこで一度言葉を切る。
そして。
静かに続けた。
「でも」
「読めるんだ」
祖母の表情が止まった。
……」
「……読めたのかい?」
有人は頷く。
「うん」
「頭の中に勝手に意味が入ってくるんだ」
「ねぇ、おばあちゃん」
「この本、一体何なの?」
「古文書って言ってたけど、いつの時代の話なの?」
祖母は静かに息を吐いた。
少しだけ考えるような顔をする。
そして立ち上がった。
「有人」
「ついてきなさい」
「え?」
突然の言葉に首を傾げる。
だが祖母はそれ以上何も言わない。
有人は慌てて後を追った。
今日は夏休み最終日。
母親に頼んで道を教えてもらい、一人で電車に乗ってここまで来た。
祖父母の家に来るのも少し慣れてきた頃だった。
だが。
今度は何を見せられるのだろう。
少しだけ不安になる。
祖母は玄関を出る。
有人も続く。
家の横。
敷地の隅。
そこには古びた物置小屋が建っていた。
木製の扉。
長年風雨に晒された跡が残っている。
「おばあちゃん?」
有人が尋ねる。
祖母は答えない。
代わりに鍵を回した。
ガチャリ。
ゆっくりと扉が開く。
そして。
有人は目を見開いた。
「……え?」
中には大量の本が積まれていた。
何十冊。
いや。
百冊近くあるかもしれない。
埃を被った本。
革表紙の本。
ボロボロになった本。
その全てが。
有人が持っている古文書とよく似ていた。
「こ、これって……!」
祖母が苦笑する。
「続きかどうかは分からないよ」
「でも昔からここにあった」
「私が小さい頃も置いてあった気がするねぇ」
有人は本の山を見つめる。
「じゃあ……」
「これ全部……?」
「さぁねぇ」
祖母は肩をすくめる。
「見ても読めなかったから」
「誰も気にしなくなったのさ」
有人は黙った。
そして。
古文書の山を見る。
魔王。
白銀騎士団。
カイル。
ガルド。
ロビンフット。
あの物語の続き。
もしかしたら。
この中にあるのかもしれない。
胸が高鳴る。
気付けば口が動いていた。
「おばあちゃん」
「俺、やってみたい」
祖母が振り返る。
「続きが気になるんだ」
「騎士団がどうなったのか」
「魔王との決着がどうなったのか」
「全部知りたい」
しばらく沈黙。
そして祖母は優しく笑った。
「ふふふ」
「うん」
「好奇心があっていいわね」
その表情はどこか懐かしそうだった。
「誰かを思い出すわ」
「誰?」
有人が聞く。
祖母は首を横に振った。
「なんでもないわ」
すると有人は不思議そうな顔をする。
「おばあちゃん」
「なんだい?」
「なんか若返った?」
祖母の眉がぴくりと動く。
「もう」
「変なからかいはやめなさい」
「からかいじゃないよー」
有人は笑った。
祖母もつられて笑う。
その時。
家の方から祖父の声が聞こえた。
「おーい」
「帰る準備できたぞー」
祖母が振り返る。
「有人」
「おじいちゃんが車で家まで送ってくれるって」
「その本」
物置の中を指差す。
「持って行きたいなら全部持っていきなさい」
「えっ!?」
有人の目が輝く。
「いいの!?」
「構わないよ」
祖母は笑った。
「どうせ誰も読めないんだから」
有人は再び本の山を見る。
胸が高鳴る。
まるで宝の山だった。
知らない歴史。
知らない物語。
そして。
誰も知らない真実。
その全てが。
この中に眠っている気がした。
夏の終わりの風が吹く。
だが有人の冒険は。
今まさに始まろうとしていた。
コメント
1件
うわああ第29話! 有人くん、ついに古文書の続きに出会っちゃったね…! 物置小屋にぎっしり詰まった本の山、それ全部読めるってすごすぎるし、おばあちゃんの「誰かを思い出す」ってセリフがめっちゃ気になる〜! 夏休み最終日なのに新たな冒険が始まる感じ、胸熱すぎるよ😭💕 続きが待ちきれない!