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高校生の俺たちが召喚される前に奴を倒し、この世界から召喚を無くす。
ラーセットはゆっくりと財を吐き出し普通の小国に戻って行くだろうが、かえってその方が平和かもしれない。
周辺国がラーセットに向ける敵意も次第に薄まるだろうしな。
そして高校生の俺は奈々と幸せに過ごすわけだ。
だけどその場合の過去はどうなるんだ?
俺は過去のラーセットに召喚されて今ここに居るわけだが、多分時計の針が無ければミーネルたちがどんなに頑張っても俺は召喚されない。
そうなれば、この国は滅びるだろう。何とも後味が悪いな。
単純に同じ時間がループしているだけなら、こんな苦労はないのにね。
だけど実際は、輪が出来た糸がぐるぐると続いているような状態だろう。そしてその糸とはズバリ俺だ。
俺は召喚され、地球に戻り、クロノスとして再度召喚されてラーセットを救い、やがて新たな俺が召喚される。
その俺を地球に帰すのが俺の重要な役割だ。当然、時計の針を持たせてな。
こうして高校生の俺は奈々たちの死に直面し、やがてこの場所に戻ってくるわけだ。
本当に、その流れをここで切ってしまって良いものなのだろうか?
それにまだ、こちらの世界の本体を倒したら全て解決って保証はないんだよな。
奴がどうやって地球に行ったのか……その謎も解いておかないといけないわけだ。
俺が長考に入ってしまったが、ミーネルは優しく微笑みながら隣にいてくれた。
だけど彼女と幸せになる事は出来ない。
うん、俺の幸せってなんだ?
戻ったってしょうがないし、この世界での俺は不老の存在だ。
今はケーシュとロフレがいてくれるが、やがて彼女たちも老い、俺が介護をする事になるんだろうな。
まあそれも悪くない。問題はその後か……。
「この命が尽きるまで、この国を見守り続けるよ。何か困った事があったら必ず助ける。百年後でも、二百年後でも……もし死んでいなかったら、千年後だってね」
「でしたら、ラーセットの民が必ずクロノス様を幸せにいたします。生活に苦労は掛けませんし、決して孤独には致しません。どうかご要望がございましたら、いつでも遠慮なく要求してくださいね」
じゃあ君を――なんて言うほど馬鹿でも節操無しでもないぞ、俺は。
「ああ、期待している」
取り敢えずそれだけ言って、俺たちも歓迎パーティーの会場へと行った。
俺は完全に認識阻害をして透明人間になったけどな。
▽ ❖ ▽
こうして新たなメンバーは教官組と呼ばれる古参の強者に率いられて迷宮へと潜って行った。
教官組という制度は、そのまま以前と同じような感じだ。
新人の研修や、召喚者同士や現地人とのトラブルを仲裁する。
今は風見絵里奈と児玉里莉の他に、第5期から磯野輝澄と宮神明。第7期から千鳥ゆうが加わっている。
全員、他とは一歩抜きんでた存在かつ、人間的にも他者を任せられる人格者だ。
いや、やっぱり訂正。人格的には多少怪しい点もある。
それでも実力者で、尚且つ悪人ではない。それだけで今は十分だ。
ただ風見たちとは違って、秘密は共有していない。あくまで、他の召喚者を導く存在だ。
それでもやはり判断力に優れた頼れるリーダー……いや頼られているかは知らんが、優秀な指揮官と行動を共にする事で召喚者は予想よりも活躍し、死者も減った。
何より召喚者同士のトラブルが無い事が一番大きい。
第5期の様に、召喚者同士で馬鹿な殺し合いをされてはたまらんからな。
そしてその結果として、ラーセットの復興は目に見えて早くなった。
更に驚いた事に、他の国から移住してくる人間が結構増えた。
当然ながら、相当数のスパイが紛れ込んでいることは確認済みだ。だけどそれ以上に移民が多い。
まあ移民というより出稼ぎに近い連中もいるけどな。
だがあれだけ危険な外を通って来たんだ。かなりの死者が出ただろう。
そんな訳で、いくつかのチームに見分を兼ねて護衛もしてもらった。
将来的には外もかなり入念に探索して貰わないといけないからね。
ちなみに地球ではお目に掛かれない雄大な大自然だ。
危険はあるが、召喚者の命にかかわるような事はない。もちろん迷宮と比較しても遜色ない強敵はいるが、危なかったら逃げれば良いんだしな。
そんな訳で、外の旅は彼等にとっては良いリフレッシュになった様だ。
中にはずっと外任務が良いと言い出す奴まで出始めたが、それはまたいずれやって貰おう。
さて話はずれたが、命の危険まで犯してこの国に来た大きな理由は、セーフゾーンの急速な拡大にある。
いや、セーフゾーンが大きくなったわけじゃないよ。いうまでもないか。
単純に、増えたんだ。それもとてつもない速さで。
そして中には町が作れそうな程に広く、環境の良い場所もある。
そりゃ他の国も増やそうと努力しているが、迷宮探索は何処も花形職業であると同時に、最も死亡率が高い。しかも手詰まりになっている国は、拡張も出来ず犬死にの連続だ。
そんな訳で、彼らはラーセットの復興というより地下のセーフゾーンに新たなる未来を求めてやって来たわけだ。
そういや今考えてみたら、木谷と戦ったセーフゾーンの町の住人も、ラーセット人じゃなかったな。
こうして、新たな住人は危険な地下へと潜っていく。
一獲千金を求めてね。まるでゴールドラッシュだ。
コメント
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ばたっちゅさん、第297話読み終えました! 今回の話、クロノスが「自分の幸せって何だろう」って静かに考えるところがすごく胸に来ました。ミーネルが隣で微笑んでいても、不老の身で彼女と幸せにはなれないっていう距離感…ああいう切なさ、好きです。 それから「この命が尽きるまでこの国を見守る」って決意が、重みがあってかっこよかった。 一方で、外部からの移民やゴールドラッシュ的な地下探索の描写も熱くて、国としての動きがしっかり見えて、世界の広がりを感じました。 次も楽しみにしてますね!