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侑の感情を露わにした言動に、瑠衣の唇の震えが止まらない。
彼女も胸の内に秘めていた彼への想いを伝えたい気持ちがあるが、上手く言葉にできず、黙っている事しかできない。
しかし、侑も瑠衣を想ってくれていた事が驚きでもあり、嬉しくもあり、何だか恥ずかしい。
侑が瑠衣と一緒にいるのは、単に性欲を満たすためだと思っていたから。
先ほどまで重ねられていた侑の唇の感触が、小さな顔に浮かぶ花弁の上に生々しく残っている。
ずっと無言のままの瑠衣に痺れを切らしたのか、侑が徐に口を開いたが、冷徹な感じでもなく、穏やかな口調だった。
「…………瑠衣。お前の胸の内…………聞かせてくれ」
言ってもいいのだろうか? 借金返済と仕事とはいえど、数々の男と身体の関係を結び、心身ともに穢れた女が好きな男の人に想いを伝えていいのだろうか?
瑠衣は唇を薄らと開き、躊躇うように閉じる仕草を数度繰り返すと、一重の鋭い瞳を見つめながら、覚束ない様子で想いを打ち明けた。
「…………私……響野先生が…………ずっと……好き……だった。でも…………言えなかった……」
言いながら瑠衣は侑の眼差しから逸らし、瞼を伏せる。
「…………先生が元恋人と別れたのは……彼女が他の男とセックスしているのを見て…………行為の最中に別れ話をして即別れたって聞いた時…………娼婦だった私は問題外だって思ったし、私みたいな汚れ切った女なんて、先生が相手にするはずがないし、先生が相手にしたとしても……それは、私が娼婦だったから性欲を満たすためだけなんだって……自分に言い聞かせてた……」
侑は瑠衣を抱きしめたまま、ぎこちなく伝えている言葉を黙ったまま聞いている。
「だけど、先生に対する想いは止められなくて…………好きって気持ちが膨らみ続けて……先生の元恋人にも、幸せいっぱいの葉山さんと奏ちゃんにも嫉妬して…………持て余した先生への気持ちと、自分の中に芽生えた醜い感情を……どうしていいのか分からなくて…………すごく苦しくて辛かった!」
瑠衣を抱きしめる腕に更に力を込め、ベージュブラウンの頭をそっと撫で始めた侑に、瑠衣の視界が滲み始めた。
「それでも私…………響野先生が…………好き……」
「瑠衣……!」
消え入りそうな声音で想いを伝えた瑠衣に、侑は彼女の顎に手を添え、唇を塞いだ。