テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
10
あいか
63
34
リナの心が砕けたのは、ある夜のことだった。
ライブ後の楽屋で、ファンがくれた手作りのフォトブックを手にしていたとき、彩花が鋭い声で言った。
「それ、誰のもの?リナ、勝手に持ってく気?」
「違うよ、ファンの子が私に…」
リナの言葉を、美咲が冷たく遮った。
「リナって、ほんと目立つことしか考えてないよね。バンドのこと、もっと考えなよ」
その言葉は、リナの胸に深く突き刺さった。
彼女はバンドのために、雨の中のセッティングも、深夜の練習も、黙って耐えてきた。
フォトブックには、ファンの手書きのメッセージが綴られていた。
「リナの歌で、明日も頑張れるよ」。
その温もりが、彼女の唯一の支えだった。翌朝、警察がリナの元にやってきた。事務所から
「リナがファンの贈り物を盗んだ」
と被害届が出されていた。フォトブックはすぐに彼女のものだと証明されたが、高木社長は冷たく告げた。
「騒ぎになった以上、バンドのイメージが大事だ。しばらく表に出るな」
彩花と美咲は謝罪ひとつせず、SNSに
「StellarVox、最高のライブだった!」
と投稿した。リナの名前は、そこにはなかった。
ネットには
「リナ、裏切り者」
「バンドを壊した」
との中傷が溢れ、彼女の心は静かに崩れていった。
部屋でギターを抱えたまま、リナは動けなくなった。ノートに書いた歌詞は、どれも色褪せて見えた。
「私の歌なんて、誰も求めてない…」
彼女はフォトブックを胸に押し当て、涙をこぼした。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!