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街から届いた荷物と、魔女の薬を木箱へ詰め替えている間、オオワシのブリッドは館の庭を散策していた。クチバシで地面の土を掘り返してみたり、雑草を引っこ抜いてみたり。外壁の蔦を引っ張ってみたりと自由気ままに歩き回っている。

途中、ふと館の窓から中を覗き込み、小さなまだら模様の塊の存在に気付く。


「ギギィ?」


ソファーに積み上げられた書籍の頂上に居座っていた猫は、外から聞こえて来た鳥の鳴き声に驚く様子も警戒する様子もまるで無い。知らん顔をして丸くなったまま眠り続けている。

でも、まだら模様の毛玉から垂れ下がった長い尻尾が忙しなく右へ左へと動いているのを見ると、内心はイライラしているのかもしれない。


「ギギィ?」


パタパタと揺れる尻尾の動きが不思議だったのか、ブリッドは首を傾げる。

初めて見る毛玉だった。とても小さいけれど、とても強そうだった。敵意は全く無いみたいだけれど、あまり関わりたくはない。

攻撃対象ではないと判断すると、オオワシは再び庭の散策へと戻る。


「積み終わったわよ、ブリッド。割れないよう、気を付けて飛んでね」

「ギギィ」


契約主である森の魔女から呼ばれて、慌てて駆け戻る。これから街へ荷物を届けに行くのだ。たいした距離ではないし慣れたルート。すぐに終わる。お使いが済めば、また巣に帰って、ベルか街から呼ばれる時を静かに待つだけだ。


「次はすぐに来て貰うことになると思うわ。今回は沢山注文したから」

「ギギィ」


頬を羽流れに沿って撫でられ、嬉しそうに首を伸ばして返事する。そして翼を大きく広げ、ベルの合図で飛び立つ。

バサッ、バサッと豪快は翼音を立てながら、オオワシは両脚で木箱のロープをしっかりと握り締め、来た空路を戻って行く。


「届いた荷物はどこに置いておきます?」

「そうね。とりあえず端にでも置いておこうかしら」


そのとりあえずの集大成が、あの惨状なんだと葉月は察した。端に端にと積み上げられた物の山は、まだまだ片付けきれていない。

ようやく少しずつ山を崩し始めてばかりだというのに……。

ベルに言われるがまま放置していたら、あっという間に元通りだ。


「……中を確認して、適当にしまっておきますね」


届いた荷物の大半は食料と日用品で、普通なら街へ買いに出ないと手に入らない物ばかりだ。残りは納品用の小瓶類と、手紙など。

特に街までは距離がある訳ではないみたいなのだが、こうして定期的に契約獣を使って配達して貰っているらしい。向こうにいる知り合いが仲介役になって、薬の卸しと物品の購入を担ってくれているようだ。


――別に人嫌い、ってわけでもなさそうなんだけどなぁ。


森の中で出会った葉月には人懐っこく声を掛けてきた魔女。他人と関わるのが嫌でここに引き籠っているという訳でもなさそうだ。何か理由でもあるんだろうか。


「直接買いに行ったりしないんですか?」

「街に行くのは、道が無いから大変じゃないかしら。随分前にはあったはずなんだけれど……」


あったはずの道が、無くなった?!


一瞬、また何かホラーな展開でも始まるのかと思ったが、葉月にも思い当たる節がある。

館の入口前の通路でさえ、雑草が伸び切って獣道化しているのだ、森の中の小道が見えなくなってしまうのは容易いだろう。森の豊富な自然と魔女のズボラさが相まって、たまにしか使われない道は知らない内に消えてしまったということか。


それでも不便を全く感じていないベルの大らかというか、大雑把さに葉月は呆気に取られるしかなかった。


――ある意味、最強なのかも……。


いつか街にも行ってみたい。くーちゃんに焼き払って道を作って貰おうかな、なんて少し物騒な案が頭をよぎった。


「あら、困ったわ」


荷物と一緒に届けられた手紙の一通を開いて、ベルが眉間に皺を寄せている。薬の納品先である薬店の店主からのようだ。


「次からは回復薬無しでは納品を受け付けない、ですって」

「……相当、怒ってるってことですね、それは」

「そうなのかしら。今日送った分だけじゃ駄目かしらね。面倒だわ」


ついに取引先の堪忍袋の緒が切れた、ということか。自業自得だ。


「しばらくは回復薬ばかり作らないと駄目ね、面倒だわ」


心底ウンザリと言った口調で、面倒だわを繰り返している。

確かに今日もかなり長い時間を作業部屋で籠っていたが、あまり量は出来ていなかった。回復薬の調合にはかなり手間がかかるみたいだ。


実際にも、回復薬作りは他の薬よりも使う素材の種類が多く、必要とされる精製の精度も高く、完成するのに時間と作業工程がかかってしまう。それが分かっているから、つい後回しにしてしまっていた……その結果の、大クレームだ。


それでも今まで大目に見て貰えていたのは、彼女の作る薬の品質の良さと、森の魔女の薬というブランドイメージが顧客に受けていたからだ。


「やるしかないですね」

「そうねぇ……」


諦めたように、魔女は溜め息を漏らした。

猫とゴミ屋敷の魔女 ~愛猫が実は異世界の聖獣だった~

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