テラーノベル
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颯介と会う土曜日まで、凛の周りでは特に変わったことは起きなかった。
そして迎えた当日。出かける前、凛は服選びに頭を悩ませていた。
ベッドの上には、手持ちの『女らしい服』がすべて並んでいる。
(雑誌のアドバイス通り少しセクシーにするか、いつも通りにするか……)
迷っているうちに、凛はふと奈美のことを思い出した。
敵とはいえ、奈美の普段の装いには女性としての魅力があふれている。男性を惹きつけるあの雰囲気は、悔しいけれど学ぶべきところが多い。
(彼を堕とすには、少し大胆にいくしかないわ。それに、男はギャップに弱い生き物らしいし……。見てなさいよ~、不動産王!)
闘志に火がついた凛は、以前婚活パーティーで着た、身体のラインが出る少しセクシーなワンピースを手に取った。胸元が大胆に開き、腰から裾までのラインが女性らしさを強調するデザインだ。
久しぶりに袖を通すと、思った以上に丈が短く感じられる。
この服を選ぶこと自体、凛にとっては大きな挑戦だった。
(やりすぎかな……? でも、周りに魅力的な女性が多い彼には、これくらい普通かもしれないし……)
迷いはあったが、凛は『これにしよう』と気持ちを固め、そのワンピースに決めた。
仕事のときは後ろでひとつにまとめている髪も、今日は肩まで下ろす。ゆるく波打つ艶のある髪が、自然と彼女の魅力を引き立てていた。
メイクもいつもより少し華やかに仕上げ、普段は隠している女らしさを前面に出す。
鏡越しにいつもとはまったく違う自分を見つめ、凛はにっこり微笑んだ。
「よしっ! 見てなさいよ~、不動産王! 私の本気を見せてあげるから!」
そうつぶやき、凛はマンションを出て待ち合わせ場所へ向かった。
秋晴れの午後、青空と柔らかな日差しが心地よく降り注いでいた。
歩きながら凛は、このさわやかな気候に今日の服装が少し場違いだったかもしれないと思い始めた。
(ああ……失敗したかも……)
すれ違う子供連れの家族が、自分を見て笑っているような気がしてならない。
(やっぱり着替えてこようかな……)
もやもやした気分で歩いていると、待ち合わせ場所に着いてしまった。
しかも、コンビニの前にはすでに颯介の車が停まっている。
(わっ、もう来てる! これじゃ戻れない……)
動揺しつつも、凛は覚悟を決めて車へ向かった。
凛に気づいた颯介はすぐに車から降りてきた。
歩いてくる凛を、ゆっくりとなぞるように見つめ、口元をわずかに緩める。
(あの表情は、どっちの意味?)
好きな相手の反応が読めず、凛は胸がざわついた。
そのとき、颯介が声をかける。
「晴れてよかったね」
「こ、こんにちは。お迎えありがとうございます」
「今日はいつもと雰囲気が違うね。かなり攻めてきたな」
それが褒め言葉なのか判断できず、凛は曖昧な笑みを浮かべた。
「『デート』ですから」
動揺しながら答える凛を見て、颯介はくすっと笑い、助手席のドアを開けた。
「さあ、乗って」
「ありがとうございます」
凛が助手席に座ると、颯介は運転席に戻り車を発進させた。
その瞬間、凛はふと大事なことを思い出す。
「そういえば、彼女は?」
「後ろのタクシーに乗ってるよ」
「えっ?」
振り返ると、たしかにタクシーが後ろをついてきていた。しかし、後部座席の乗客までは見えない。
「本当ですか? 全然気づきませんでした」
「さっき、ちらっと見たときにわかったよ。間違いない、彼女だ」
「…………」
凛は言葉を失った。
興味半分で仕掛けた罠に、まさか奈美があっさり乗ってくるとは思っていなかったのだ。
「それはそうと、カメラは持ってきた?」
「はい」
「録画、見た?」
「まだです。一人じゃ怖くて……」
「そっか。じゃあ後でお茶でもしながら見ようか」
颯介が一緒に見てくれると言ってくれたことで、凛は少し安心した。
「で、今日はどこへ行くんですか?」
「デートの前に申し訳ないけれど、リフォームの進捗状況を見に行ってもいいかな?」
「ひゃっ! げ、現場にですか?」
まさか今日、現場に行くとは思っていなかった凛は、自分の装いに一気に不安を覚えた。
現場には顔見知りの職人が多く、何か言われるのではないかと心配になる。
(コートを持ってきてよかった……なんとかごまかせるかも)
しかしすぐに別の不安がよぎる。
コートで服は隠せても、濃いめのメイクや丈が短めのスカート、ヒールまではどうにもならない。
焦る凛を見て、颯介は思わず笑ってしまった。
「ははは、そんなに焦らなくてもいいさ。十分綺麗だから心配ないよ」
(いや、そういうことじゃなくて……)
凛はため息をつきながら、諦めたように言った。
「それならいいんですけど、でも……」
そして車は、そのままリフォーム中のタワーマンションへ向かった。
一方その頃、二人の車を追うタクシーの中で、奈美は落ち着かない様子だった。
(二階堂さんがあんな女性らしい格好なんて……どういうつもり? それに、『デート』って何よ!)
凛が颯介からの電話を受けた日、皆が帰ったあと、奈美は凛の机からレコーダー付きのペンを回収していた。
家で録音を聞いた奈美は、すぐに二人を尾行することを決めた。
前回のように偶然を装って同じ場所に現れる手は、もう使えない。不自然に思われるだけだ。
だから奈美は、今日一日二人の行動を追い、自然に割り込めるタイミングを探すつもりでいた。
(もし今日うまくいかなくても、西岡さんから彼の住所は聞いてあるし、打つ手はいくらでもあるわ)
タクシーの揺れに身を任せながら、奈美は前を走る車をじっと見つめ、静かに笑みを浮かべた。
コメント
24件
凛ちゃんの攻めたワンピース、堕とすには時には大胆にいかないとね!きっと、いつもと違う雰囲気の凛ちゃんにドキドキしてるはずꉂ🤭︎💕 奈美バレバレの尾行だよ(笑) どのタイミングで絡んでくるかなぁー楽しみ😁
攻めた凛ちゃんに颯介さんはドキドキしてるんじゃない?( *´艸`)フフフ♡ 奈美を素早く見付ける颯介さんgoodJob🫰 イチャイチャぶりを惜しみなく披露しちゃえ(˶‾᷄ ⁻̫ ‾᷅˵) 奈美は2人のデートを尾行して虚しくないのかしら😅
ちょこざいな尾行なんて巻いちゃえ、巻いちゃえ🚙💨💨 もし奈美が割り込んできても颯介さんが『デート中だから邪魔しないでくれる?』って言って蹴散らしちゃえ🤭🤣 それにLOVE🏨❤️に入る手もあるよね💕💝