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「教えて下さいよ。気になってしょうがないですよ」
「教える訳ねえだろ。自分でどうにかしろ!」
松下は僕の肩に“ポンッ”と手をのせると自分の席に戻って行った。
再び亜季ちゃんの席に目を向けると千葉はいなくなっていた。
すると突然音楽が流れ出し、お色直しを終えた新郎新婦が入場して来た。
遥香のドレスは純白の物から青っぽい涼しげな物へと変わっていた。
このドレスも葵からの贈り物だった。
それから新郎新婦によるキャンドルサービス、来賓の祝辞、余興へと進んでいった。
そして新郎新婦から両親への花束贈呈という事で、ステージの前に立たされた。
すると涙で顔がグチャグチャになった遥香が花束を持って僕らの前に現れた。
「パパ…お母さん…ありがとう」
花束を受け取ると、美咲さんと遥香が泣きながら抱き合っていた。
僕はというと、遥香を目の前にした時から涙を精一杯堪えていた。
こんな何百人という大勢の招待客の前で泣いている姿を見られるのは恥ずかしかった。
でも、2人が抱き合い涙する姿を目の前で見せられた瞬間、必死に押さえ込んでいた涙のダムは決壊して次から次へと溢れ出てきた。
「パパ…お母さん…私からの感謝の言葉は、もう散々言ってきたからいいよね?」
「別にいいけど…」
遥香は僕らに向かって手を合わせ謝っていた。
「司会の大川さん…ちょっと予定と違っちゃいますけど許して下さい」
「はっ‥はい…」
大川さんは遥香の突然の申し入れに、驚きを隠せない表情で茫然としていた。
「招待客の皆さま、少しだけ予定を変更させて頂きます。もうしばらくお待ち下さい」
キ――――――ン………
すると式場全体にハウリングが響き渡った。
「間もなくあのスクリーンに特別ゲストが現れます」
すると、会場が一斉に静まり返った。
「きっ‥来ました」
ピッ…‥
遥香の声と同時に、スクリーンに葵が現れた。
「しょ‥招待客の皆様…今日はお忙しい中、娘の遥香と新郎の平井さんの披露宴にご出席頂きまして、誠にありがとうございます。
私は…遥香の産みの親の紺野葵と申します。
母親と言っても、遥香の1才の誕生日の日までしか一緒にいれませんでしたけど…。
だから母親なんて立派な者ではありません。
遥香を1才の誕生日から今日まで1番近くで育て、守ってきたのは、そこにいる遠藤美咲さんです。
遥香の母親は美咲さんです。