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次の日の朝チミーは、ドリームとナイトメアの家へと走って戻った。
風に髪をなびかせながら、必死に走った。
胸が痛む。呼吸が乱れる。それでも──止まれなかった。
ナイトメアは家にいた。幸いドリームは今、いない。
「……どうしたの?そんなに息を切らして」
「ナイトメア、聞いて……! 昨日……ドリームが……!」
「ドリームが? なにかあったの?」
私は昨日みたありのままをナイトメアに伝えた。
ナイトメアの顔から、すっと血の気が引いた。
「……それは、見間違いだよ。ドリームがそんなこと、するはずない」
「でも、私は見たの!目の前で……笑って、町の人を──」
「やめて!!」
彼の声が、鋭く空気を裂いた。
「……君が心配してくれてるのはわかる。でも、それはきっとドリームじゃない。そんなわけがないんだ……!」
チミーは言葉を失う。
けれど、すぐにまっすぐナイトメアを見据えた。
「……私はわざとナイトメアを傷つけるための嘘をつかないよ」
「……嘘だよ、結局はキミもみんなと同じなんでしょ?」
「ナイトメア……」
「もしそれが本当なら……僕は、もう誰も信じられなくなる……!」
彼の手が震えていた。目は、何かを拒絶するように揺れていた。
「……信じたくないのは、わかる。でも」
チミーは静かに言う。
「私はあなたをいじめてたあの人とは……」
「……もうやめてよ。僕が誰かに救われることなんて絶対にないんだ」
「そう思うなら…あなたにとって私はそういう存在なんだね。」
そう言って、チミーはそっと背を向けた。
「私は今夜また、路地裏に行くから。」
ナイトメアは、それ以上何も言えなかった。
その夜。
雲ひとつない夜空に、また三日月が昇っている。
チミーはコートを羽織り、再び路地裏へ向かった。
迷いはない。ただ、心に一つだけ願いがあった。
(お願い、ドリーム。どうか、違う人であってほしい)
──その祈りが届かないことを、彼女はまだ知らなかった。