テラーノベル
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それから皆が恐る恐る目を開ける。
次に視界へ飛び込んできたのは、先ほどまでいた事務所ではなかった。
どこまでも広がる緑と風に揺れる色とりどりの花々。
そこには、まるで別世界のような美しい花畑が広がっていた。
信愛は呆然と周囲を見回す。
「え?どこ?ここ・・・」
「さっきまで私たち、事務所に居たわよね?」
美沙も困惑した様子で辺りを見渡す。
「そのはずですけど・・・」
朝陽にも何が起きたのか分からない。
「何が起きたの!?」
さくらの声が花畑に響いた。
誰もが突然の事態を理解できず、立ち尽くしている。
その時だった。
「ごめん・・・信愛」
聞き覚えのある幼い声がした。
信愛の身体が固まる。
声のした方へ、ゆっくりと振り返った。
そこには──
「ひっぐ・・ぐすっ・・・」
涙を流す佳苗の姿があった。
「か、佳苗!?」
信愛は目を見開く。
「これ、何が起きたの?」
そして、改めて周囲を見回す。
「私たち・・どこに居るの?」
「ごめん・・・信愛
わああああん!ごめん信愛ぁぁ~!」
突然、佳苗は声を上げて泣き始めた。
「ちょっと佳苗!?」
詳しい事情も説明せず、ただひたすら泣きじゃくる佳苗に、信愛は困惑する。
「わああああん」
「と、とりあえず落ち着いて!ね?」
信愛はできるだけ優しい声で呼びかける。
「ゆっくり深呼吸しよ?ね?」
「う、うん・・・」
佳苗は信愛に言われるまま、ゆっくりと息を吸い込んだ。
「すぅ~・・・」
そして、ゆっくりと吐き出す。
「はぁ~・・・」
「どう?落ち着いた?」
「う、うん・・・ぐすっ」
少しだけ泣き止んだ佳苗を見て、信愛は改めて尋ねる。
「ならさ?教えてくれる?ここはどこなの?
私に・・・一体何が起きちゃったの?」
佳苗はしばらく黙っていた。
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
やがて覚悟を決めたように、小さく口を開く。
「私ね、みんながね、危ないって
思ったからね、それでね、そのね──」
佳苗は申し訳なさそうに俯く。
「連れて来ちゃったの」
「連れて来ちゃった?」
信愛が首を傾げる。
朝陽も思わず身を乗り出した。
「僕らをどこに連れて来ちゃったの?」
「私たちの世界に・・・」
その言葉を聞いた瞬間、信愛の表情が強張った。
何かに気づいたように、目の前の花畑を見渡す。
「私たちの世界って、もしかして・・・」
「ごめんなさぁ〜い!わああああん!」
再び泣き出す佳苗。
「なに?私たちの世界って」
さくらが不安そうに尋ねる。
信愛は花畑を見つめたまま、ゆっくりと答えた。
「ここは多分──」
一瞬、言葉を詰まらせる。
「死後の世界だと思う」
「し、死後の世界!?」
美沙の声が裏返った。
◇ ◇ ◇
その頃。
事務所では、先ほどまで武の目の前にいた信愛たちが忽然と姿を消していた。
「アイツらどこに行った!?」
武はゴルフクラブを振り回しながら、怒鳴り散らす。
「どうして消えた!?」
誰もいない空間を睨みつける。
「まさか飛び降りか?」
武は窓際に走って確認する。
「いいや、違う!窓が開いた形跡はない!」
武は事務所内をくまなく見回す。
「アイツら・・どこにいったんだ!!」
事務所内には武の怒号だけが虚しく響いていた。
コメント
1件
×××さん、第192話読み終えました…! 突然の花畑への転移、そして「死後の世界」――信愛のあの台詞にドキッとしました。佳苗ちゃんの「ごめん」と涙がすごく胸に刺さって、何か大きな秘密がありそうで続きが気になって仕方ないです…! 事務所に残された武の怒号も不気味で、重くて美しい世界観に引き込まれました。素敵な作品をありがとうございます🌙🥀