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恵菜と食事に行って以来、純は、変わらず昼休みにファクトリーズカフェで過ごしている。
彼女と挨拶を交わす事が以前よりも増えたが、メッセージアプリで連絡できずにいた。
これまで純が絡んできた女たちには、気軽に送れた何気ないやり取りも、相手が恵菜だと、何を送っていいのか、さっぱり分からない。
彼女にメッセージを送ろう、と意気込むと、緊張してしまうのだ。
せっかく交換した恵菜の連絡先が、宝の持ち腐れ状態になっている。
純は、注文したロコモコのランチセットを食べながら、窓の外に映る無機質な景色を見やった。
(ってか、俺って…………ヘタレじゃん……)
いい打開策はないものか、と逡巡してみるが、何も思いつかない。
恵菜は、昼時というのもあり、店内を慌ただしく行き来している。
彼女への気持ちは、日ごとに募るばかり。
彼女の親友、本橋奈美に、それとなく聞いてみようか、とも思うが、あの部下は面白がりそうな気がする。
「そうだ……」
純は作業着の胸ポケットからスマートフォンを取り出し、メッセージアプリを立ち上げた。
本橋夫妻がまだ恋愛関係だった頃、あの二人が別れた時、仲を取り持ったのは純だ。
(ならば、俺の話も聞いてもらっても、バチは当たんねぇよな。いつまでも、あの夫婦の世話焼きオヤジでいらんねぇし……)
友だち一覧から、親友の本橋豪の名前をタップし、メッセージを打ち込む。
『豪。久しぶりだな。今週の金曜日、久々に飲まね?』
送信した後、まだ手を付けたままのロコモコランチを食べ続けると、数分後、豪から返信が来た。
『純、悪いな。今週の金曜日は、新年会が入っちゃってるんだよ。何かあったのか?』
「いや……あるんだな、これが……」
独りごちながら、食事を素早く済ませ、会計をしてカフェを出る。
カフェの外で立ち止まり、純が豪にメッセージを打っている途中で、画面が突然光り始めた。
──着信:本橋豪
「コイツは、いつも唐突に電話をよこすんだよなぁ……」
純は苦笑しつつ、通話のアイコンをタップした。