コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第26話:恐ろしいニセ武器を作れ
武器製造研究室
旧日本の地下都市に隠された研究棟。
コンクリートの壁一面に光るパネル、赤く点滅する「極秘」のサイン。
そこに集められたのは白衣姿の若い研究員たち。
黒縁メガネの青年、髪を後ろでまとめた女性、無表情の技術者。
全員がヘッドセットを装着し、無数のホログラム画面に向かって指を走らせていた。
画面には「フェイク兵器開発プログラム」の文字が浮かぶ。
「AIで作った銃よりも、もっと“存在を疑わせない”武器を作れ」
監督役の将校が冷たく命じる。
ミサイルの電波ジャック
すでに大和国は「ミサイル電波ジャック技術」を実用化していた。
敵国が発射したミサイルは軌道を奪われ、逆に自国へ戻る。
だがそれだけでは足りないとされた。
「目に見えない“ニセ兵器”を作れ。存在を疑わせず、想像だけで敵を縛るんだ」
ニセ武器の開発
ホログラム画面には無数の設計図が並ぶ。
銃の形をしているが、弾丸が存在しない銃
ミサイルに似た映像だけを送り出す投影装置
存在しない大砲を街に見せるためのフェイクAR兵器
研究員の一人が驚きの声を漏らした。
「これ……実際には発射できません。ただ“あるように見える”だけです」
将校は薄く笑った。
「それでいい。人は映像と噂に怯える。恐怖は実弾よりも強い」
Zの影
暗い部屋で、緑のフーディを羽織った**Z(ゼイド)**がモニターを見つめていた。
「ニセ兵器か……いい響きだ」
画面には加工された映像が流れる。
ヨーロッパの軍港に並ぶ「大和国製兵器」。
オーストラリアの演習場で発射される「フェイクミサイル」。
存在しないはずの武器が、リアルタイム映像のように流れ続けていた。
「真実はいらない。“恐怖を持たせた”瞬間に、武器は完成するんだ」
無垢とふんわり同意
夜の配信。
まひろはグレーのパーカーにデニムのハーフパンツ。膝を抱えながら、無垢な声で言った。
「ねぇミウおねえちゃん……“ほんとに撃てない武器”って意味あるのかな?」
ミウはモカ色のブラウスにネイビーのフレアスカート。髪をサイドでまとめ、パールのイヤリングを揺らしながらふんわり笑った。
「え〜♡ でもね、撃てなくても“怖い”って思わせられたら、それが一番強い武器になるんだよ」
コメント欄は「なるほど」「心を支配する兵器」「実弾より恐ろしい」で埋め尽くされた。
結末
研究室の奥で、黒いケースが運び出される。
その中には「存在しない銃」の設計図データと、「幻影ミサイル」の投影装置。
監督役の将校は冷たく言った。
「撃てない兵器ほど、想像を掻き立てる。恐怖が国を従わせるのだ」
暗いモニターの前で、Zは薄く笑った。
「大和国はもう弾丸を撃つ必要はない。噂と影だけで、世界を沈められる」
無垢な問いとふんわり同意、その裏で“恐ろしいニセ武器”は完成し、実在しない兵器が現実よりも強く各国を縛っていった。