そして次の日、再び庭園改良プロジェクトのメンバーが集まった。
ここまで来るとあとは微調整のみを残すのみだったので、ミーティングは予定よりも早く終わった。
そこで有田課長が言った。
「だいぶ完成に近づいて来た事ですし、今日は六人で飲みにでも行きませんか? 前祝いと言う事で!」
「お、いいねー」
優斗は乗り気だ。
「わーい、私も飲みたいでーす」
「生ビールいっちゃいますー?」
美咲と水森も続く。
そこで六人は隣のビルにある居酒屋へ寄る事にした。
半個室のテーブル席へ通された六人は、有田課長、優斗、壮馬、そして反対側には水森、美咲、花純の順に座る。
花純の向かいは壮馬だ。
「うわー、まさか副社長と専務と庶民的な居酒屋で飲めるなんて思ってもいませんでした」
美咲が感無量といった様子で言う。
すると水森も、
「僕もですよ。こんな経験もう二度と出来ないかもしれませんねー」
と、嬉しそうに笑う。
「おいおい俺達を怪物みたいに言うなよ。俺達だって普通の居酒屋に行ったりはするぞー。ところで、今日は副社長の奢りだと思うから、みんな遠慮なくあれこれ頼め!」
優斗はニヤリと笑った。
しかし壮馬は特に気にする風もなく穏やかな笑みを浮かべている。
美咲は早速メニューを開くと、花純とあれこれ相談しながら注文の品を決めていく。
おつまみになるような物と食事代わりになるような物をバランス良く選び、スタッフに注文した。
生ビールが届いた所で六人は乾杯をした。
「プハーッ」
優斗が盛大にビールの泡を唇につけたので、向かに座っていた三人が声を出して笑う。
そして美咲はすかさずスマホを出すと、優斗をぱちりと一枚写真に収めた。
「おいおい、SNSで拡散するなよー」
「しませんよ。そのくらいの常識は持ち合わせていますからー」
美咲は笑いながら答えると、撮った写真を花純と見て再び笑った。
そこで壮馬が美咲に言う。
「その写真、後で送ってくれ」
すると優斗以外の全員が声を出して笑った。
久しぶりの飲み会に、花純もテンションが上がっていた。
今日は暑かったのでビールが美味しい。
ついつい花純はいつもよりも早いペースでビールを飲み干した。
そこで美咲が、
「次ワイン行っちゃう?」
「うん、いいね」
そこで美咲が大きなデキャンタ入りの白ワインを注文した。
ワインが届くと、優斗が、
「居酒屋のワインはどんな味なんだ?」
と言って味見をする。
「どうですか?」
美咲がワイン通の優斗に聞くと、
「うーん、まあまあ辛口だけれど…お子ちゃま向けだな」
と言ったので、美咲は
「ひっどーーーい」
と言って叫んだ。
そこでまた笑いが起きる。
リラックスした楽しい雰囲気の中で時間が過ぎて行った。
美味しい料理が次々と運ばれてくると、メンバーは食事をしながら有田課長の話に耳を傾ける。
有田は大規模商業施設や有名テーマパークの庭園を造った時の苦労話を若手三人に教えてくれた。
若手三人はその話に真剣に聞き入る。
すると今度は優斗がこれから着手する湾岸エリア一体の開発の話しを始めた。
その時、水森が言った。
「あーそれってもしかしてタワマンと一体型の商業施設ですか?」
「水森君、これはまだ社内秘なのによく知ってるねー」
「呟きサイトで一時期話題に上がっていましたよ。もしかしたら高城不動産があの一帯を開発するんじゃないかって」
「マジか? まだ外部には情報流していないのに何で漏れてるんだ?」
「土地が更地になった時点からもう噂され始めるんですよ。SNSを舐めたらいけません」
「そうなんだ。いやぁ、若い子も侮れないなぁ…」
優斗はそう言ってお手上げだという格好をする。
その時、花純の目が段々しょぼしょぼとしてくる。花純は酔うとすぐ眠くなるのだ。
今日はかなり早いペースで結構飲んでいたので、既に睡魔が襲ってくる。
それに気づいた壮馬が花純に言った。
「藤野さん?」
「あっ、はいっ」
一瞬寝落ちしそうだった花純は、壮馬の声にビクッとして飛び跳ねる。
「あはは、藤野さんはもうおねむの時間だな」
優斗が笑いながら言うと、
「みたいだね。ダブルワークだから疲れているんでしょう。そろそろお開きにしますか?」
有田課長が気を使ってそう言った。
「えっ、でもまだ料理がこんなに……」
水森が残念そうに呟く。
そこで壮馬が立ち上がると言った。
「藤野さんを送って行きますので、みんなはこのまま楽しんで下さい」
壮馬はそう言うと、花純の肩をたたいて花純に荷物を持つように言った。
そこで美咲が聞く。
「副社長と花純ちゃんは付き合っているのですか?」
美咲は酔った勢いでズバリそう聞く。その声に皆が凍り付き壮馬に注目が集まる。
「うん、まあ正式にはこれから付き合うっていう感じかな?」
壮馬が否定せずに素直に答えたので、その場にいた全員が言葉を失う。
しかしすぐに、
「ええーーーーっ!」
「マジですかっ?」
「ふ、副社長、いつの間にそんな事に?」
皆が次々に口にした。そこで優斗が言った。
「この事はまだ誰にも言わないでねー、変な邪魔が入ると副社長は一生独身になっちゃいますからねー」
その意味を察した三人は慌てて大きく頷く。
「優斗、今日の会計は俺につけておいてくれ。じゃあお先に失礼! 花純、行くぞ」
「う…んっ」
もう既に半分寝落ちしている花純はこの場の雰囲気にはまったく気づかずに、立ち上がると壮馬に腕を引かれて歩き始めた。
「「「かっかすみーーーー?」」」
優斗以外の三人が二人を見ながら大声で叫んだ。
コメント
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居酒屋🏮さんでの前打ち上げ🍺楽しそう🎵 「藤野さんは送って行く」実は「一緒の場所に帰る」優斗さんだけは知ってる🤭
居酒屋での飲み会🏮皆、和気あいあい 楽しそうですね~✨🍻🎶 酔って眠そうな花純ちゃんを送って、仲良く一緒に帰る壮馬さん.... 👩❤️👨 堂々の交際開始(予定)宣言‼️&かすみ呼び♥️さすがです👍️💕 また 更に周囲が固まった....⁉️♥️♥️♥️🤭
前打ち上げで居酒屋🏮飲み🍺楽しそう〜🥰👍 優斗さんの「副社長の奢り〜💰」にも動じない壮ちゃんは目の前のほろ酔い花純ンが気になって仕方がないね🤭 さっさと保護して帰ろうとするし〜もういつもの調子で「花純」呼びの壮ちゃん🤭❤️ これは優斗さん以外は驚くよね😱🤯⁉️これからお付き合いといってもあとは花純ンの気持ちを固める事に尽きるね🤭✨🌷