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舞踏会当日。
いつもとは違う装飾が施された大広間には美しいドレスや皺ひとつないタキシードに身を包んだ生徒が集まっていた。
💜「なんで俺も参加しなきゃいけないの」
💚「まあまあ。美味しいもの食べるだけでもいいって話だよ?俺らもそうだし」
💜「え、みんなボッチ?」
💙「うるせぇよ。誰のせいだと思ってんだ」
💜「どゆこと?」
🤍「ふっかさん岩本くんと踊らないの?パートナーてっきりふっかさんだと…」
💜「やるわけねぇだろ。俺らの仲は極秘なんだからな」
🤍「ふーーーーーーーーーん」
💜「なっ、なんだよ!」
🤍「いや何も???」
19:00。
舞踏会の開催の鐘が鳴った。
鐘の音と同時に大広間の扉が開き、ファーストダンスを踊る代表選手がパートナーと共に入場してきた。
すると会場内の空気が少し変わった。
何となく気まずくて視線を落としていた深澤の方をラウールが思い切り叩く。
🤍「ふっかさん…!ふっかさん!ねぇあれ…」
ラウールの驚くような声に深澤はラウールの目線を追う。
その先にあった光景に深澤は言葉を失った。
ダンスフロアに立つ岩本。その隣には、見たこともない美女が腕を組んで立っていた
🤍「あの女の人…誰?めっちゃ綺麗な人…」
💙「ボーバトン生じゃね」
💚「え?あんな子いたっけ」
その美女に大勢が釘付けになっているのは空気で分かった。
170cm程度と女性の中では長身だが、岩本と並ぶとバランスよく見える。
艶やかなブロンドヘアにブルーの細身のドレス。首元にはタンザナイトがあしらわれた華やかなチョーカー。
女性は岩本に一礼し向き合う。
手を握り岩本が左手を女性の腰に回す。
静寂な空間の中、巨大な蓄音機からクラシックの音楽が流れ出した。
優雅な三拍子に合わせて3組がワルツを始める。
岩本は女性をリードし、女性はそれに合わせ足の爪先まで丁寧に舞う。誰が見ても 完璧な踊りである。
周りの生徒もヒソヒソと声を立てる。
「岩本先輩の相手見たことない人だけど超綺麗」
「もしかして彼女?」
「息ぴったりだよね」
「お似合いの2人じゃん」
周りから聞こえる声が痛いほど入ってくる。
💜(なんだよ……あんだけ言っといてちゃっかり可愛い子相手に選んじゃって…)
深澤は複雑な表情でフロアの中心で踊る岩本を見る。
すると、岩本と踊っているパートナーの女性とバチッと目が合ってしまった。
────ニコッ
深澤と目が合った女性は一瞬だけ挑発するような笑みを浮かべた。
💜「…………っ!」
胸の中で言い表せない焦燥感に駆られた。
フツフツとした、ドス黒いような、なんとも形容のし難い感情。
💚「ふっか?」
💜「……外の空気吸ってくる」
深澤は居た堪れずに早足で大広間を出た。
小さくなるクラシックを背に宛もなく歩いた。
何も考えずに歩いた深澤は中庭まで来ていた。
置かれてあるベンチに腰を落とし、ため息を着いた。
先程の光景が頭から離れない。
確かに、断ったのは自分だ。
「他のヤツを誘え」と言ったのも自分だし、
「なんとも思わない」と豪語したのも自分だ。
さらには「迷惑」とまで言って突き放した。
なのに、胸の中のこのモヤモヤはなんだ。
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この感情を認めたくなかった。名前を付けたくなかった。
『恋人をとられるかもしれない』なんて。
ベンチで夜空をボーッと見つめる深澤の元へ近づく足音が聞こえた。
💙「ここにいたか」
💜「……なべ」
💙「俺もああいう雰囲気は堅苦しくてあんま得意じゃなかったわ」
苦笑いしながら中庭に来た渡辺も深澤の隣に座った。しばし沈黙が続いた中、渡辺が前置きなしで核心をつく事を言った。
💙「……嫉妬したか」
『嫉妬』
まさしく今1番出されたくない単語。しかし、認めざるを得ないのだ。
💜「笑いたきゃ笑えよ」
💙「茶化しに来たわけじゃねぇって」
意外にも渡辺の声は真剣だった。
💙「照の誘い断ったんだって?本人から聞いた」
💜「そうだよ。だって当たり前だろ。グリフィンドールとスリザリンの監督生同士がさ、手を取りあって踊るなんて」
💜「監督生っていうのは……他の生徒の手本にならなきゃなんないの。スリザリンの誇りにかけて、俺はこのポジションを守らなきゃなんないと思ってる」
💙「なぁ。……ちょっと俺の話になるんだけどさ」
💙「俺は入学してすぐ涼太と寮が別れて、暗黙のルールのせいでまともに話せなかった。夜中にこっこり会って話すしか出来ないような環境だった。今のふっかたちと同じだ」
💙「創立者同士が仲悪かったとかは知らねぇけど、そんなくだらねぇ伝統のせいでガキの頃の俺らは歯がゆい思いしてたんだよ」
💙「今の生徒は『本当に性格が合わないから不仲』なのか『長年の伝統で、先輩から言われたから不仲』なのか分かんねぇ」
💙「 今、あの時の俺と同じような思いしてる後輩がいたとしたら?
『グリフィンドールと仲良くするな』って行動で示して圧をかける様がお前の誇る理想の監督生の姿か?
俺からすると……今のふっかはガキの頃に『宮舘と絡むな』って言ってきた先輩らと同じなんだよ 」
💜「……っ」
💙「ホントに性格が合わないヤツらは別に関わらなくていい。でもそうじゃないヤツらのことまで縛る必要あるか?
誰と仲良くして、誰を好きになるなんて個人の決めることだろ? 他人が強制することじゃない。
照はそれを主張したいんだと思う。監督生っていう権力を使って」
💙「俺の個人的な予想だけど、照は今その馬鹿げた伝統って壁を壊そうとしてる。不仲っていう1000年の壁をな。
反感を買うかもしれないし、ふっかの言うように信頼を失うかもしれない。しかもアイツはトーナメントの代表選手なんだぞ」
💙「それでも今、アイツはホグワーツの歴史を覆そうとしてる。その覚悟の上でお前をファーストダンスに誘ったんだぞ」
渡辺の言葉が深澤の胸を抉った。自分の保身と恐れ、プライドが如何にちっぽけなものだったのか。
岩本がどれほどの重圧と覚悟の上で自分を誘ってきたのか。
悪しき伝統に囚われ、本当に大切にすべきものを見失っていた。
💜「……俺…」
そこへ、もう1つ軽やかな足音が聞こえてきた。
💜「え……な、なんで…」
現れたのは、ダンスフロアで岩本と一緒に踊っていたあの美女だった。
女性は微笑んだまま深澤を見つめる。訳がわからずに深澤も見つめ返すと女性はふはっと吹き出した。
?「ニャハハッ!やっぱ気づかなかったか!」
💜「……へ?えっ、その声……!」
女性は首元のタンザナイトが付いたチョーカーをパチッと外す。すると柔らかい光が女性を包みこんだ。
光から出てきたのは────
🩷「ドッキリ〜だいせいこ〜う!!」
💜「さっ!?佐久間!?」
🩷「俺でした〜♡可愛かったっしょ?」
タキシードを着た佐久間だった。
付けていたチョーカーをヒラヒラさせ、佐久間が話す。
🩷「これね、ペルソナ・ヴィオラって言ってね。あべちゃんとラウールの開発品!!30分だけ想像通りの姿に変身できる優れもの!
まぁ研究の時間が無くて声と身長は変身できなかったみたいだけど」
💜「……な、なんだよそれ!!」
🩷「まあまあ。きいてよ笑」
🩷「照さ、泣きそうな顔してたんだよ。『俺ってふっかにとってどんな存在なんだろ』って」
💜「えっ……」
🩷「そっから『ファーストダンスは諦めるから、俺らでどうにかしてふっかを嫉妬させれないか』って話になってさ笑」
💜「まさか……なべ……」
💙「知ってた笑」
💜「お前ら全員グルかよ!!」
🩷「いや〜大広間でのふっかの顔よ笑 おもろかった〜」
💜「最悪だ…」
🩷「いやでもさ?照すごいんだよ」
🩷「今日までの間、俺と照でダンスの練習してたけどさ。『ふっかにバレたらしばらくはお預けだろうな』とか言い出して。
『まぁ拗ねても可愛いんだけどさ』とか急に惚気まで食らったわ笑 最初から最後までずっとふっかなの」
💜「……照が…?」
🩷「早く素直になりなよ。こんなに愛されてんのに。周りがなんて言おうと、そばにいてくれる人はいるんだからさ。古い伝統のせいでその大事な人が離れてもいいの?」
💜「…………」
その時、渡辺の口角がニヤリと上がりある方を指さした。
💙「おっ。王子様の登場じゃん」
振り向くとそこには、深澤が今1番会いたい人物が立っていた。
💛「ふっか」
💜「照……」
渡辺はわざとらしく伸びをした後ベンチから立ち上がった。
️💙「さ、邪魔者は退散するか〜。戻ろっか、さくちゃん」
🩷「うははっ、お手をどうぞってか笑 よろこんで〜!!」
渡辺と佐久間は互いの手を取り、悪戯っぽく笑いながら大広間の方へと戻って行った。
シンと静まり返る中庭。
残されたのは岩本と深澤の2人きり。
深澤がなんて声をかければいいのか分からなかった。
言いたいことが山ほどある。
それでも、謝らなければ。
💜「……照、俺─── 」
💛「ふっか」
しかし、すぐに岩本に遮られる。岩本は深澤の前に立ち、真っ直ぐに見つめる。
そして、左手を差し伸べた。
💛「俺と踊って」
それは3度も断られた誘い。
しかし、深澤に迷いはなかった。
差し出された手に自分の右手をそっと重ねる。
手を強く握り体を引き寄せ。深澤は岩本の肩に手を置き、岩本は深澤の腰に手を添える。
ギャラリーもいない。装飾もない。シャンデリアもない。
あるのは大広間の開け放たれた窓から薄らと流れてくるクラシックと月明かりだけ。
豪華絢爛な大広間のダンスフロアとは違う、月光が優しく降り注ぐ中庭で2人はゆっくりと足を踏み出した。
練習などしていない。深澤は女性の踊りなど知らない。それでも今は互いの体温を感じながら手探りで踊りたかった。
少しずつステップのコツを掴んでくると、口を動かす余裕ができる。
💜「……俺、なんも考えてなかった」
💛「何を?」
💜「照がどんな気持ちで……誘ってくれてたのか」
💛「……俺も言葉足らずだった」
💜「ごめん。あの時…言い過ぎて、傷つけた」
💛「謝んなくていい。こうしてふっかを感じれるんだったら、それでいい」
💜「……なにそれ笑」
月光の下で踊るワルツ。 それは2人だけの甘い時間。
大広間から微かに流れてくるクラシックが聞こえなくなるまで、ステップは続いたのだった。
· · ───── ·✧· ───── · ·
あとがき
読まなくても️⭕️
▷ペルソナ・ヴィオラ
タンザナイトがあしらわれたレース基調のチョーカー。首につけると30分だけ想像する姿に変身できる。
ただし時間が無くて身長と声は変身できなかった。
佐久間は阿部に「絶対喋るな」と釘を刺されていた。
💛💜さんの仲直りはこれで終わるつもりだったのですが、タイミング良く仲直りなかよし🔞のリクエスト頂いたので『another短編集』にてこの2人の仲直り🔞を投稿予定です。
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コメント
8件
良かったなぁぁぁ…おふたりぃぃ! 透子さんの書くお話はどれも小説みたいで、読んでいて感嘆させられるものばかりです! ふっかさんが映画のヒロインみたいで素敵でした✨️💜
(っ ‘ᾥ’ c)クワッ、、、、きゃんわいいい♡♡♡♡♡ ふっかさんの嫉妬、、おいしい(*´﹃`*)グヘヘ♡ 美女が出てきた段階で、あっ、あべちゃんだなって思ってましたwww 誰もいないところで2人だけのダンスなんてロマンチックすぎる"(∩>ω<∩)" いわふか最高( ´ཫ` )
やば……ふっかさん可愛い❣️