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教室の片隅で、ノートを開いたままぼんやりと座っていると、隣の席の彼がひょいと顔を覗き込んだ。
「また落書きしてるの?」
その声に、思わず顔を赤らめる。
「そ、そんなことないよ……」
言い訳をしても、天然な彼はニコニコ笑っているだけで、問い詰めたりはしない。
ノートの端に描いた小さなキャラクターたち――
ちょっとしたマンガみたいな絵は、誰にも見せないつもりだったのに。
でも、彼は自然とその隣に座って、楽しそうに覗き込む。
「これ、すごく可愛いね」
褒められると、照れで手が止まる。
「え、そ、そんなことない……」
それでも、心の中では小さな喜びが広がっていく。
昼休み、ふたりで席に戻ると、またノートの端に落書きを始める。
「じゃあ、こっちは俺が描いていい?」
突然、彼がペンを持ち、線を加え始める。
「ちょ、勝手に描かないで!」
思わず抗議するが、彼は楽しそうに微笑むだけで、やめようとはしない。
互いに小さな絵を描き合いながら、気づけばノートの端はふたりの世界でいっぱいになっていた。
落書きひとつで、こんなにも近くなれるなんて、思ってもいなかった。
授業が始まっても、ふたりの目線は自然と交わる。
「ここ、間違ってるよ」
ペン先を指さされ、顔を赤らめながらも、心は温かくなる。
小さな注意やささいな笑顔が、日常の中で特別な意味を持つ。
放課後、教室の掃除を終えて、ふたりは席に戻る。
ノートの落書きは、今日も少しずつ増えていく。
「また明日、続きを描こうね」
天然な彼の声に、自然と頷く自分。
「うん、楽しみ」
教室の片隅、ノートの端に広がる小さな世界。
誰にも邪魔されず、ふたりだけの秘密の時間。
ページをめくるたびに、互いの心が少しずつ近づいていくのを感じる。
ノートの落書きは、ただの遊びではなく、ふたりの気持ちの通い合いの証。
言葉にしなくても、目線やペン先の動きで、互いの心は確かに伝わる。
そして、今日もふたりは小さな笑顔を交換しながら、ノートの端に新しい物語を描いていく。
学校生活の一瞬一瞬が、やがて特別な日々に変わることを、まだ誰も知らないまま――。