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#普通
野々さくら
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ありあ
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全員が席に着き、ざわめきが静かに収まる頃。
中庭の前方へ歩み出た美沙は、用意されていたワイヤレスマイクを手に取った。
一度深呼吸をして、柔らかな笑みを浮かべる。
「はい!みなさん!」
その一声だけで、参列者の視線は一斉に彼女へ集まった。
「たった今、新郎新婦の
着替えが終わったとの報告を受けました」
その言葉に、会場から歓声が上がる。
「ついに来たぁ〜♬」
茜が待ちきれない様子で身を乗り出し、焔垂も思わず拳を握った。
「来たぁ〜♬」
美沙は嬉しそうに頷きながら続ける。
「これより、新郎新婦が
思い出の曲と共にご入場されます」
少し間を置き、マイクを持つ手を胸元へ添えた。
「皆様、盛大な拍手でお迎えください」
そう告げると、美沙は静かに一礼した。
「これより、新郎新婦の入場です」
その合図と同時に、庭の各所へ設置されていたスピーカーから音楽が流れ出す。
それは、軽快なギターサウンドと、透明感ある女性ボーカルの綺麗な歌声だった。
90年代の街に似合う様な、少し甘くて切ないラブソングが優しく会場を包み込み、一瞬で空気が変わる。
茜は目を丸くした。
「あ!これ知ってる!」
焔垂も耳を澄ませながら頷く。
「有名なやつだよな」
さくらは信愛へ視線を向けた。
「なんでこの曲なの?信愛が選んだの?」
信愛は嬉しそうに微笑んだ。
「ほら、皆もお母さんから
聞いたでしょ?千里眼騒動の経緯」
「う、うん、聞いたけど」茜は頷く。
「その時にお母さん話してたでしょ? 結婚前に
二人で色んな場所にデートに行ってたって」
朝陽は思い出したように頷く。
「あ、そう言えば言ってましたね
そよくこの曲を流してたって」
「ああ、なるほど」
焔垂も納得したように笑う。
「なるほど、だから思い出の曲ね」
信愛は小さく頷いた。
「だから入場曲はこれしかない!
って 小諸さんにリクエストしたの」
「なるほどね」
茜が優しく微笑んだその時、会場中から自然と拍手が湧き起こる。
その拍手に迎えられながら、中庭の入口から銚子と多摩雄がゆっくりと姿を現した。
多摩雄は漆黒のタキシードに身を包み、胸元には白いブートニアが映えている。
その隣を歩く銚子は、純白のウェディングドレスをまとい、ヴェール越しにも分かるほど穏やかな笑みを浮かべていた。
清らかで気品に満ちたその姿は『瀟酒にして雅』という言葉が相応しい程の可憐さに満ちていた。
二人の瞳には、すでに涙が滲んでいる。
「二人とも綺麗だよ〜♬」
信愛の声が響く。
「きゃぁあ〜♬最高〜♬」
茜も惜しみない拍手を送りながら笑顔を見せた。
会場中が祝福の拍手と歓声に包まれる中、二人はゆっくりとバージンロードを歩き、一段高く設けられた祭壇へと上がる。
参列者全員を見渡した銚子は、震える声で口を開いた。
「みなさん・・・」
言葉に詰まりながらも、大きく息を吸う。
「こんな素敵な時間を・・・
本当にありがとうございます」
多摩雄も深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
二人は揃って参列者へ深々と一礼する。
しばし温かな拍手が続いたあと、哲哉がゆっくりと前へ歩み出た。
穏やかな笑みを浮かべたまま、新郎新婦へ向き直る。
「千里眼騒動の件や、今回の
天縁教団の件は聞き及んでおります」
その言葉に、銚子は小さく呟いた。
「小諸さん・・・」
哲哉は優しく頷く。
「また、当時マスコミに追われていた貴方達は
結婚式を挙げていないという話もお聞きしました」
会場をゆっくり見渡しながら続ける。
「我々の中には、貴方や娘さんに
救われた者が大勢おります
これは我々からのささやかな贈り物です」
哲哉は銚子と多摩雄を優しい眼差しで見つめる。
「最高の思い出になるよう、我々が
精一杯おもてなしさせていただきます」
銚子は涙をこらえきれず、目元を押さえた。
「もう・・既に最高の思い出です・・・」
声を震わせながら、涙を浮かべて微笑む。
哲哉も優しく笑った。
「それは、よかったです」
やがて哲哉は祭壇中央へ進み、新郎新婦は互いに向き合って立つ。
静寂が会場を包み込む。
哲哉はゆっくりと誓約書を開き、厳かな口調で読み上げ始めた。
「汝、白縫多摩雄は、白縫銚子を妻とし──」
その一言とともに、誰もが息を呑み、二人の新たな門出を静かに見守った。
哲哉は誓約書を静かに読み上げる。
「良き時も、悪しき時も。富める時も、貧しき時も」
穏やかな声が、中庭に優しく響き渡る。
「病める時も、健やかなる時も、共に歩き
他の誰にも心を移すことなく」
一つ一つの言葉が、祝福に満ちた空間へ静かに溶け込んでいく。
「死が二人を分かつまで愛を誓い
妻を想い、妻のみに添うことを」
やがて哲哉は誓約書から顔を上げ、多摩雄を真っ直ぐ見つめた。
「神聖なる婚姻の契約のもとに誓いますか?」
会場は、水を打ったように静まり返る。
誰もが、多摩雄の返事を待っていた。
多摩雄は隣に立つ銚子へそっと視線を向けた。
その瞳には、長い年月を共に乗り越えてきた記憶と、ようやく迎えられた今日という日への感謝が溢れている。
銚子もまた、涙を浮かべながら優しく微笑み返した。
その笑顔を見届けると、多摩雄はゆっくりと前を向き、迷いのない声で答える。
「はい・・・誓います」
その一言に、参列者の表情が一斉に和らいだ。
哲哉は満足そうに頷き、再び誓約書へ視線を落とす。
「汝、白縫銚子は──」
今度は銚子へ向けて、厳かに誓いの言葉が読み上げられ始めた。
コメント
1件
×××さん、お疲れ様です、みぅです🤍 315話、読み終わりました…。もう、冒頭から涙腺が緩みっぱなしでした。銚子さんと多摩雄さんがようやく結婚式を挙げられる瞬間、本当に感慨深かったです。特に多摩雄さんの「はい…誓います」の一言に、ふたりが歩んできた長い年月と想いが凝縮されていて、胸が熱くなりました。粛々とした哲哉さんの進行も、逆に感動を引き立ててて。最高のシーンをありがとうございます🍀