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同じ頃、奈美は立川のファッションビルで、買い物をしていた。
一通り服を見た後、お目当てのランジェリーショップに入ると、秋冬新作の下着が並び、ボルドーやダークブラウンなど、こっくりとした色味の物が販売されている。
手持ちの可愛い系ランジェリーは、白とパステルブルー、クリーム色の三色。
店内をウロウロしていると、迷っている奈美を見兼ねた店員さんが、声を掛けてくれた。
「ピンクはピンクでも、こちらのモーヴピンクのランジェリーはいかがでしょう? ピンクが苦手、という方でも、このピンクは好評なんですよ」
くすんだピンク、と言えばいいのか、グレーが混ざったようなピンクのランジェリーは、大人可愛い雰囲気。
バラの刺繍が素敵で、一目惚れしてしまった。
キャミソールとブラを試着させてもらい、鏡に映し出してみると、肌馴染みがいいし、何となく肌の色も綺麗に見える。
季節を問わず使えそうな色合いに、彼女は、キャミソール、ブラ、ショーツのセットで購入した。
(今度、豪さんと会った時に、着けていこうかな……)
彼が服を脱がせ、この下着を纏った自分を見て、どんな反応するのかな? なんて考えたら、ニヤけてしまいそうになる。
これではただの変な女だ。
商品を受け取り、店員さんに会釈をして、店を後にした。
昼近くになり、駅ビルを出た後、前から行きたいと思っているカフェへ向かってみた。
ペデストロディアンデッキの階段を下り、大きめの通りを横断して直進すると、目的のカフェがある。
駅前の交差点で信号待ちしている時。
道路の反対側にいる男の人は、見覚えのある男性。
隣には女優の米村涼香に似た、モデルのような綺麗な女性がいる。
高身長の美男美女カップルは、離れていても相当目立っていた。
「え……?」
男性は乾いた笑いを浮かべ、女性は男性を見つめながら腕を取っている。
奈美は、鼓動が忙しなく打つのを感じながら、そのカップルを穴が開くほど凝視していた。
どこからかの視線に気付いたのか、男性が周囲を見渡す。
奈美に気付くと、奥二重の瞳を大きく見張っていた。
「豪……さん……」
もしかしたら、本命の彼女がいたのか、それとも元彼女なのか、奈美には分からない。
米村涼香似の女性は、豪の様子が固まっているのに気付いたのか、どうしたの? と言っているようにも見えた。
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