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「…… 充、体は大丈夫か?」
清一に優しい声色で訊かれ、俺は「あぁ」と頷いた。
お湯で濡らしたタオルで体を拭いてもらい、ちょっとスッキリしたので、持って来ていた鞄から服を引っ張り出してそれに着替える。
(『パンツを持って来い』って言われてはいたが、まさかこの為か?…… 清一は、元々こんな事をする気だったとか?)
流れで何となくそうなってしまった気でいた俺は、ちょっと今の状況をどう受け止めていいのか困った。
「あぁ、平気」
「そうか」
目を合わせる事なく、清一が黙々と片付けをしていく。ベッドの上に事前にバスタオルを敷いてあったおかげで、作業自体はパッパと終わりそうだ。
脱いだ服を鞄に詰め込むと、途端に俺は、気不味い空気を持て余してしまった。
(今からゲームの続きでもやるか?いやいや、ぶっちゃけ全然俺熱冷めてねぇし。…… 出来れば速攻で帰って、コレをどうにかしてしまいたい。それにしても、俺と違って、何でコイツは全然普通なんだ?——あーもう!)
一人でモヤモヤしていると、清一が「送ってくよ。体辛いだろう?」と声を掛けてきた。
「すぐ隣だし、一人で帰れるよ。今日に限って送るとか……いいって、別に」
「でも……」
「大丈夫だから!な?」
「……わかった」
清一が頷き、俺の頭をそっと撫でてきた。
「気持ち、悪くなかったか?」
「いや、全然」
即答してしまい、お互いに目を見開いて『マジか!』って顔になった。
何で…… 俺は即答出来たんだ?キモイだろ、普通に考えて。
いくら気心の知れた幼馴染が相手だとはいえ、男同士だぞ?それともアレか?
このくらい友達同士よくある話だとか?イヤ、エロ本じゃねぇんだから無いだろ!
(——まさか、清一がイケメンだからか?結局俺もソコに行き着くのかよ!)
悶々と色々考えながら、俺は清一から視線を逸らして頰を叩いた。
「…… えっと。ありがとな、トレーニング色々教えてくれて」
「あぁ、役に立ったならいいんだが」
「「………… 」」
会話が続かず互いにすぐ無言になってしまい、かなり居心地が悪い。清一とは長年一緒に居るのに、こんな事は初めてだ。このままであって欲しくは無いが、じゃあどうしていいのかもサッパリわからん。
「えっと、俺…… 帰るわ」
「あぁ」
清一の部屋から出て一階に向かう。玄関先まで一緒に行き、靴を履いて外に出ようとした俺に、清一が声を掛けてきた。
「明日、またな」
「お、おう」
反射的に答えてしまったが、『また』の対象はどれだ⁈
筋トレか?ストレッチか?
ただ、『明日また一緒に学校行こうな』とか?
(——今日の場合他にも色々あるけど…… どれなんだよ⁈)
「おやすみ」
そう言う清一に、同じく「おやすみ」と返す。
外へ出ると俺は、逃げる様に家まで走り、自室へ駆け込んだ。鞄を床に放り投げ、乱れる呼吸を整えようと思ったがとてもじゃないが無理そうだ。この荒い息遣いは絶対に走ったせいだけじゃ無い。体の奥で燻る熱も全然冷めてくれない。
(…… 人に触れられるのがあんなに気持ちいいとか、嘘だろ?もっとしたかったとか……って、ありえんって!)
パイプベッドの中に勢いよく潜り込み、頭まで布団をかぶる。
まだ時間的にもギリ親は帰って来ないはずだから、今しかないよな。この熱をどうにかしないと、今夜は眠れそうにない。昂ぶる気持ちのまま、ジャージのズボンとボクサーパンツをまとめて下ろし、滾りのおさまらぬ陰茎部を露出させる。体を横に向け、ソレを握ると俺は…… 自慰を始めてしまった。
「はぁはぁはぁ……」
瞼を強く瞑り、オカズになるような事を考える。いつもなら綺麗なお姉さんとか、可愛い子との様々なシチュエーションを思い浮かべるのに、今日はそれが全然出来ない。
さっき見たばかりなせいか、清一の汗ばむ肌や、熱っぽい眼差し。あらい呼吸音と、重なる肌の奥に感じた激しい心音やらばかりを思い出してしまう。
それなのに、萎えるどころか手の動きは全く止まらず、陰茎部を刺激し続けてしまった。
『…… 充』
耳の奥で名前を呼ばれる幻聴が聞こえたと同時に、俺は体を震わせ、最短速度で自分の手の中に白濁液を吐き出してしまった。
「…… う、嘘だろ?」
布団を捲り、ジッと手を見る。
たっぷり指にまとわりつくモノを見ても、信じられない気持ちで一杯だ。さっきとは違い体は少しスッキリ出来たが、心の方はモヤモヤとしたままだ。
「清一は…… 何であんな事したんだ?」
答えの得られぬ呟きが、俺の部屋の中で虚しく響いた気がした。