テラーノベル
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朝、教室のドアを開けた瞬間、
誰かがため息をつくのが聞こえる。
何も言わずに席まで行くと、
椅子がひっくり返されていた。
sn「またか…」
小さくつぶやいて、椅子を直す。
誰もこっちを見ていない。
机の中には、
バラバラになった教科書と、
泥のついた弁当袋。
カバンの片方のストラップが、
今にも切れそうにほつれている。
隣からクロノアさんが声をかけてくる。
kr「ひどいね、それ。やられたの?」
sn「うん。まあ、いつもですから」
kr「無理しないでね」
sn「大丈夫、こんなことはもう慣れてますよ」
クロノアさんはそれ以上何も言わず、
足を机に乗せて眠ったふりをする。
でも時々、こっちをちらっと見てくる。
(ああ、気にしてくれてるんだろうな)
それだけでほんの少し気が楽になる。
昼休み、カバンがなくなった。
ちょっと探せば、
教室の後ろのゴミ箱の横に転がっていた。
泥だらけだったけれど、中身は無事だった。
その様子を遠くから見ていた
誰かがくすくす笑っている。
そちらを見ないようにして、
カバンを取りに行く。
クロノアさんが横に来て、ぼそっと言った。
kr「何でも話してよ。俺、聞くからさ」
sn「……ありがとうございます」
放課後、下駄箱で靴が隠されていた。
体育館横の裏に行ってみると、
クロノアさんが探していてくれた。
kr「いた」
sn「見つかりました?」
kr「うん。履ける?」
sn「平気です、ありがとうございます」
クロノアさんはちょっとだけ口を尖らせる。
kr「気をつけてね。俺いないとき、絶対一人で帰らないで」
その言葉だけが、少し胸に残った。
帰り道、ふたりで歩いて踏切まで来る。
警報機が鳴り始めた。
僕は立ち止まって、クロノアさんを見る。
kr「……ねぇ、明日も来る?」
sn「うん、多分」
kr「俺、ずっとしにがみくんの味方だから」
その瞬間だけ、
クロノアさんの横顔がやけに
頼もしく見えた。
でも、誰もいない夕暮れの踏切。
大きな電車の音が近づいてくる。
クロノアさんが前を向いて歩き出したとき、
急に何かが切れた気がした。
気付くと、俺は線路に向かって走っていた。
クロノアさんの
kr「しにがみくん!」
という声が遠くで響く。
(――ここで終われば、もういいや)
赤い遮断機の下、
世界が一瞬だけ静かになった。
耳の奥で風と電車の音だけが、
強く鳴っていた。
そのあと全部、真っ白になった。
コメント
1件
し、しにがみさん?!?!ダメだよ?!クロノアさん 優しい( ; ; ) てか、やっぱ🥀ちゃん物語書くの上手いな!