テラーノベル
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ニッコリ・・・「とってもいいですね、ではそのロボットのキャラクター造形を考えてください」
善良な小説教室の講師の仮面をかぶった桜子はそう言いながら、窓の外の空がすっかり藍色に沈んでいるのに気づいた、やっと教室が終了する時間が近づいて来てホッとした
いつもの締めの時間になって、桜子は教壇の前に戻って生徒達を見渡す、誰もがペンを置いて尊敬と期待に満ちた目で桜子を見上げていた
その目を見る度、桜子は自分がひどく大きな嘘の上に立っているような、しかしその嘘こそが自分の生活を支えているのだという、矛盾した安堵を覚えるのだった、そして桜子はいかにも偉大な作家のフリをして語り始める
「皆さん、今日も本当に素晴らしい発想でした、私達はみんな本職を持っていますが、それでも同じ芸術の仲間です、それぞれがかけがえのない才能と、唯一無二の想像力を持っています、そしてそれぞれが等しく『作家』というあの魅力的な呼び名に値するのです」
こんこんと語られるその夢物語に、生徒たちは今日も恍惚とした表情を浮かべて聞いている、誰もその言葉が何百回と繰り返されてきた同じセリフで、もはやそれが真っ赤な嘘なのか本当なのか自分でも判別出来なくなっている
そして最後に、次回の教室までの宿題を告げる、いい加減な客と呼ぶべき生徒に宿題を課さないと、彼らはすぐに「来月は用事があって」と別の予定を差し込んでくる、そうなれば桜子の来月の収入がなくなる
「それから公募に出される方は、少し料金がはずみますが、私の添削を必ず受けてください、添削無しに公募に出しても受かりませんからね」
「でもぉ~誤字脱字チェックはAIがやってくれますよぉ~」
主婦ブロガーが余計な口をはさむ、主婦だけあって財布の紐は硬い、桜子はムッとするが顔には決して出さない
「私の添削は誤字脱字チェックだけではありません、公募を出している出版局の欲している傾向と対策に照らし合わせて特別に一人一人にアドバイスするのです!AIと一緒にしないでくださいね」
ブツブツ・・・「でもぉ~添削2万円は高いわぁ~」
ガタンッ!「桜子先生!僕の作品の添削をよろしくお願いします!」
ガリガリ郵便配達員が言った
「桜子先生、僕もよろしくお願いしますよ、ランキングを上げたいんでね」
ガリガリ郵便配達員の隣で言ったのは、丸々と上半身だけ太った丸刈りのコールセンター勤務の中尾君だった
彼は一度、WEB小説サイトで「異世界ファンタジー」ものでおじさんが異世界に転生して可愛い女の子といろいろするという、自分の欲望丸出しのファンタジー作品で賞を取ったのにもかかわらず
書籍化にはならなかったという実績なのかどうかわからないモノを持った人物だ
空音
37
シュメール
604
39
2,810
コメント
2件
キャラの濃い色んな受講生たち🤣受賞者は出るかしら🤔
うわ、この回すごく苦しい空気感がビシビシ伝わってきたよ…。桜子先生の「大きな嘘の上に立っている」っていう自己認識と、それでも生活のために演じ続ける矛盾が切ない。金払いの悪い主婦ブロガーと、がっついてる郵便配達員や中尾くんの温度差もリアルで、なんか現実の創作教室あるあるっぽいな。盗作とか嘘がどう転んでいくのか気になる!