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主婦だった女は、拓人に会いに足繁く店に通い、彼を指名し続けたが、女の夫が拓人を浮気相手と思い込み、店の前でボコボコに殴られたのだ。
以来、彼は支配人に頼み、主婦の女を避けるように調整してもらう事で、男娼を続けていく。
既に、店で稼ぎ柱となっていた拓人に、一つの目標ができたのも、この頃だった。
──自分がオーナーとなり、女性専用風俗店を持つ事。
彼は、多くの女性客を悦ばせつつ、地道に資金を貯め、開業準備を進めていくと、四年ほど勤めていた店を二十七歳で辞めた。
支配人に理由を問われたが、自身が店を構える事だけは一切言わず、拓人は『真っ当な人生を送りたい』と言い繕う。
数ヶ月後、渋谷の丸山町に、彼の店『Pleasure Garden』をオープンさせた。
(大学で学んだ事が、こんな所で生かされるなんて、人生ってマジでわかんねぇ……)
女性風俗店とは思えない、デザイナーズマンションを思わせる外観を見上げながら、拓人は、表情を緩ませた。
「へぇ……。アンタも…………うちと似たような家庭環境だったんだ。それに意外と野心家というか……何というか……」
優子が呆気に取られながら、拓人を見上げる。
「一応、俺も親の言う事は聞いてたけどな。大学に入っても、親は俺の将来に口を挟んできたし、俺は何も言わずに、行動で反発してたって感じだったな」
微苦笑しながらも、虚しい色を滲ませる彼。
拓人は優子に、ぎこちない様子で話を再開させた。
女性風俗店のオーナーとして、新たな人生を歩み始めた拓人は、仕事を通じて、赤坂見附で高級娼館のオーナーを務める星野凛華と出会う。
天真爛漫な性格の凛華を、姉のように慕う彼。
店を経営する上で、拓人は凛華にアドバイスをもらう事もあった。
彼が店をオープンさせてから二年後、凛華から一本の電話が入る。
新人の娼婦が処女のため、拓人に純潔をもらって欲しいという内容で、これまでも、凛華の経営する娼館で働いている娼婦の『初めて』は、何度か頂いた事があった。
『…………今日からうちに来た新人娼婦の子なんだけど。彼女の名前は九條瑠衣。…………年齢は二十歳くらいかな。明るめの茶色の髪に、顎くらいの長さのボブスタイルの女性で、唇の右側にホクロがあるの。…………ええ、何せ初めてだから、怖がらせないようにしてもらって──』
『分かりました。でしたら、娼館の隣にある老舗高級ホテルのロビーで、十九時に待ち合わせはいかがでしょう?』
凛華の依頼に、彼は快く引き受けた。
『では十九時に隣の高級ホテルのロビーで。お部屋代などは後日請求して下さる? よろしくお願いします』
『こちらこそ、よろしくお願いします』
拓人は、気にも留めず、スマートフォンの通話終了のアイコンをタップする。
だが、この電話が、自身の運命を大きく変えるきっかけになるとは、彼は思いもしなかった。