テラーノベル
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4話 「他人をじっと見つめるのは失礼だと思う」
今日初めて、 少年の考えが少し分かったような気がして嬉しかった。本人は何も気にした様子もなく、引き続きコーラをちびちび飲んでいた。
いや、分かったような気がしただけで、実際に少年は何も言っていないし、俺の妄想かもしれない。それでも、少年が意志を表してくれるという希望は少し見えた気がする。
両手でその頬を包む。
「お前可愛いな〜」
笑いながら、もちもちの頬に触れる。少年は嫌そうにすることもなく、ただ俺を見ていた。
2つの赤。暗闇でもハッキリ見えたそれは、最初こそ恐ろしいと思ったが、今は少しかっこいいとも思う。そういえば、すんなり受け入れていたが、赤い目ってかなり珍しいのでは。
なのに、今のところ誰もその事に触れていない。昴だって何も言わなかったし。
翌日の昼、満席で騒がしいファミレス。
自分の隣に少年が座り、正面には昴。
「そのガキ、まだいるのかよ…」
朝、突然昴に食事を誘われたため、少年も連れて行くと、少年を見た昴が失礼にも大きくため息を着いたのだ。
「何がいい?食べたい物、ある?」
少年にメニューを見せる。もちろん何の反応もない。
「子供が好きといえば、ハンバーグだよな。うん、これにしよ。飲み物はメロンソーダがいいな。俺は…アイスコーヒーかな。先輩は?」
「お前さぁ…」
昴が呆れた、とでも言うように先のやり取りを見ていた。
「先輩もアイスコーヒーでいいよね 」
テーブルの上にある呼び出しボタンを押す。
「おい、こっちはまだ何頼むか決めてねーよ」
「大丈夫」
「何が大丈夫だ」
さっそく店員がやってきた。アイスコーヒーを2つ、メロンソーダを1つ、それからハンバーグ定食に冷やし中華とオムライスを頼む。
「先輩オムライス好きでしょ」
「俺がいつそんな事言った? 」
「言ってないよ。俺が好きなだけ」
「は?ふざけてんの? 」
「あはは」
笑っていると飲み物が届いた。アイスコーヒーを口に含むと、冷たさと程よい苦さに、現実に引き戻される感じがした。
「…それで、その子はずっと一緒にいたんだな」
「うん。いい子だし問題ないよ」
少年の頭を撫でる。メロンソーダをちびちび飲んでいる。コーラのときもそうだったが、炭酸系は得意ではないのだろうか。
「ついてくるだけで喋らない、こっちが言うことに返事もしない子供が、いい子?」
少し、温度が下がった気がした。
「泣かないし、暴れないし、静かだし」
「それは不気味だって思わないかな?…はぁ」
昴は頭を抱えていた。正直、一度も思わなかったと言ったら嘘になる。
そもそも、夜中に突然現れた時点でおかしい。
「しょうがないじゃん」
行く宛てもない少年を、警察も引き取ってくれない少年を、ついてくるのに何も求めてこない少年を、どうやって突き放せるんだ。
「….じゃあお前が今みたいに一生世話すんの?何食べるのか、何するのか全部決めてあげるのか?」
「…」
言葉に詰まる。いつか話してくれるかもしれないとか、そういう言葉は思いついても、結局それは憶測でしかなくて。
一生、その言葉が妙に重く感じた。
からん、と音が鳴る。いつの間にか少年がメロンソーダを飲み干したようだっ た。
「…」
少年は、空のグラスから昴に視線を移すも、すぐにその後ろに目を向けた。つい、その先を辿ると、料理を運んでくる店員が見えた。
髪を三つ編みにしている若い女性の店員はこちらにやってくると丁寧に料理を並べた。
「…何か?」
少年があまりにじっと見つめるから、女性は笑顔で応える。
「すみません。こら、人をじっと見るのは失礼だよ」
こつん、と軽く少年にデコピンをお見舞いする。女性は微笑ましげに、小さく会釈すると戻っていった。しかし、少年は懲りずにその後ろ姿を見ていたから、スプーンを持たせて食べ物に注意を逸らした。
「この子、人をじっと見る癖があるんだ 」
「…”この子”って、名前とかないの?」
昴の質問に、確かに、と思う。
頭の中では、”少年”だが、呼ぶ時はいつも、おいとかお前とかそんな感じだった。
「…そういえばないな。付けてあげるか」
顎に手を当てて考える。
「やっぱりな。そんな気はしてたけど」
昴はオムライスを食べ始めた。自分も、いただきますとつぶやいて冷やし中華をいただく。
店内は冷房が効いているはずなのに、人が溢れているせいか蒸し暑く感じて、少し居心地が悪かった。
コメント
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うわ、第4話、めっちゃ心に残りました…!主人公が少年のことを「分かった気がした」って喜んでたのに、昴に「一生世話するのか」って現実を突きつけられて言葉に詰まるシーン、グッときました。確かに名前すらない「少年」をずっと見る覚悟って重いですよね。あと、少年がじっと他人を見つめる癖、何か意味ありげで気になる…。三つ編みの店員さんを凝視するシーンも不穏で続きが気になります。
玖(キュウ)
355
ruruha
2,046
1,434