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「さて、長々とお邪魔したから俺たちは帰るよ。今度ここに来る時は、俺も奏も楽器持参で行くわ」


二人がそろそろ帰宅する旨を伝えると、瑠衣は困惑気味に笑みを映し出した。


(え……二人が帰ったら…………相当気まずいんだけど……)


瑠衣の思いをよそに、友人カップルはリビングから玄関へと向かう。


「響野先生、瑠衣ちゃん、お邪魔しました。ありがとうございました」


「侑、九條さん、お邪魔しました」


「ああ、また二人で練習しに来いよ」


「葉山さん、奏ちゃん…………気を付けて」


ひと通り挨拶を済ませた後、怜が侑に満面の笑みを湛えながらひと言だけポツリと零した。


「まぁ……頑張れよっ」


「…………フンッ……」


怜がそう言いつつも、侑の肩をポンポンッと二回軽く叩くと、侑が苦汁を舐めたような表情を映し出す。


怜と奏は、ヒラヒラと手を振って侑の自宅を後にした。




「わっ……私、れ……練習してきますっ」


二人を見送ってから、玄関に漂う雰囲気が鉛のように重くなり、それに耐えきれなくなりそうな瑠衣が、そそくさとリビングへ向かいドアノブに手を掛けようとした時だった。


「九條……!」


(今度こそ……俺は…………この手を…………離さない……)


侑は瑠衣の手首をしっかりと掴むと、彼女はすぐにこの場から立ち去りたいように、何度も彼の腕を振り解こうとする。


しかし、侑の握力が予想以上に強いせいか、振り切ろうとしても振り切れない。


彼は、彼女の手首を握ったままリビングに入ると、落ち着いた声音で問いただした。


「…………なぜ、俺を避けるんだ?」


鋭い眼差しが瑠衣を刺すと、彼女は侑の視線を逸らしたまま、無言で佇んでいる。


やがて唇を薄らと開いた瑠衣は、侑が一度も聞いた事がない低くて冷徹な声音で呟いた。


「響野先生。手を離して」

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