テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
いと
#和風ファンタジー
るるくらげ
第2章 第12話
「死灰復燃」
「来るぞっ!」
アクラが構える――が。
「アクラさん助けてぇ……足、足が……足……!」
ツヴァイの足が震えて、立ち上がれない。 こんなとき、詩丸ならどうした?――考えるより先に身体が動いた。
アクラはツヴァイを肩で担ぎ、魔族から距離を取る。
「あひぃ……ありがとうございますぅ……神様ぁ……!」
「神様なんていねーよ……あいつがいるのが、その証拠だ……」
吐き捨てながら、アクラはイラつきと恐怖を押し潰して、頭を回す。 最適解。最悪の中での、最適解。
「まずは――テメーからだ!!」
魔族の殺意がジャックへ向いた。 さっきの矢が効いたのか。恨みを買ったのが、肌で分かる。
「させるかぁぁぁ!!」
バロロが割って入る。 ジャックはすぐ距離を取り、半壊した馬車の瓦礫の上から弓を構えた。
「絶対……外さない!」
片腕を失ってなお、バロロの動きは鋭い。 無駄がない。迷いがない。殴るたび、空気が揺れる。
それに――あの魔族。 短時間で“爆”を連発できないらしい。さっきほどの規模が出ない。 小さな爆発を散らすだけで、間合いを作り直している。
バロロの“爆”は、拳と体重の延長みたいな破壊。 魔族の“爆”は、手から出る――“出力”そのもの。
次の瞬間。
バロロの拳が、魔族の右肩を吹き飛ばした。
「グゥッ……!」
魔族は一瞬だけ顔をしかめる。 ――なのに、またニヤッと笑った。
なにを笑ってんだ、こいつ。
魔族は自分の吹き飛んだ肩――腕ごと回収し、 それを、バロロへ向けて足で蹴り飛ばした。
「な、なに――っ!?」
刹那。
それは、爆発した。
「バロロォォ!!」
アクラは叫びながら魔族へ突進する。 (この時点でツヴァイは、地面に降ろしただけで立てている)
「ひぃぃぃぃっ……死にたくない死にたくないっ……!」
ツヴァイは頭を抱え、泣きじゃくる。
「今戦わねぇと、あとでお前――殺してやるからな!!」
もちろん嘘だ。 でも、こうでも言わないと、こいつは動けない。
「うわぁぁぁぁ!!」
ツヴァイはやっと前へ出た――が。
魔族の拳一振り。
ツヴァイは吹き飛び、泡を吹きながら気絶した。
……全く役に立たない。
アクラは剣で斬りかかる。 だが、魔族の身体のところどころに、角質みたいな硬い部分がある。 そこは剣が通らない。まるで鎧だ。
スピードも速い。 油断した瞬間に拳が飛ぶ。
蹴られた。 ――でもガードは間に合った。数メートル吹き飛ばされる。
「……生きてるっ……!」
まだ、いける。
魔族が詰めてくる。距離は一メートル。
そのとき――
「……てめー、この匂い……!」
魔族が、低く唸った。
次の瞬間。
ジャックの矢が、魔族の首へ――後ろから叩き込まれた。
エレクトロアーク。 雷属性で矢の軌道を連ね、数本を一気に叩き込む。
「グオオオッ……!」
さっきより明らかに魔力を込めた一撃。 さすがの魔族も、痛みで呻き声が漏れた。
――苛立っている。空気が尖る。
「テメェェェ!! やっぱてめーは地獄への一番乗りだ!!」
珍しく、よく喋る。 その喋り方で、逆に頭の悪さが透ける。
いつの間にか、バロロに吹き飛ばされた肩は――再生していた。
魔族は、足を爆弾代わりにして超高速で滑るように移動する。 狙いはジャック。即死級の距離。
両腕がビカビカと光り、今にも爆ぜそうだ。 自分の身体を犠牲にするつもりの光り方。
「死ねェェ!!!」
「うらぁぁぁ!!!」
間一髪。 バロロが起き上がり、突進で背後から魔族を吹き飛ばした。
そのせいで、爆発の“行き場”が狂う。 爆ぜるはずだった腕は、魔族自身の方へ飛んだ。
叫び声を上げる間もなく――
ドォンッ!!
鼓膜が破れそうな爆音。 火と衝撃が、視界を塗り潰す。
ジャックは反射で距離を取った。 バロロは疲労で、空中から地面へ叩きつけられる。
アクラは、さっき蹴り飛ばされたときの打ちどころが悪かった。 身体が動かない。
ツヴァイは相変わらず気絶している。
魔族の体はグチャグチャだった。 半壊した頭と下半身、指先だけが――かろうじて原型を残す。
生きてるはずがない。 自滅だ。
よかった。助かった。 ……これで無事に帰れる。
「バロロ……かはっ……やっぱお前、すげーよ」
「ははッ……当然だ……!ダチ守るためなら、腕の一本や二本……!」
疲れ切ってるのに、バロロは笑う。 その底なしの明るさが、逆に救いだった。
「いててて……よかった……アクラくんもバロロくんも無事で……」
ジャックが微笑む。 犠牲はあった。ジャメラポム。変なやつだった。けど仲間だった。
……少しだけ、仲良くなれそうだったのに。
「い、いてぇ〜〜!やっと痛覚がもどってきた!」
「だ、大丈夫!? じゃないよね……ごめんね、今応急処置するから!」
「ははは……」
笑って誤魔化すしかない。 それくらい、全員ボロボロだった。
ダッダッダッダッ
悪夢は、終わらない。
ダッダッダッダッ
希望は打ち砕かれ、
ダッダッダッダッ
絶望の海へ叩き落とされる。
「――ん?」
ダッダッダッダッ
足音。 ――“ヤツ”の足音。
気づいた頃には。
バロロとジャックの真上に、 “下半身だけ”が――落ちてきていた。
「爆ぜろォォ!!!」
遠くにある“生首”が、叫ぶ。
次の瞬間――
再び、大爆発が起きた。