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青春恋
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奇蹟あい
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#夏休み
トド村
44
k
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7月12日、日差しはキツイが風が心地いい。
僕は小さなクーラーボックスを肩にかけ、夕凪先輩との待ち合わせ場所へと向かう。
ちゃぷん、カランと氷水の音がした。
少し湿ったアスファルトの匂い。
空中を、赤とんぼ型の小型ドローンが静かに飛んでいる。
《この先地雷があります》と書かれた看板と交通誘導員を見て、 僕は少し遠回りして先輩との待ち合わせ場所に向かう。
公園の青いベンチで待っていると、一台の車が公園の近くに停まった。
車の中から松葉杖をついた夕凪先輩が降りて来る。
右腕と左足の欠損した白い髪の美少女。
それが僕の恋人、夕凪先輩だ。
先輩は運転手である先輩のお父さんにお礼を言った後
「おまたせー」
と透き通るような声で僕に言う。
僕はベンチから立ち、夕凪先輩を迎えに歩いた。
クーラーボックスからガリガリ君ソーダ味を取り出す。
「どうぞ、夕凪先輩」
僕が先輩にアイスを差し出すと先輩が僕が持つアイスをシャリッと食べる。
「先輩、じゃなくて昔みたいに夕ちゃんでいいのに」
「いえ、僕らはもう高校生。年上には敬語を使うべきです」
「朝日は相変わらずまじめだなぁ」
拗ねたように先輩が言った。
デート、と言っても歩き回ったりはしない。
先輩と隣合ってベンチに座り一緒にアイスを食べる。
ただそれだけ。
公園で子ども達が鬼ごっこをしている。
もう随分と子ども達がキャッチボールをする姿を見ていない。
公園にも、三匹の赤とんぼ型ドローンが飛んでいた。
「今度アメリカとブラジルが戦争するんだって」
《はずれ》と書かれたアイスの棒を加えながら先輩が言う。
僕が中学生の時、メキシコがアメリカの州になった。
今度はブラジルと戦争か。
「朝日はどっちが勝つと思う?」
少し汗ばんだ夕凪先輩がアイスの棒を口に咥えにやっと笑う。
「先輩はどっちが勝つと思います?」
「気持ち的にはブラジルを応援したいな。地球の裏側だし」
なんだその理由。
「朝日は?」
「そりゃアメリカでしょ、強豪国ですから」
「おっ割れたねー、じゃあ賭けしようよ」
ポトッと先輩の口からアイスの棒が落ちる。
「ブラジルが勝ったらコーヒアイスおごって」
夏虫と蝉の声が聞こえる。
「じゃあアメリカが勝ったらケンタッキーおごってください」
「いいよ」
「でも何年かかるか分かりませんよ?」
「いーじゃん、私達何年先もずっと一緒なんだし」
僕の横顔をまっすぐ見て夕凪先輩が言う。
赤らんだ顔を見せたくなくて空を見上げる。
雲一つない快晴。
随分長い事、飛行機雲を見ていない。
僕達が見上げる空は、もう僕達のものではなくなった。
「それもそうですね」
先輩に振り向き少しはにかむ。
「来週プール行こうよ」
「先輩泳げないじゃないですか」
「水着見せたいの」
「……行きます」
「ん、決定」
夕凪先輩が僕に肩を寄せる。
カランっと氷の溶ける音がした。
コメント
1件
うわあ、すごく好きな雰囲気でした……。戦争が日常化した世界なのに、デートの甘やかさとか、アイスの棒で賭けをする夕凪先輩の言葉が「何年先もずっと一緒」って、その温度差がたまらないです。赤とんぼ型ドローンが地雷看板の横を飛んでいる描写も、何気なくて怖い。続きが気になります。