テラーノベル
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数日後。白霧の村に、風をまとった一団が現れた。
「……来たな」
mnrが、村の門の上からその姿を見下ろす。
風をはらむ白い外套。
胸元には、風見の都の紋章──風車の意匠が刻まれていた。
「すごい……本当に来たんだ」
et(私)は、息をのむ。
「村の皆さま」
先頭に立つ青年が、深く頭を下げた。
「我々は、風見の都より参りました。
この地の霧の変化を受け、調査と交流のために派遣されました。
私は、調査団長のfuと申します」
「fuさん……」
mf君が小声で呟く。
「風の記録官の家系だ。伝承に出てくる“風の目録”の継承者……」
「ようこそ、白霧の村へ」
etが一歩前に出る。
「私はet。この村で暮らしています。
皆さんに、お話ししたいことがたくさんあります」
fuは、etを見て目を細めた。
「あなたが、etさん……ですね。
手紙を読んで、あなたの名を見て驚きました。
“霧の記録”に残る、あの少女の名と同じだったから」
「……記録に、私の名前が?」
「ええ。かつて、霧の中心で姿を消した“記憶の鍵”。
それが、etという名の少女だったと」
「記憶の鍵……」
etは胸に手を当てた。
「それだけじゃない」
mnrが前に出る。
「俺のことも、記録にあるはずだ。
mnr──霧に呑まれた少年の名もな」
fuは目を見開いた。
「まさか……あなたが……」
「そうだ。俺は、霧の中から戻ってきた。
そして、etがすべてを思い出した。
だから、今ここに立ってる」
fuはしばらく黙っていたが、やがて深く頭を下げた。
「……おふたりに、心からの敬意を。
そして、どうか教えてください。
霧の中で、何があったのかを」
その夜、村の集会所で、etとmnrは語った。
“白夜の霧禍”のこと。
記憶を失った日々。
そして、霧の中で見たものすべてを。
fuの隣には、調査団の仲間たちが静かに座っていた。
kz:腕を組みながらも、真剣な眼差しで話を聞いている。
rm:手元の装置に何かを記録しながら、時折うなずく。
shu:藤色の瞳で、じっとetを見つめている。感情は読めないが、その視線はどこか懐かしさを帯びていた。
「……霧は、ただの災厄ではなかった。
それは、記憶を守るための“器”だったんです」
etが語る。
「そして、記憶を失うことは、痛みを忘れることでもあった。
でも、同時に大切なものまで失ってしまう。
だから私は、もう忘れたくない。
霧とともに、生きていきたいんです」
fuは、静かに頷いた。
「……あなたの言葉は、私たちの記録よりも、ずっと重い。
風見の都に戻ったら、必ず伝えます。
この村が、霧とともに生きていることを」
「ありがとう、fuさん」
etが微笑む。
「それにしても……」
mnrが腕を組む。
「お前ら、ずいぶん立派になったな。
昔は、霧のことなんて“封じるだけ”だったくせに」
「……それは、過去の過ちです」
fuが静かに答える。
「だからこそ、今度は向き合いたい。
霧の真実と、あなたたちと」
「ふーん、意外と真面目なんだな、fu」
kzがにやりと笑う。
「でも、俺は好きだぜ。こういう空気」
「静かに」
shuが低く言う。
「etの記憶が、まだ揺れている」
「……shu、君はetさんと面識が?」
fuが尋ねる。
「ない。でも、知ってる。
彼女の記憶は、風の層を越えて届いていた。
あの夜の音が、ずっと耳に残ってる」
etは、shuの瞳を見つめ返した。
その奥に、どこか懐かしい光を見た気がした。
「じゃあ、私も変わっていく。
この村のこと、霧のこと、もっと知ってもらえるように」
「……その時は、俺も一緒に行くよ」
mnrが言った。
「えっ、外の世界に?」
「当たり前だろ。
お前ひとりで行かせたら、また何か忘れ
て帰ってきそうだしな」
「うぅ……それは否定できない……」
ふたりは顔を見合わせて、笑った。
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